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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王

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裏社会の困惑③


カラン、アマンダの手の中でグラスが鳴った。

相当お強いらしく、蒸留酒をロックでいただくことにしたらしい。


「ねえ。人間鑑定、出来る?ちょっとね、そのガキんちょ見てきて欲しいのよ。アタシ、無機物しか鑑定出来ないのよ」


「あら。そういう依頼?もちろん、人間の鑑定は出来るけど──」


「別手配も出来るけど──関わる人数少ないほど良いでしょ。報酬はフランツから北の話を聞くこと、でどう?もちろんあなたが何を聞いたとか……そういう情報は忘れる」


アマンダは獰猛に微笑んでから、付け足した。


「フランツは日中、実家の店にいるから、18の刻からなら空けられる……閉店前にいって誘うといいわ、優先するようにいっておく」


「わかった。例の生徒は──」


「15の刻過ぎからほぼ毎日騒いでるから、行けば明日もいそうよ?あ、これ店の場所ね」


「あ、どっちも貴族区に近いのね。そりゃ真っ当な店なわけだ」


はぁ。アマンダの溜め息が追加。


「そうなのよ、泥つけられるのは本当に困るの。苦労してつくってきたんだから。あ、報告は口頭でね。記録は要らないわ」


話は終わりらしい。

その後は、アマンダ個人で欲しい付与とか宝石の原石無いの?とか「おともだち」としての取引だ。


こちらは──その場で気前よく現金で支払われた。


彼女?が欲しがったのは意外なことに、シンプルなチェーンヘ精神干渉防止、防御力(極大)、魔臓活性の付与だった。


(……本業は傭兵とか、戦う漢なのかしら)


詮索はしないけど。


あ、ちなみに王都の異臭は収まっている。

その代わり、海が大時化だ。

晴れなのに海だけが荒れているのは、すごく不自然で──不吉感に溢れてるわね。


(まあ、セレナのリヴァイアサンたちが荒らしてるんだけどね……)


ひよこ島沖にいるリヴァイアサンも『おまつり』に参加しているようだから、あの子は人魚族の誰かの騎乗龍なのかもね。


夜は久しぶりにひよこ島で食事をとり、ミシュティから進捗報告を受ける。


「ジューン様の湯殿は完成しましたわ。打たせ湯追加で素敵に仕上がってます」


ミシュティはローストビーフを切り分けて、お皿に乗せた。


「柔らかい……ソースも美味しいわ」


ミシュティははにかみながら、一礼した。


「ソースはジョンさんに聞いた、ワサービを使ったワフーです」


「あら、ジョン?」


「ええ、レシピを聞きに時々お邪魔しに行ってます。2杯くらいしか飲めないので売上貢献は出来てないんですけど」


私は知っている。

ジョンの店のウサギ獣人のイケメン。

ミシュティに一目惚れしたっぽい、ウサギ君。


(ロマンスの雰囲気がするのよねー。もちろん、そんなプライベートのことは聞かないけど)


ミシュティがもう一枚ローストビーフを切り分けてくれた。


「ポチさんの温泉は、北西の工房の近くに掘られてますわ。五十メートル四方、水深十メートルくらいにするみたいです」


「大きいわね……」


「すっぽり入れて、体勢を無理なくお湯の中で変えるにはそれくらい要るって話でした。湯量はバッチリだそうです」


「へえ、ああ……北の山が活火山だからかしらねぇ」


「そのようですわ。ポチさんは今日、ユーニウスとペルルと一緒にプルナを食べました」


「あらー、仲良くなったのね」


雑談で、夜が更けていく。

テレビからはティティの声。


《…………というわけで、現在は王都周辺で異変が起きてるんです。こちら、王国の謁見の間の映像です──》


<勇者よ>


<はい>


<魔王軍の襲撃、異変──活発になってきておるゆえ、メンバーが決まり次第伝説の通り、ドラゴンオーブを集める旅に──>


<はい、必ずや!七つのドラゴンボー……いえ、オーブを集めに行きます>


勇者チャンネル大好きなミシュティが呟いた。


「ドラゴンオーブ、今回はどこに?もう発表されてるんでしょうか」


私は記憶を掘り起こした。


「多分、発表はされてないと思う……六個はどこかに埋まってるけど、もう一個は破損しててつくり直してるみたいよ」


「魔道具はデリケートですわね。オーブ……全部集めたら、神様が出てきて聖剣が貰えるんですよねぇ……神様役が気になって仕方ないです」


「ああ、多分毎回巨人族が請け負ってるから──今回も巨人族じゃないの」


食後のハーブティーはオレンジ風味。

さっぱりしていて、飲みやすかった。


「ハナちゃんは結局、参加みたいですわね。見る限り、とっても元気そうで可愛いですわ」


「そうね、さっきの放送で一日数キロのお散歩してるって」


「お散歩は大事ですものね」


「あ、そうでしたわ!北側の廃れた村、結構多くて。王都から北はちょっと貧しい地域みたいです」


北側ね。

私は姿勢を変えて、ミシュティの方を向いた。


「ずいぶん手際が良いわね」


「フフ、使い魔フル活用で調べてますので」


「──使い魔」


「ご覧になりますか?可愛いんですのよ。5匹おります」


そういって、ミシュティは床に使い魔を召喚した。


五匹のネズミ。

チンチラっぽくてふわふわだ。


(猫妖精の使い魔が、ネズミ!──面白い、面白いわ……)


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― 新着の感想 ―
ドラゴンオーブで勇者のくせに生意気だを思い出した。懐かしい・・・。
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