エピローグ
最終話です。ここまでお付き合いくださいました皆様、どうもありがとうございました!
「カリサ、ただいま戻りました」
アリネアの執務室に一番に赴くと、上司は書類の決裁中で忙しそうだった。
「成人の儀の終了届は?」
カリサが提出すると、アリネアは決裁を中断してこれを受け取った。
「確かに預かった。ミオングには、私から渡しておく」
「よろしくお願いいたします」
「ああ。で、どうだった、休暇は? 少しは羽を伸ばせたか?」
「はい。色々ありましたけど、会いたい人にも会えました」
アリネアが意味深な微笑を浮かべて、「ふぅん」と呟き、意地悪く眼を光らせる。
「その腕輪の贈り主か?」
「えーと」
カリサは一応はぐらかすことにした。
「内緒です」
「まあいい。任務のときは外すか、見えないように身につけておけ。さがってよし」
「はい」
「待て、言い忘れていた」
一旦踵を返したカリサは振り返ると、アリネアはにこりともせずにこう告げた。
「おまえの部屋に正騎士の軍服と第十位の腕章を届けておいた。今日からそれを着用するように。それから」
こほっ、と咳払いをひとつ。
「よく戻ったな。おかえり、カリサ」
カリサは至上の笑みを浮かべて、大きな声で返事した。
「はいっ!」
晴れて正騎士となって、一年半後。
カリサは再び故郷の地を踏んだ。
いったさきは、乙女の館。
「さあ支度をしましょう」
いつかのゾフィのように微笑む。
胸には誇りと言う名の尊い花が咲いている。
「“聖なる乙女”として、“青の乙女”のあなたに秘密を伝えます」
完
終幕です。 普段は長編ばかりで、短編というか、中編というか、久しぶりに書いたためか、うまく起承転結のバランスがとれず、苦悩しました。そのため、省いたエピソードもいっぱい……残念な感じです。特に、アスカルディは。 女装が上手で口説きな暗殺者、はい、このネタで普通に長編いけますね。 でも、読者の皆さま的には、このくらいの分量の方が、締まりがいいですか? 余計な背景、比喩、設定、細やかな心理描写を排した結果、かなりコンパクトではありました。 ふー。 おまけをどうしようかな。ひとつだけ、いれようかな。なので、完結表示はしないでおこうっと。あとで、カリサとアスカルディのおまけを掌篇で追加します。お暇な方は、頃合いをみて覗いてあげてください。 さて、2010年を迎えます。 新しい連載ものを、はじめようかと。 こちらは、恋愛ファンタジー。乙女~と同カテゴリーですが、作風は、まったく、かぶりません。口の減らない、悪辣でたくましい、とっても美人な女の子が主人公です。恋人は冷酷非道、傍若無人、最強最悪に手ごわい男。 どうぞ、よければまたおつきあいください。 引き続きよろしくお願いいたします。 安芸でした。