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死んだ婚約者による恋愛指南書  作者: 桐城シロウ
第一章 飲み込んでしまいたい、彼女の人生を丸ごと
21/51

20.一見、平穏な日常の中で

 


 あれからというものの、びっくりするぐらい、平穏な日常が続いてる。朝、起きて一緒にご飯を食べて、家を出て、仕事終わりに待ち合わせて、スーパーに寄って帰ったりとかの連続。


 私が現実逃避から婚約していると知っても、透さんはどこ吹く風で常にご機嫌だった。今日もそうで、わざわざタクシーを使ってまで、ドーナッツ屋まで来て、お昼ご飯を食べている透さんが、後輩の梨花ちゃんにとびっきりの爽やかスマイルを向ける。麻素材のベージュ色ジャケットと、淡いブルーシャツの組み合わせが初夏らしくて、爽やかだった。


「あかねさんの好きなところですか? 沢山ありますよ? たとえば毎晩、二人で一緒にゲームしているんですけど。彼女、すごくノリが良くて楽しそうで。その横顔が可愛いんですよね、最高に!」

「そうなんですね~……」


 梨花ちゃんがめちゃくちゃ曖昧な笑顔で返事してる。ひやっとするなぁ、この子。彼氏と先週、鎌倉に行ったんじゃなかったっけ? 面白くない気分でもそもそと、シナモンドーナッツを食べていると、ふと透さんが気が付いて、「どうしました?」と聞いてくる。


「んあ? なんれふか?」

「いや、元気が無いなと思って。帰り、あかねさんが気になってたフルーツパーラーにでも行く?」

「行く~! あそこのどでかいイチゴパフェが食べたい! でも、巨峰シャーベットも美味しそうだった! あとマンゴープリンにナタデココと生クリームと、タピオカがどっさり入った最強パフェも食べたい! 悩む~」

「じゃあ、俺がイチゴパフェ頼むから、半分こでもして食べる?」


 にこにこと、やたらと嬉しそうな顔で覗き込んでくる。焦って、笑顔で「そうする! イェーイ!」と言って、強制ハイタッチをするべく手を上げてみると、ちょっとだけ驚いた顔をしたのち、ぱんっと手を叩いて笑ってくれた。ふい~、焦った焦った。距離が近い。梨花ちゃんが心なしか、じっとりした目で見てくる。


(私がアルフの婚約指輪、してきた時から視線が鋭いなぁ~……ああ、外し忘れた私のバカ!)


 透さんに「毎日つけてくださいね?」って言われて、欠かさずつけてたら、ついうっかり外し忘れて出勤しちゃって。梨花ちゃんがめざとく、薬指の婚約指輪に気が付いて「それって、もしかして……」と聞いてきた。雑誌の広告によく載ってるピンクダイアの婚約指輪だったし、知ってたみたい。


(嗚呼、ついこの間までは可愛い後輩ちゃんだったのに……ギッスギスだよ、もう。格下認定でもされてたんだろうなぁ~。十中八九、されてたんだろうなぁ~)


 それなのにハイスペイケメンと婚約&タワマンで同居だもんなぁ~。嫉妬がすごい、すごい。おののいていると、透さんが「あっ、そうだ。見てくださいよ、これ」と言ってポケットからスマホを取り出し、興味津々の梨花ちゃんに見せつける。


「この間、あかねさんと水族館に行って来たんですけど。クラゲを見ているあかねさんが可愛かったので、梨花ちゃんにもおすそわけ~」


 火に油を注ぐイケメン、ここに爆誕。私の肝は冷えっぱなしだよ、もう!! てか、わざとやってる? なに? 何なの!? ちなみに、梨花ちゃんがきゅるっきゅるのアイドルスマイルで、「年下だし、梨花って呼んでください~!」と言ったため、梨花ちゃん呼び。さらに恐れおののいていると、梨花ちゃんがやや引きつった笑顔で「本当だ! 宮田さん、可愛い~」と言って話を合わせる。


