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乙女の秘密  作者: 安芸
本編
5/12

四 成人の儀を終えて、それから

 今回はアスカルディは出番なし。

 

      

 翌日、早朝、カリサは一家で教会に足を運んだ。

 午前、カリサは懺悔室で十六年分の告白をし、その間、両親は洗礼名や寄付金、儀式の手順などの話を詰め、必要書類に署名し、午後には儀礼用ドレスを見つくろいにいった。

 そのあとは挨拶まわりをし、方々で祝福を受け、屋敷に戻ったのは日が暮れてからだった。


 成人の儀、当日。

 さいわい、空は雲ひとつない晴天で、風は微風、すがすがしい陽気に誘われるように、大勢が祝いのため集ってくれた。

 カリサは迎えに来てくれたアスカルディ(なんとこの朝も女装だった。濃い化粧と山吹色のドレスがよく似合っていた)に付き添われ、教会にいって洗礼を受け、成人後の洗礼名を授かり、守護聖人の名のもとに法に則った義務を果たすことを誓って、署名と血判を捺した。

 そして両親と妹弟が待つ広場中央に赴いて、祝福を受けた。

 乾杯と花吹雪、歓声と拍手の嵐の中で、カリサは晴れて大人の仲間入りを果たしたことを実感した。 これで正騎士になれる、そう思った。


「ご歓談中、失礼します」

 と、丁寧に話の腰を折って現れたのは、ゾフィだった。

 ゾフィは小柄でかわいらしい女性だった。焦げ茶色の小さな瞳に焦げ茶のふわふわの髪。軽い自己紹介をすると、おっとり微笑んで言った。

「成人の儀、最後のおつとめがまだございますの。わたくしがご案内いたしますので、一緒に来ていただけますでしょうか」

「あのう、でも、わたしまだごちそうを食べてない――」

 抵抗も空しく、待機していた白い花飾り付きの馬車が迎えに来た。

 泣く泣く乗り込むと、すぐあとにゾフィも続いて、馬車の扉が閉められる。

「これから、一番肝心な儀式があります。これが済まないと、成人の儀は終了しません」

「あの、どこへ行くの?」

「“乙女の館”です」親しげにゾフィは笑む。「今夜は大事な夜。いまからいく館は、一生で二度しか入れない場所なのですよ」

「あ! 待って、両親に一言断っておかないと」

「ご両親をはじめとして、皆さんがあなたの無事を祈っておいでですわ」

 カリサは動き出した馬車窓から首を出して、振り返った。広場にいたほとんどのひとびとが、硬い表情で手を振り、見送ってくれている。

「これからなにがあるの?」

 緊張が胸を蝕む。ゾフィの柔和だが真剣なまなざしが、遊びではないことを告げていた。

 ゾフィが励ますようにカリサの手を握って「着いたらお話します」と小さく呟いた。


 テーマが恋と冒険だったので、次は冒険パートです。

 いま、ちょうど中盤ですね。これから後半に移ります。


 引き続きよろしくお願いいたします。

 安芸でした。

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