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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王

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秘密の女子会②


「…………まぁ、黒歴史は誰にでもあるわよね」


セレナがしんみりと呟いた。


(確かセレナは二千年くらい前、かなり荒れてたような……)


「ああ、あなた『魔亜冥怒総連』の初代総長だったものね」


「プランクトンも殺せないような顔で、レディースの総長とか」


「全員特攻ビキニで、海域争いしてたものね」


「あー、セレナのペットのリヴァイアサンってェ~、暴走用だったんだァ?」


「当時、あのリヴァイアサンは夜光クラゲでデコられててギラギラしてたわねぇ」


カルミラがニヤニヤしながらとどめを刺した。


「ミシュティの気持ちがいたいほどわかる!」


セレナは叫んで、プクプクと沈んでいった。


「セレナもミシュティもォ~、スッゴいお嬢様っぽいのにカッコいいねェ」


ティティが、とても羨ましそうに呟いた。


落ち着いたミシュティが、何もなかったように澄まし顔で戻ってきた頃──

スクリーンには、私が映し出されていた。

団長とのダンスシーンだ。


《凶悪魔猫天使の主は、あの暴虐の女王。相変わらずの美貌ですね》


《このお相手、第五王子ですよね?求婚者でしょうか》


《なんて命知らずなんだ!》


《エルフ……ですからね。殺されてないって事は──脈あり、とか……?》


《まさかの?あ、でも女王は幾つか非公式のファンクラブはありますよねー》


《バレたら殺されるのでは?》


《あっ、ここカットで──》


私は大きく溜め息をついた。

浮上してきたセレナが、気の毒そうに私を見る。


「ジューンの扱いはまあまあ雑ね……」


「売上No.1の魔王なのにねェ~!」


〖なんでよーーーーッ!〗


「あ、なにこれ」


全員の目がスクリーンに釘付けになった。

甲高い声に、ケルベロス姉妹も訝しげに画面に顔を向けた。


《これは──?》


《ああ、面白い画像が撮れたので人間社会の多様性を紹介しようと思いまして、特別収録したものですね》


《ええ?待って待って!人間社会って、今は膝丈のドレスが流行してるんですか?》


《いや……周囲はロングドレスですし》


《余興の寸劇ですか?》


《このピンク色の髪の令嬢の情報は、収集中なんですが男爵令嬢らしいです》


《あれ?えっ?これ、この国の王太子?なんで男爵令嬢と腕を組んでるんです?てかこの令嬢、飛びはねた時にパンツ見えてますけど──モザイクしなくていいんですか》


《ああ!?王太子の婚約者が置き去り》


《大丈夫なんでしょうか、この国……》



ミシュティとフレイアは、微かに震えていた。

カルミラは呆然としている。


番組はコマーシャルの後、勇者と聖女について話題を移した。


「なんなの、アレ」


「なんで王太子と男爵令嬢が腕組んでるの……?」


サロンは再び困惑に包まれたが、フレイアが静かに説明を始めた。


「この男爵令嬢は、このパーティで勇者にも突撃しまして──咄嗟に間に入った聖女にぶつかって白い衣装にワインをぶちまけまして」


「あらまぁ」


「お怒りの第二王女の命令で一旦摘まみ出されたはずが、舞い戻ってきてこうなってます」


「警備どうなってるの……」


「やっぱり危機感無さすぎじゃない?」


全員の意見が一致した。

──この国、もっと危機感もたなきゃダメだ。


「やはり当初の予定どおり、ノルマは二つで」


私達は、大きな溜め息をついた。


「王都に集中し過ぎると、おかしいわよね?」


「二つ目は──やるなら地方都市ね」


「フレイア、地図。王都の南と──ほら、ここ。いい感じの距離に大きめの都市が三つあるから」


「ふーん、地方都市か、その周辺で『ちょっとした騒ぎ』を起こせばいいわけね」


「北は北で、火種があるっぽいからそっちつついても良いかも?王家が焦りそう」


「うーん、数年くれるなら北のレジスタンスを動かす一手は打てそうだけど、早急にってことなら無理ね」


「そうなの、時間がねぇ」


バン!大きな音がして、サロンの分厚い木製の扉が倒れてきた。

煙も上がっている。


「あらあらぁ~」


セレナが水魔法で消火。

犯人はカルミラの愛犬、ケルベロスのバジル君だった。

300kg超の厳ついボディ、実に凶悪な顔。

そして、一番の甘えん坊──とても人懐っこい子なのだ。

寂しすぎて来ちゃったみたい。

ピーピー鼻を鳴らして、カルミラにすがり付いている。


「女子会って言っても犬にはわかんないものねぇ」


「仲間外れで傷ついたんじゃ……?」


「マカロンあげていい?」


「あ、ドラゴンの大腿骨あるけど」


ガッシャン!!


のたうち回るバジル君の巨体が、テーブルを破壊した。


──とても嬉しそうだ。


仔犬のようなキュンキュンとした甘ったれ鳴きをするバジル君の独壇場、で女子会は終わった……

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