 一方の透さんは爽やかに微笑んだまま、「でしょう? 見惚れちゃって~」と言ってる。こっわ!! こわ、絶対わざとだよ、この人……。梨花ちゃんが席を立ったタイミングで、「ちょっと!」と言って袖を引っ張る。


「なんですか?」

「いや、なんですかじゃなくって! 透さん、わざとなんですか!?」

「あ、正解。当たり~」


 今日一番のとびきり爽やかスマイルを浮かべ、頬肘を突く。ここだけドラマの撮影現場になっちゃってるよ! イケメンか! 格好よすぎか!! そう、透さんは私が数日前、とあることを言い出してから、その真っ黒くろな本性を隠さなくなってしまった。


『私が思うに透さんってたぶん、頭がおかしい人なんですよ!』

『…………あかねさん?』


 たっぷり十五秒ほど黙り込んだのち、ぎこちない笑顔でそう言ってきた。


 ちょうどその時、お皿洗いをしている最中だったので、水がじゃあじゃあとシンクへ流れ出る。汚れたお皿を持ったまま、慌てて、透さんの代わりに水を止めた。これはセンサー式で、手をかざしたら止まる高級そうなやつ。見るたび、小心者な私は「オシャレだぁ~……!!」と言ってびびりまくってる。動きを止めた透さんが、額に汗を滲ませ、じっと泡だらけの両手を見下ろしていた。いつになく、深刻な顔をしている。


『いや、私、もう婚約破棄されてもいいかなって。そう思ってるから言うんですけど!』

『……はい。何ですか? 俺の部屋で何か見つけたんですか?』

『いや、そんな……家捜しなんて品の無いこと、してないんでよく分からないんですけど。ええっと』

『品の無いこと、ね』


 何故かそこでくちびるの端を持ち上げ、笑う。また黙々と洗い出した。でも、女友達とみっちり話し合った結果、覚悟を決めた私に、怖いものなんて一つもない!


『結局、私を束縛したいんでしょう? で、嫌がる顔も見たいって思っちゃってる』

『はい。……それで?』


 めっ、めちゃくちゃ怖かった……!! 思い出した今でも、がたがたと震えてしまう。いつも優しくて、にこにこ笑ってた透さんが、真顔で皿をじゃぶじゃぶと洗い出す。しかも夜の九時半だったから、怖さも倍増。あれ? 昼間に言えば良かった? って一瞬で後悔した。


『そっ、そそそそそれで……!!』

『めちゃくちゃ噛むじゃないですか……ふっ』

『今、鼻で笑いました? まぁ、いいや、それでええっと、もう、それでいいです! 透さんは! 頭がおかしい束縛男のままで!!』

『まいったな。束縛なんてしたつもりは無かったんですけど、俺』


 お皿やフォークを全部洗い終えて、水を止めた。丁寧にキッチンのタオルで両手を拭き終えたあと、こっちを見て、仄暗い笑みを浮かべる。


『俺のどこがだめでした? なるべく、あかねさんの意見も聞いて尊重してきたつもりなんですけど』

『ハイ、だめ~。そういう真っ黒なとこ出して、支配しようとすんのはもう禁止~! ほいっ!』

『いでっ!?』


 思いっきりデコピンをしてみると、「意外と痛かったなぁ~」なんて言って嬉しそうに笑い、おでこを押さえる。今のでペース崩れると思ったんだけどなぁ。崩れないな~。最強ウォータープルーフファンデメンタルかよ……。


『とっ、とにかくもまぁ! 私は負けないし、いっそのこともう、仮面夫婦でいこうかと思いまして!』

『仮面夫婦で? 浮気はちょっと、されたくないんですけど……』

『しません、しません……まぁ、私も朔ちゃんのことが忘れられないし。でも、透さんは婚約破棄したくないみたいだし!』

『したくないです、絶対に』

『だから、その、ゆっくりと夫婦になっていきませんか? いや、婚約者……?』


 二時間半にも及ぶ話し合いの中でとりあえず、「私はじゃんじゃん好きなことをしていくし、言っていく!」と宣言した。決して、オタク活動にいそしみたい訳ではない。ふと、脳裏に女友達との会話がよみがえる。


