95.精製もできるんですね(生活特技追加:スラちゃん)
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第二章 葡萄の国と聖女
主人公が戦闘狂の聖女と知り合い、葡萄の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第二章 葡萄の国と聖女(95)
【コロンバール編・港町ポルト】
95.精製もできるんですね(生活特技追加:スラちゃん)
「リン(1本)、リン(できた)」
そう言ってスラちゃんが出してきたものは、どう見ても長方形の金の塊、インゴットだった。
「おお、スライムさん、凄いな。金鉱石ばかり選んで食べてるから、かなりの食通かと思ったが、精製できるのだな。」
やっぱりそうなのか。
スラちゃん、鉱石を取り込んで体内で精製したってことか。
でも特技に「精製」なんてなかったはずだけど。
生活特技も確か「鍛治」だったよね。
鉱石からインゴットを作るのはどう考えても「鍛治」じゃない。
納得がいかなかったので久しぶりにスラちゃんを鑑定してみることにした。
○『スラちゃん』 : ベル・スライム(☆☆☆)
従魔 : スライム系(召喚可能)
特技 : 硬化・変形・逃げ足・気配察知
進化先: デアベル・スライム(☆☆☆☆)
素材 : 鉱石担当
生活特技 : 鍛治・精製
うん、いつの間にか生活特技に「精製」が追加されてる。
どういうことだろう?
こんな時は、教えて「中の女性」、お願いします。
…お答えします。従魔たちも独自に成長しています。それにより鑑定表示も変化します。…
すぐに「中の女性」から回答が来た。
そういうことなのか。
確かに従魔たちも従魔である前に星3つの強力な魔物。
経験を積めば成長し新しい能力を得ても不思議じゃない。
そしてその先には進化もある。
進化条件はまだ表示されないけど、時が来ればいずれ示されるのだろう。
「ウィン。」
「はい。」
「スライムさんにお願いして、全部精製してもらえば楽じゃないか?」
そうですね。
さっき見た限りでは、鉱石5個くらいでインゴット1個できる感じだったし、マジックバッグがあるとはいえ、集める量は少ない方が楽だよね。
問題は精製という作業がスラちゃんにとってどれくらい負担になるかという点。
「リン(簡単)、リン(楽々)」
僕の心の動きを読んだのだろう、スラちゃんが全然負担じゃないよって感じで鳴き声をあげる。
「ルルさん、簡単に精製できるようなのでお願いしちゃいましょうか?」
「そうだな、ウィン。」
鉱石の精製をお願いすると、スラちゃんは張り切って走り回り始めた。
時々インゴットを落として行くので、僕とルルさんはそれを拾ってマジックバッグに入れていった。
インゴットはやはり鉄が一番多く、次に銅、たまに銀、金はほとんどない。
この様子だと、洞窟のかなり奥に行かないと白金石や金剛石は出ないのだろう。
ちなみにスラちゃんは、鉱石の種類を選ぶことなく片っ端から体内に吸収している。
おそらく体内で仕分けができていて、インゴットに十分な量が溜まったものを体外に排出しているのだろう。
どんな構造してるのかな、スラちゃんの体。
「ルルさん、新しい勝負を申し込んでもいいですか?」
「勝負ならいつでもいいぞ、ウィン。」
僕は単なるワーム討伐に飽きてきたので別の提案をすることにした。
「ここまでの勝負は僕の負けです。ここからは銀色ワームと金色ワームの討伐数で競いませんか?」
僕がそう言うとルルさんは少し考えてから答えた。
「了解した。しかし問題がある。洞窟内の普通の場所では、銀色と金色はほとんど出ないぞ。」
普通の場所?
ということは普通じゃない場所があるんだろうか?
「銀色と金色が出る特別な場所があるんですか?」
「ある。必ず見つかるとは限らないがな。」
「どういうことですか?」
「洞窟のどこかに、銀色と金色だけ出る空間があるんだが、なかなか見つからない。一度見つけても、入るたびに洞窟の形状が変化するから毎回自力で探すしかない。まあ、運任せだな。」
何それ。
宝探しみたいで楽しそうじゃないですか。
その割にダンジョン前の様子を考えると、挑戦する冒険者が少ない気がするけど。
「ウィン、自分の常識で考えるんじゃないぞ。」
あれ、ルルさんに表情を読まれた?
ルルさんにバレるって相当分かりやすく顔に出てたかな。
「普通の冒険者は簡単に洞窟の奥まで進めない。」
「どうしてですか?」
「カラードワームでも瞬殺できるのは、Bランク以上だ。それも1体だけならな。一度に10体も出てきたら、ほとんどのパーティーは全滅する。」
「でも、上位のパーティーなら可能じゃないですか?」
「それは割に合わない。SランクやAランクの冒険者ならもっと確実に稼げる依頼が他にある。」
なるほど。
労力と報酬を考えると仕事としては美味しくないのか。
僕みたいに道楽だからできるってことだな。
でも透明ワームもいるんだよね。
「透明ワームは、どうなんですか?」
「レア鉱石は魅力的だが、『透明』は宝くじみたいなものだ。」
確率が低すぎるってことですね。
でもこの世界にも「宝くじ」ってあるんだね。
いや、自動翻訳のせいかもしれないのでそのままとは限らないな。
「それで、どうします? 銀色と金色。」
「もちろん探す。」
「割に合わないんじゃ・・・」
「勝負にそれは関係ない。」
キッパリと言い切るルルさん。
これは、見つけるまで帰らない感じだね。
次回から「勝負」という言葉を使うのは、よく考えてからにしよう。
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