表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/155

鑑定魔法

午前中はうとうとと過ごして、昼過ぎにようやく頭がスッキリしてきた。

柵の内側、つまり庭なのだが雑草だらけでいただけない。


一気に魔法で枯らしてしまえば問題ないのだけど、前の持ち主が魔法使いと言うことなので

何か面白い植物を育てていたかもしれない。

どうせ暇を持て余してる身分だから一種類ずつ鑑定を掛けてから処分することにした。


どういうシステムで表示されてるかわからないのだが、昔からある物で効能や育て方が確立されているものは詳しい情報が得られる。

世間から周知されてない物はざっくり情報しか得られない。

ある程度世界中で情報が共有されてから鑑定に反映されるんだろうか?

それにしては新発見と言われるものに既に名前が付いていたり、毒性の有無がわかったり

鑑定した人によって結果がちょっと違ってたりするので【どういう目的で鑑定するか】という意識も関係してそう。


例えば見たことがない果物があったとする。

鑑定魔法持ちは少ないけれど、数人居るとする。

一人はお腹がすいていて食べられるかどうか?

を念頭に鑑定するわけ。

すると、鑑定結果はこうなる。

メローナの実。

人間には無毒。

とても甘い。


薬師が鑑定したらどうなるか。

メローナの実。

果肉は甘く、苦味を相殺する。

混ぜれば飲みやすくなるものもある。


歴史研究家が鑑定したら?

メローナの実。

古代トラジャ王国初代王妃であるメローナがこよなく愛した果実。

王妃の名がそのまま果実の名となった。

その味は甘く、とろけるようであったと言われる。


こういう感じになるので、大抵は自分が知りたいこと+α程度しかわからないことが多い。

より多くの情報を得られる上級鑑定士は、種々な情報にスポットを当てて調査出来る鑑定上手な人というわけだ。


ちなみに私が鑑定すると

メローナの実。

トラジャ地方の名産で初代トラジャ王妃の名を冠する。

原産はメア大陸。

ドルシェナの木に数年に一度実るが、未熟なものは触れるとかぶれることがある。

完熟すれば毒性は無く、甘味の強い果物。

生薬に利用可。

主に滋養強壮に良いとされる。


もっと深く鑑定も出来るけど、パッと見だとこういう感じ。

要するに才能より努力と経験値。

私なんて最初、メローナの実。食用可。くらいしかわからなかったしね。

メローナの実なんてここ数百年見かけてないけど。


雑草を処分し終わったが…見事にぜんぶ雑草だったわ…

私は更地になった庭を眺めて、溜め息をついた。

バッグに石造りのガゼポがあるから、それを設置して花でも咲かせておけばいいかな。

ドン!とガゼポを出してから庭中に小袋にはいっていた雑多な花の種を撒き散らす。

私の庭はあっという間に花の咲き乱れる可愛らしい庭になった。

枯れたら手入れが面倒なので、全部に固定魔法を掛けて置けば完璧だ。

こうしておけば数年は枯れずに美しく咲いているだろう。


後は特に急ぎの用事もないので引きこもる予定だ。

アルシアの常識を教えてくれる人が見つからなかったら、冒険者ギルドに依頼を出してもいいんだけど。


あれ?ギルドカード出したら入国条件もっと緩かった?

そのうち入国管理所に行ってみようかな…?


結局、そのうち…は来ること無く私は完全に引きこもって1ヶ月くらい過ごし、ボーッと過ごす日々が続いたある日。

外が騒がしいので見に行くと甲冑姿の男が蔦に捕獲されて大声で騒ぎ立てていた。


「ジューーーーン!いやジューンさん!ちょっと!!これ、なに!ちょっと!!」


すっかり野太く成長したメア・バインはぶんぶんと男を振り回していた。

暴れるから振り回されるんだけど。

静かにしてれば振り回されないのに…。


まじまじと男を観察して、記憶と照合。

副団長のカイさんだ。


メア・バインはなんとなく私の意を汲み取り、カイさんを地に下ろし解放した。


「なんつーもん生やしてるんだ!」


「注意書き書いてありますけど?」


しばし無言が続いたが、カイさんが折れた。

というか注意書きを読んでなかったらしい。

あんなに見やすく立てておいたのに!


「ハァハァ…全く見掛けないから様子見に来たんだよ…」


「ずっと家に居ましたよ?」


私は礼儀正しいエルフだ。

家には入れたくないが、庭のガゼボまでなら入れてあげてもいい。

息切れしているカイさんにアイスティーを出す気遣いも出来る。

エルフが客をもてなすとか、ホント無いからね?

ありがたく思って欲しいわ。


「おお?旨いな!」

いちいちリアクションが大きい男だ。


取り調べ的なものかと思ったが、本当にただの様子見だったらしい。

内容はほぼ雑談だった。

カイさんとゼライさんは従兄弟であることとか、この家の以前の持ち主はゼライさんのお父さんだったとか。

あと、私がギルドカード所持者だったこととか。


カイさんがどことなく獣人を感じさせるのは、やっぱりどこかで獣人の血が入ってるからなのね。


「ああ、祖父が熊獣人でね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