『だからさ~、いざとなったら相手は医者だし、浮気したら慰謝料ぶんどって離婚すりゃーいいのよ』

『もっ、もえもえちゃあん~!?』

『私の知り合いに弁護士いるし、その時は紹介してあげるよ。……あ、もしも殴られたりとかしたら、ちゃんと証拠集めしとくのよ? 日記とか、ボイスレコーダーとかでね! ちゃんと証拠集めして、財産分与して貰って、慰謝料がっぽり頂いて消えるっ!』

『そうなったらあかね、来なよ、こっちに~。一ヶ月ぐらい、余裕で泊めてあげるよ? って言っても、お母さんがやってる民泊になるけど』

『遠いじゃん、それ~! 新幹線か飛行機じゃん~!』

『ははは~』


 女友達数人とグループ通話で話し合った結果、「何かされたら慰謝料ぶんどって離婚する。でも優良物件なので、ひとまず結婚しておく」という、腹黒い結論が出てしまった。


『でも、私もそれが一番だなぁ~って、そう思ってて』

『それ、俺に言うんですか? あかねさん、そんなところも好きです。大好き……』

『は? なんで? イケメンドマゾなの、なんでっ!?』

『流石はあかねさん、好きです……』

『どういうこと!?』


 そんな醜い本音をさらけ出したにも関わらず、透さんは至極うっとりとした表情で、私の両手をぎゅっと握り締めていた。嫌だったんだけど、離して貰えなかった。本人いわく、惚れ直したらしい。なんでや!!


『俺、頑張りますね? 離婚されないように……』

『お、おう……結婚もしてないんですが』

『でも、結婚はしてくれるんですよね? ああ、改めてちゃんとプロポーズはしますので。あかねさん、俺から離れていきませんよね? いざとなったら、慰謝料ぶんどって離婚するんですよね? じゃあ、俺が何かやらかさない限り、一生傍にいてあげるよって、そういうことを言いたいんですよね? もう、これはあかねさんからのプロポーズですよね?』

『圧がすごいし、あれ? そうなのかな……?』

『そうですよ? 逆プロポーズですよ? 記念日にしましょう』

『あっ、ハイ……』


 そんな訳で、透さんはすっかり腹黒ドマゾとしての本性をあらわにし、日々ご飯を作ってくれたりだとか、私にハイブランドのバッグを貢いだりとかして、楽しそうに過ごしているんだけども……。ただ、たまーに妙な嫌がらせをしてくる。今回みたいに!


「あ、当たり~って、梨花ちゃん嫉妬させて何の得が、」

「あかねさんがびくついて、怯えてる顔が最高に可愛いんですよね……」

「ひぃっ! 頭がおかしい! 爽やかイケメンのツラをかぶった変態だ!!」

「っぶ、くくくく……!!」


 またツボにはまってしまったらしく、突っ伏して背中を震わせている。と、まぁ、当初の予定とは違って、かなり変な関係になっちゃったけど、上手く(?)いってるみたい。じゅうじゅうとリンゴジュースを吸いながら、まだ笑っている透さんを見て呆れていると、梨花ちゃんが帰ってきた。


「……お二人って~。意外と気が合うんですねぇ」

(いちいちトゲがある発言、もはやナイスだよ。梨花ちゃん……)


 非常識な言葉じゃないのに、そこはかとなく人を苛立たせる。うん、絶妙だなぁ~! いらついて、ストローをがじがじと噛み締めていると、透さんがひょいっと、私が持っていたカップを取り上げた。


