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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王

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バルフィ登場


──翌日。

気温は低いが、快晴。

寒いので絶対一人はダメです!とミシュティが譲らなかったので、ペガサスのペルルに一緒に乗っての名付けタイムになった。


「二人乗ったら重くない?」


「ペルルは、二百キロまでなら余裕ですわ」


華奢なペガサスだけど、意外と強いのね。


「ジューン様は前へ。体勢保持不能になった場合、私が支えますので」


(上空からってのがネックなのよねー)


何しろ、こういう魔力名付けは全体を視界におさめてないとダメなのだ。


「人間とか生き物だと──目を合わせれば発動するのに、物だと全貌必須って難しいですわね」


「拒否された場合みたいに、通らない場合もあるから……おそらく、合意なしに行う名付けって枠になるんだと思う」


「なるほどだから魔力消費が桁違いに……納得ですわ」


「奴隷魔法がいかにヤバイのかよくわかるシステムよね」


「奴隷魔法。既に失伝した禁術ですわね」


「うん、今じゃもう無理なんじゃないかな」


(私は知ってるけど)



さて。

島への名付け──二回目だから、そこまで危険じゃないと思うんだけど、どうだろう。


「龍島────」


声に魔力をどんどん乗せる。

ペルルが落ち着かなくなってきた。

ミシュティが宥めている間に、もう一回。


「龍島────!!」



ごっそり魔力が持っていかれた。

視界が徐々に薄れていく。


(またか…………)



気がついたのは二時間後。

龍島の平屋のベッドの中だった。


「お目覚めですか?薬湯おもちしますわ」


穏やかに話し掛けてきたミシュティに、名付け後のことを聞いて、考察。


とりあえず、やっぱり気絶。

前回と違うのは、まず怪我をしていないこと。

覚醒も早かった。

倦怠感はあるが、魔力を枯渇した感触もない。


「概ね、成功?」


苦い薬湯を飲みつつ、呟く。


「そうですわね。鑑定にも、ちゃんと所有者として出てきましたから」


(思ったよりダメだったけど、今回は死にかけなかったから良いのか……)


うとうとしては食事と薬湯。

お世話してくれる人がいたからか、翌日の午後には立って歩き回れるようになったし髪もチラチラと輝いている。


「うん、問題無しね」


背伸びしながら伝えると、ミシュティは目を輝かせて喜んだ。

すごい忠誠心である。


「とりあえず、連絡付いたらバルフィを呼んでもらえる?」


「はい。バルフィは転移無しなので、今からでも連れて参りますわ」


「え、今?」


「ええ、昨日から正座待機してますの」


ひよこ島に戻り、湯浴みをして簡素なワンピースに着替えて椅子に腰かけると、ミシュティが張り切ってバルフィを迎えに行った。


すぐに現れたケット・シー姉弟は、やや緊張気味である。


キジトラ模様のバルフィはリクルートスーツを着込んでおり、ネクタイまでしている。


ものすごく本気な雰囲気を醸し出していた。

バイトの面接じゃない、これは就活モードだ────。


「まあ、座って」


「はい」


ミシュティは面白がるような顔をして弟を見ていたが、一礼して退室していった。


「それで──今、私が困ってるのはね」


まずは状況説明だ。

一通り聞き終わると、バルフィは落ち着いた声で話し始めた。


「龍の生態系は、およそ五十年~八十年が産卵サイクルです。去年から、産卵シーズン入っているんですよ」


「あっ……そういう?」


「はい。もちろん個体差はありますけれど、ここ数年はおそらく五十年サイクルの龍のシーズンかな、と」


「三十個くらいあってね……」


「温泉とか火山が多いですね、地熱で孵すので」


バルフィは確かにプロだった。


(ポチしか知らないし、産卵サイクルなんて気にしたことなかったわ……)


「なので、二、三年で落ち着くとは思うのですが──古龍とジューン様の庇護があるのを龍がわかっちゃってる状態が、現状だと思うんです」


「…………まだ増える、と?」


バルフィは頷いた。


「龍は龍で、独自のネットワークがあるのでここは既に大人気スポットだと思います。とりあえず、現場を見せていただければ……」


私はバルフィを連れて、ポチ温泉に転移した。


「!?古龍が沈んで……」


「ああ。そういう入浴スタイルになったみたいで」


バルフィは笑いだし膝をついて温泉に触れた。


「──華氏度二百くらいですかね」


バルフィは温泉から立ちのぼる湯気を嗅ぎ、耳を動かしてから頷いた。


「摂氏に直すと……九十度前後。龍にとっては一番快適な湯温です。しかも地熱はおそらく五十度近い──孵化用の自然インキュベータですね」


彼は爪先で土を掘り、指で握って感触を確かめた。


「この温度なら、卵はほぼ放置で孵ります。孵化率も高いでしょうし、巣立ちも早いはずです」


「……つまり、龍からしたら最高の保育園?」


「ええ、しかも古龍が番人。これ以上ない安全地帯ですから、口コミでどんどん集まってきますよ」


(口コミッ!?龍にはパラダイスじゃないの!)


「環境からして、火龍と雷龍が好みそうな」


私は激しく同意した。

だってほとんど火龍と雷龍卵なんだもの。


「あ、獄炎龍のもある……レアですね」


(口コミ広まるの早すぎない!?龍の通信網ってどこまで高性能なのよ!これ、来年には龍島カオスになる予感しかしないんだけど……)

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