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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王

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第三回進捗会議②


「で、次ね。二つめのノルマ。ベイリウスとミシュティは今回は途中からだからノルマ無しでいいわ」


そう告げるカルミラに、気が逸れて脱線気味のメンバー全員の視線が集まる。

それぞれ、二つ目のノルマについて報告し始める。


セレナ→幽霊船で徘徊。大きな漁港幾つかに出現させる(済)

ゼグ→王都の東にある火山を噴火させる(準備中)

ティティ→王都周辺の村数ヶ所に集団幻覚を見せて不安にさせる(済)

レスター→魔核の流通を崩す(実行中)

ネモ→アルシア国内全域の墓所の骨を起こす(未)

カルミラ→主要都市でケルベロスを散歩させる(未)

私→どこかの村を焼き討ち(未)


フレスベルグは魔王なので除外だ。


「骨起こしたら、その後鎮魂するのめんどくさくね?」


「我が軍団にスカウトする予定である」


「あ、そういう」


(リクルート兼ねてるのね……合理的だわ)


ミシュティが遠慮がちに挙手し、控えめな仕草で報告を始めた。


「私は微力ながら、王城の庭園の隅に改良マンドラゴラを植えてきました。ベイリウス様が改良した新品種です」


「ブハッ!なにそれウケる」


ベイリウスがミシュティを引き継いで補足する。


「マンドラゴラαは、成熟すると勝手に歩き回り絶叫し続けます。人体に害はなく、冒険者数人で討伐可能」


「うわぁ……マンドラゴラうるさいから、めっちゃイライラするやつね」


「分散して、四十程植えてまいりましたわ」


「多い(笑)」


ベイリウスが柔らかそうな真っ白いロングヘアーを揺らし、限りなく薄い水色の瞳を嬉しそうに輝かせた。


「観測しがいがあります、データは大事ですからね」


うんうん、データは大事。

そこは全員の意見が一致する。


「一体くらい知的な変異があると胸熱なのですが」


「あー、変異狙いなの?じゃあ竜素材を肥料にしたらいいんじゃないの」


ベイリウスは考え込んで、ノートを開いた。


「今夜グループごとに肥料まきにいってみます?」


ミシュティがベイリウスに尋ねた。


「あ、もしかして分散で植えてるのって──」


「もちろん、生育条件を変えてのデータ収集を兼ねてます」


「龍素材ねぇ?迷惑系マンドラゴラにするなら、鳥竜素材がいいんじゃないの」


鳥竜──悪くない。

常に絶叫だし、実に嫌な鳴き声なのだ。


「フレスベルグの財布に使った残りだけど──鳥竜の声帯とか肺ならあるわよ」


「財布?」


カルミラとゼグが不思議そうに首をかしげる。

ティティは既に笑い転げている。

フレスベルグは、ドヤ顔で財布を取り出した。


──禍々しい紫のオーラを纏い、震えている巾着である。


紐をほどき、口を開けている間は不気味な唸り声が発生する。


【グォオオオォォオオ…………】


開ききると、絶叫する。


【ピギャアアアアアァァァァオアオアオ!】


「カッコいいだろ!」


「…………」


(絶叫する財布、まだ気に入って使ってるのね……)


暫くの沈黙の後、大人の集まりである魔王組合員は、フレスベルグの絶叫する財布を当たり障りなく褒めて、さらりと流した。


「そうそう、ジューンのやった薬草類の流通カットね」


カルミラがニヤリと笑った。


「王都は相当ダメージあったみたいよ?薬価が倍以上になったんですって」


「ああ、テレビで王様の会議やってたよねェ~」


「相当慌ててるから、危機感持ったんじゃない?」


そりゃ良かった、時間をさいた甲斐があるわ。

何か最近忙しくて余裕がないのがちょっと嫌だけど……これさえ済ませれば──

もう、好きなことだけして過ごしたいのよ。


(なんだか詰め込みすぎてパフォーマンスが下がってる気がするのよ……)


というわけで──酒盛りに移行したタイミングで、私とミシュティは帰宅させて貰った。


ひよこ島の夜は静かで、とても穏やか。

──以前までは。

今は昼夜問わずでドラゴンがドーン!ばっしゃーん!と温泉に入っているので、結構やかましい。

温泉周囲以外は立ち入ってこないから、黙認してるけどスケールが大きいから離れていても聞こえてきてしまう。

──地味にストレスである。


(疲れた気がするのは、ドラゴンの騒音ってのもあるかも──)


私は溜め息をつき、肥料を与えに行くというミシュティを見送った。

自室のリクライニングチェアに揺られながら、参考までに、と渡されたミシュティの弟の経歴書を眺める。

顔写真がついている。


(キジトラ……しかもスコ耳じゃないの!尊い)



氏名:バルフィ(Barfi)

年齢:277歳

種族:ケット・シー族

現職:フリーランス龍操師(元・登録龍舎所属ジョッキー)


学歴

競龍養成学校(龍操師課程) 卒業

専門課程:騎乗技術、戦術走法、龍体管理学


職歴

魔龍レース界・登録龍舎所属ジョッキー(47年間)

・主戦龍:紅蓮火龍スパルナ、蒼牙飛龍アジールほか

・通算戦績:742戦 512勝(勝率 69%) 

・登録名『神速のバルフィ』

・国内リーグ優勝4回、魔界杯ベスト3入賞2回


フリーランス龍操師(現職)

・登録龍舎廃業に伴い独立

・依頼ベースでレース出場、龍操訓練、パフォーマンス走などを受注


資格・免許

龍育師資格(実務経験なし/理論・座学のみ修得)

龍操師資格(実務経験47年/上級)

どんぐり鑑定士(二級)


特技

龍の特性を活かした戦術的な操騎

狭所・短距離での瞬発力勝負

龍との信頼構築に長ける(特に火龍・風龍系統)


自己PR

『私は龍と走ることにすべてを捧げてきました。レースで培った操龍技術はもちろん、幼龍の調教や基礎運動にも応用できます。所属龍舎の閉鎖により立場はフリーとなりましたが、龍と共にある人生は変わりません。どの環境でも、龍の力を最大限に引き出す自信があります』



──本気の履歴書じゃないの。

確か登録名はファン投票でデビュー戦から三年後に決まるのよね。


(神速?しかも戦績凄いんだけど!?アルバイトで雇っていいのかしら、こんな子)

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― 新着の感想 ―
どんぐりに触れていかないスタイル! どんぐりがメジャーになったのは最近(ここ千年位)なんじゃないかと想像してみたり。 龍レースにもクラシック戦線みたいなのはあるのだろうか。 寿命のスパンと種族が違い…
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