「あっ」

「もう無いでしょう? これ。捨ててきますね? あと、休憩時間がもうすぐ終わりで、」

「やっべぇ! 口紅塗り直してこよ!!」

「早い~、あと十分ぐらい休憩時間欲しい~」


 にこにこと機嫌の良さそうな透さんと一旦別れ、仕事をして、約束通りフルーツパーラーへと向かう。夜なのに、ちょっとした行列が出来ていた。ビジネス街のど真ん中にあるからか、結構遅くまでやってる。渋々と、仕事帰りのOLや大学生にまぎれて、生温い外のパイプ椅子へと腰かけた。同時に透さんも、「蒸し暑いな~」と言いながら腰かける。周囲の視線を集めてはいるものの、まったく気にならないのか、それとも気にしていないのか、平然とした表情で顔を扇いでいた。


「扇子、ありますよ? 使います?」

「じゃあ、貰おうかな? でも、あかねさんの分は?」

「予備で一本、持ってきてまーす。それを使いまーすっ」


 膝に置いた白のショルダーバッグから二本、京都で買ってきた扇子を取り出して渡すと、「ああ、いい色ですね」と言ってすかさず褒めてくれる。深い赤地に白い花柄のものと、白と黄色の金平糖柄。


「でしょでしょ? 修学旅行で京都行って、それで~」

「じゃあ、高校生の時から使ってるんですか? これ」

「そうそう。ぜんぜん高くもないし、大したことない安物なんですけど、意外と長持ちで……。色と柄に一目惚れして、買っちゃったんですよね~! 私、物を失くしがちだから二本も! 京都なんて滅多に行けないし」

「ああ、分かります。俺も予備で買っちゃうタイプなんで」

「ですよね、買っちゃいますよね~。あっ、そうだ、京都と言えば! 透さん、抜群に浴衣とか袴とか似合いそう……!!」

「あの、袴はちょっと……正装なんで。でも、いいですね。着物とか浴衣。今度、浴衣着て一緒に花火大会にでも行きません?」

「いいですねえ。夏もあっという間に来そうだし……」


 脳裏には色鮮やかに、あの日見た花火の色が浮かび上がっていた。強烈なグリーンに赤、ピンクに青色。朔ちゃんと一緒に見て回った射的に、金魚すくい、ヨーヨー釣り。今でもまだ、隣で笑ってるみたいだ。好きでもないくせに、キャラ物のお面をかぶって、ヨーヨー釣って、「ほらほらっ! あかねちゃん」って言って、嬉しそうに笑ってた朔ちゃんが。じわりと浮かんできた涙を拭って、前を向く。狭い歩道に、仕事帰りのサラリーマンや若い兄ちゃんがあふれて、ぞろぞろと動いて歩いてた。車のライトや看板のネオンが、夜のビジネス街を明るく照らしてゆく。パーッと、どこかでクラクションが鳴り響いた。


「……死人とは結婚出来ないし、うん」

「後悔、しませんか? それで」


 聞かせるつもりはなかったのに、誰にも聞こえないような、小さな声で呟いてしまった。しっかりと聞き取ってしまったらしい透さんが、感情の窺い知れない、びっくりするほどの真顔でぎゅっと、私の手を握り締めてくる。手がちょっとだけ汗ばんでいて、冷たい。手はひんやりしてるけど、空気が暑くて重苦しい。もう日が沈んで、辺りは暗闇に包み込まれているのに、こんなにも蒸し暑くて汗が滲み出てくる。


「してもいいや、もう。人生ってそんなもんでしょ?」

「ですよね? じゃあ一度ぐらい、間違えてもいいか……」


 透さんもこれが間違いだって、そう気が付いているのかもしれない。でも、私は難しいことを考えたくはなかった。



 それなので、お目当てのマンゴーパフェとタピオカミルクティーを頼み、冷房が効いた店内で息を吐く。中はオシャレで、フルーツパーラーらしく、清潔感のある白とポップな黄色でまとめられている。そうこうしている内に、運ばれてきたマンゴーパフェは、メニュー表で見るよりもでっかくて、食べ応えがありそうだった。大きくカットされた、艶やかな黄色のマンゴーに、絞り出された生クリーム。下にはつるつるとした、飲み込めそうなサイズの黒いタピオカに、台湾スイーツの豆花(トーファ)、しこしことした食感のナタデココがぎっしり詰め込まれている。


