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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王

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家出からの、ノルマ消化


…………ミシュティも有能。

弟、バルフィも多分有能。

もう一人の弟は龍騎士らしいけど、きっと有能に違いない。


ケット・シーって、じつはヤバい妖精だったりするのかしらね?


(まあいいわ、有能な方がありがたいし)


それより龍問題だ。

ひよこ島北東に、二回りほど小さい島がある。

龍は温泉のみ、長居不可にしよう。

龍は卵が孵れば、親から魔力を貰ってその日のうちに飛び回れる。

全員ちがう島に行っていただきたい。


(悪気はないのはわかってる。でも煩いのは本当にイヤ)


優先順位は、ノルマ消化、バルフィ招聘、ドラゴンの他島誘導だ。


忙しいのもストレス、煩いのもストレス。

私はミシュティに書き置きを残し、家出した。


辺境の静かなおうちに、当面の拠点を移す。


ストレス溜まってる自覚はある。

これは良くない兆候だ。


(しっかり休んでからタスクをこなすか、頑張って全部終わらせてからダラダラするか……)


──さっさと済ませるべきよね。


辺境の静かな寝室で、そんなことを考えつつ。

眠れぬまま夜が明けてしまった。


ダラダラ過ごして居たら、昼前にミシュティが転移してきた。


「ジューン様、暫くこちらで過ごされるんです?もしかして──ドラゴンさんたちの騒音でしょうか」


「そうなの。温泉作ったの自分の指示だけど、想定外の喧しさでねぇ」


私は弱々しく溜め息をついた。


「なので、今日住人を魔界に移しちゃおうと思って」


「農村地帯の魔営団地は、十二室空きがあるそうですぐに入居可能との返事がありましたわ。あと、空き畑もあるそうです」


ミシュティがメモを取り出し、手順を確認している。


「じゃあ行き先はそこでいいわね。一年分の家賃くらいは私が負担するし」


「家賃は──本人の収入に応じてですから、高くはならないと思いますわ」


私はミシュティの案内で、最北端にある迷宮都市『ジーヴル』に一旦転移した。

自分の転移ポイントを作るだけだったので、そのまま目的の村へ飛ぶ。


(あまり都市から離れすぎていると、襲撃情報が回らない……ここなら馬で数時間程度)


「いい感じの距離ね」


「目視出来る距離にそこそこ栄えた町があります。そこに見せれば、冒険者ギルドの早馬が出るはずです」


名もなき村は結構大きかった。

だが、ほとんどが空き家で廃墟化している。

一応、エルフだとパッと見わからないよう最低限の変化はしている。


近くで農具の修理をしていた羊獣人に、村長への取り次ぎをお願いする。

彼は億劫そうに立ち上がり、加齢で変形している曲がった腰を擦りながら、奥を指差した。


「村長んちは、あっちだぁよ」


バレない程度に軽い鑑定をかけると、御歳八十六歳だった。

平均年齢が百二十歳前後と考えると、まあまあ高齢といっていい年齢だ。


お礼を述べて、言われた通り、一番奥にある小屋を訪ねる。


「客が来るのは十年ぶりだぁな」


村長は畑に行ってるらしく、奥様らしいケンタウロスが水を出してくれた。


「茶ァなんて上等なもんは、ないけんど。だ、あれだ、畑つってもなーんも取れんがね」


王都を挟んだ北側は、山が多いからか南とは天候が違うらしく。

今年は冷夏な上に、ほとんど雨もなく……平年ですらギリギリなのに、農作物が全滅状態なのだという。


「で、あんたさんたちは……」


よろよろと戻ってきた村長が、弱々しく呟いた。

彼もケンタウロス。

ご夫婦はどちらも百歳オーバーだけどケンタウロスの寿命は二百歳以上あるから……この村では若手なのかもしれない。


「この村出て、移住しませんか」


結論から、簡潔に説明することにした。

生活に疲れきった人に、長々と御託を並べ立ててもいい答え返ってこないから。


理解しやすいよう、話すのも戦略のうちってね。


「なるほどなぁ、聞くだけ聞いたらいい話のようだけんども」


──村長の小屋に、住人七名が集まって説明会である。


ケンタウロス二名

羊獣人三名

狐獣人一名

鹿獣人一名


その七名と、こっち二名でギュウギュウである。


「あんたらを信用するかどうかは置いとくけんど、断ったらどうなる」


狐獣人(98)が、不安げに問いかけてくる。

私は正直に直球で返すだけだ。


「断ってもいいのよ。こちらの条件は言った通り、全員での移住。二度とこの大陸には戻れない代わりに、住居と仕事保証する」


顔を見合わせる住人たち。


「候補の村はいくつかあるの。最初に聞きに来たのがここだっただけ。ダメなら余所を当たるから」


(その場合、記憶だけは抹消させていただくけどね……)


「俺は身寄りも無いし、知り合いようおらんで……そこが本当に安全なら行ってもいい」


「もちろん、簡易魔法紙で良ければ魔法契約してもいいのよ。ただ、今決めてくれないと。こっちにも都合があるから」


獣人たちは、2時間ほど相談をした。

その間、比較的元気だった鹿獣人がミシュティと共に入居予定の団地を見学。


ちなみに行き先を『魔界』と言ってないのには、理由がある。


魔界の住人がそう呼んでるだけで──他大陸の住民ほとんどは、魔界という言葉もそういう場所があることも認識していないからだ。


どの大陸からも離れ隠れているのが『魔界』なのである。







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