表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/212

辺境でのんびり


すんすん。


私は完成した財布を置いて、立ち上がった。


「んー……前から思ってたけどこの部屋」


闇魔法の残滓があるのよね。

本当に僅かだけ。


(でもこの家を買った当初より、匂う気がする)


厳密には匂いではなく、気配といったら良いのだろうか。

そのうちゆっくり調べようとは思ってたけど、忙しくて忘れてたわ。


「………………」


床サーチ。

深度五十メートル、なにも無し。

二面ある壁サーチ。

隙間無し、魔法残留物無し。

天井。

異常無し。

設置作業台、椅子や棚も異常無し。


気配はどこから?


私は小さな工房内をうろうろ探し回った。

僅かな僅かな残滓。

偶然じゃないと感じられないような。


(何かトリガーがある……?)


もう一回、さっき座っていた椅子に座ってみる。

身体の向きを変え、頭を動かし姿勢を変えてみる。


「うーん、気のせいと言われたら気のせい?」


あるのか無いのか、探れば探るほど曖昧になっていくパターンだ。

だが、私のこういう勘は結構当たるのだ。

何かありそうな、そんな気がするのよね。


「耳、出すか……」


私の耳はほぼ人間と同じ形と大きさで、少しだけ上が尖っている程度だ。

──エルフの耳は大きくて尖っている。

そんなイメージがあると思う。

実際は私の耳のようにちょっと尖っている、というのが通常エルフの仕様。


ただ、大きく尖っている耳のエルフというのもあながち嘘ではない。

エルフの耳は展開可能なのだ。

普段は小さいけれど、魔力を通せば大きく尖った耳になる。

これはアンテナみたいなもので、魔力操作能力が上がる外付けの魔臓みたいなもの。


……なんで普段から出してないのかって?


邪魔だからに決まってる。

耳が横に張り出してたら、下方の音しか拾えないし怪我リスクが高すぎて耳がいくつあっても足りない。


頭蓋骨に添って、縦型に伸びるエルフと横に張り出すエルフがいるんだけど……耳をよく落としちゃうのは横張り型。


(まあ、年を取ったエルフが横型になっていくのよね)


当たり前だけど、耳は頭蓋骨にくっついている訳じゃなくて、軟骨と皮膚で連結されている。

耳自体は軟骨。

生物学からしても、ああいう形の大きい耳は保持できないのよ。


で──エルフは個人主義が多いけれど。

お年寄りや子供がいない訳じゃないから、大多数は集落で暮らしている。

それぞれ独自の文化やルールを作って生活しているんだけど。


(──耳が大きいほど魔力誇示になる、という文化もある……)


そういう文化で育ったエルフは、常に耳を展開して生活するから加齢で下垂してきちゃう。

だから、横に張った下向きの耳はお年寄りエルフが多い。

それか生まれつき軟骨が弱いかね。


(耳展開が必要になること自体がそもそもないんだけど)


今までで二回くらいあったかな?


ピョコッ!

久しぶりに耳を出してみる。

私の型は頭蓋骨にピタッとそっていて、アンテナ能力が上がるタイプだ。

臨時魔脈も出来るから、ブースターでもある。


(怪我しやすいから邪魔なのは間違いないんだけど~)


感覚が深く広がり、耳にじんわりと熱を感じる。

外の森で小動物が枯れ葉を踏む音までしっかり聞こえるし、気配もより濃く感じられる。

ただ、私の場合は入ってくる情報量が莫大になるので、疲れるのが難点ね。



うん、ある。

窓の外から残滓が感じられる。


「え、外……?」


耳を出したまま、窓を開けて下をサーチ。

家から五十センチほど離れた地面が怪しい。

深さ十数メートルに大きい箱っぽいのが埋まっている。


「…………ふぅ」


耳をしまい、落ち着いてからちょっと考える。

どうする?


「まずタマゴサンドでも食べるか」


時間はいっぱいあるからね。


「一休みしたら、穴掘り大会ね」


リビングに移動して食べたいものを次々テーブルに並べる。


クラムチャウダー、タマゴサンド、焼きオニオン、焼き魚。

ポテトサラダでしょ、あとは生ハム。


「これは…………酒がいるわね」


辺境と言えばケヴェ!

久しぶりに、いただこうっと。

ロックグラスと氷を出してひとりで乾杯だ。


「あー、美味し」


焼いただけのオニオンの甘さに感心しつつ、ぶつぶつ独り言を言いながらの晩酌。

求めている生活はコレなのよ。


「スローライフ、これスローライフでいいよね?」


もちろん、返事などない。

私はそのままソファーで寝落ちした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