「ふぁーっ……仕事終わりのパフェ、最高! 美味しい、楽しい!!」

「あかねさんが元気になって良かった。俺、心配してたんですよ」

「そ、そうなんですね……ありがとうございます」


 にこにこと機嫌良さそうに笑って、イチゴパフェをつついていた。真っ赤なイチゴを摘み上げて、美味しそうな表情でぱくりと飲み込む。相変わらず、気持ちがいいぐらい食べる人だった。何となく、ぼんやりと見つめたまま、甘いミルクティーをちゅうちゅうと吸い上げる。そうやって見ている間にも、幸せそうな顔をして、イチゴソースがかかったソフトクリームを掬い上げて食べる。


 次はチョコの巻きスティックを取って、ばりばりっと一気に食べていった。また大粒のイチゴを頬張りながらも、横に置いてあるナプキン入れから一枚、ナプキンを抜き取って、汚れのついた指先を丁寧に拭う。


「……食べないんですか? あかねさん。いつもそうやって、俺のこと見てますよね?」

「ああ、綺麗に食べるなぁと思って。それだけ」

「母に厳しく躾けられましたからね。食事中でも、油断すると拳が飛んできましたよ」

「えっ!? 拳が!?」

「拳は大げさだったかな? でも、ちょっとでも背筋を曲げると、叱責が飛んできたりして。手も思いっきりつねられたし」

「つね、つねられた……!?」

「お箸をねぶらない! ってそう叫んでね。だから、食事中も常に気が抜けなくて。弟も俺も」


 ひっ、ひえええええ……!! 大丈夫!? 私、京都生まれのお義母様に絶対絶対、気に入られないんじゃ!? 青ざめつつも、マンゴーをもぎゅもぎゅ頬張っていると、透さんが軽く笑って言ってきた。


「大丈夫です。……あかねさんに何か言ったら、絶縁するってそう言ってあるので。実際、そのつもりだし」

「ま、まぁ、それなら良かったです……」

「はい、安心してください。そうだ、今日の晩ご飯どうします? 一応、冷蔵庫に昨日の牛丼と、茶碗蒸しの残りがありますけど」

「あ~、それでもいいし。別に食べて帰っても……」

「じゃあ、焼肉屋にでも行きましょうか」

「はい。好きですね、お肉……」


 なんか変な関係性になってしまったけど、これはこれで上手くやっていけそう。たらふくパフェを食べて、お店を出たあと、手を繋ぎたがったので、手を繋ぎながら帰る。ビジネス街の夜空は真っ暗で、星なんて一つも見えなかった。その代わり、不気味なぐらいこうこうと光り輝いている、黄色い満月が浮かんでた。やたらと大きい。隣を歩く透さんが、「ああ、ほら」と言って嬉しそうに笑う。


「月が綺麗ですね、あかねさん」

「ああ、ですねえ……」

「でも、まぁ、良かった。こうして一緒にいれて。()()()として」


 繫がれた手にぐっと、強い力が込められる。逃げれないのかもしれないけど、逃げるつもりは無かったから、もうこれでいいや。朔ちゃんがそんなずるい私を、後ろの方でじっと、眺めているような気がした。レンガが敷き詰められた足元を見て、笑う。


「いつまで一緒にいれるか分かりませんけど、まぁ、とりあえず、何年かは一緒にいましょうか!」

「……俺。あかねさんと同じお墓に入れるよう、頑張りますね?」

「重たいなぁ! 重たくて怖い~」

「はははは、冗談ですよ、冗談! そんなことを言うぐらい、あかねさんと一生一緒にいたいって、そう思っているんですよ……」








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