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92.ダンジョンの魔物(討伐クエスト:カラードワーム)

見つけて頂いてありがとうございます。


第二章 葡萄の国と聖女


主人公が戦闘狂の聖女と知り合い、葡萄のコロンバールで様々な出来事に遭遇するお話です。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第二章 葡萄の国と聖女(92)

【コロンバール編・港町ポルト】


92.ダンジョンの魔物(討伐クエスト:カラードワーム)



薄暗い洞窟ダンジョンの中を警戒しながら進んで行く。

洞窟は今のところ幅も高さもかなりあり、戦闘になっても支障がなさそうな大きさだ。

カラードワームは土の中にいるので、床、壁、天井、どこから出て来るか分からず、狭い洞窟だと対応が大変になるらしい。


しばらく進んで行くと洞窟が二股に分かれている場所に行き着いた。

さてどっちに進めばいいのかな。

何か目印とか置かないとどこにいるか分からなくなりそう。

それに帰りはどうするんだろう。


「ルルさん、ここの地図とか買った方が良かったんでしょうか?」

「地図は無駄だ。」

「無駄?」

「毎回変化する。」

「この洞窟、毎回変わるんですか?」

「そうだ。」


ダンジョンって、毎回変化するものだっけ?

探索を重ねて詳細な地図を作って攻略していくものだと思ってたけど。

まあ、前の世界の記憶には小説の中に出てくるダンジョンの知識しかないので、リアル・ダンジョンとは異なるのかもしれない。

でも入る度に地形が変わってたら、迷子になりそうだよね。


「じゃあどうするんですか? 帰れなくなりませんか?」

「普通の冒険者は地図を描きながら進む。」

「ルルさんは?」

「私は大丈夫。」

「なぜ?」

「帰る方向は、なんとなく分かる。」


何かAランク冒険者の秘策があるのかと思いきや、まさかの「野性の勘」発言。

でもそれで大丈夫ということは、「野性の勘」というのもハイスペックな能力なのかもしれない。


これで帰りの心配がなくなったので心置きなく探索に打ち込めるなと考えて、もう一つ、要確認事項があることに気づいた。


「ダンジョンの中って、魔法は使えるんですか?」

「もちろんだ。ごく稀に魔法無効のダンジョンもあるが、ここは違う。」

「僕のクエストも大丈夫でしょうか?」

「試せばいい。」


そうだよな、やってみればすぐ分かる。

僕は分岐点手前の少し広くなった部分に向けてクエストを発動してみた。


「炎群! 水雨! 氷壁! 石矢! 大風!」


洞窟の中にたくさんの火の玉が現れ、それを降り注ぐ水の塊が消し去り、氷の壁が出現し、空中に浮かんだ石の矢が風に乗って氷壁を貫いた。


クエストの応用編(僕の中では複雑系と呼んでいる)が、すべてスムーズに発動した。

ダンジョンという特殊な環境でも問題はないようだ。

ちょっと待てよ。

ということはこれもアリなんじゃないかな。


「HOME」


僕がそうつぶやくと、目の前に見慣れた小屋が現れた。

念のためにちゃんと扉が開くか確認してみる。

扉を開けて中を見ると、スラちゃん以外の従魔たちがゴロゴロしていた。

僕がのぞいても軽く手や足を上げるだけで、外に出てくる気はないようだ。

今回はスラちゃんに任せたって感じかな。


それにしても君たち、本来の居場所はどうしたの。

海の中とか、森の中とか、草原とか。

最近いつも小屋の中にいる気がするけど。


僕はひとつため息をついて扉を閉める。

でもこれでルルさんとはぐれても迷子になる心配はなくなった。

小屋を出せばいつでも帰れるからね。


「ウィン、その中はやっぱりあの部屋なのか?」

「はい。」

「従魔たちもいるのか?」

「はい。」

「じゃあ私は従魔たちと・・」

「ダメです。」


ルルさん、簡単なダンジョンがつまらないのは理解しますが、僕の初ダンジョンですから、もう少し頑張りましょうよ。

ディーくん以外の従魔と戦う場は改めて用意するので。

まあ、その前に島の森の討伐クエストを受けてもらいますけどね。

カニバラス・ミニマもハニー・ミニマもラクネ・ミニマも、かなり手強いんで、覚悟してくださいね。


ルルさん育成計画を密かに心の中で立案しながら、僕は分岐点の右側の通路を選んで進んで行った。

意外とカラードワームが出て来ない。

まだ、一体も接敵していない。

そう思いながら歩いていると、だんだん洞窟が狭くなってきた。

後ろからトボトボとついて来るルルさんを振り返り、視線だけで問いかけると、ルルさんがポツリと言った。


「そろそろ、来る。」


ルルさんの言葉が終わるかどうかのタイミングでスラちゃんの警告が響いた。


「リン(上)! リン(右)! リン(下)!」

「石壁(×3)!」


スラちゃんの指示は、単なる言葉じゃなくイメージとして敵が現れる場所を伝えてくれる。

僕は咄嗟にワームが飛び出してくると思われる場所に石壁を出した。


ゴン、ゴン、ゴン。


石壁に何かが激突する音が3度響いた。

石壁を消すと、3体のカラードワーム(茶色)が天井と壁と床から頭だけ出して気絶していた。

ちなみに練習の成果で、今ではクエストで起こす現象を一定時間維持することも、任意のタイミングで消すことも可能になっている。


「だから物足りないと言っただろう。ウィンには簡単すぎる。」


ルルさんが愚痴を言ってくる。

ルルさん、簡単でもいいんですよ。

強い魔物と戦いたいんじゃなくて、鉱石を集めたいだけですから。


僕は剣(黒)でカラードワームの頭を引っ掛けて引きずり出し、洞窟の床に並べた。

そしてとどめを刺す前に魔物鑑定をかけてみる。



○カラードワーム ☆

 体型 : 小型

 体色 : 茶色

 食性 : 鉱石

 生息地: 鉱山・洞窟に生息。

 特徴 : 鉱石類を鋭い牙で噛み砕いて摂取する。

      好んで摂取する鉱石の種類によって体色が異なる。

      目は無いが振動を感知する。

      敵の振動を感知すると地中から飛び出し噛み付く。

 特技 : 噛み付き・掘削



特に気をつけるべき情報は無かった。

振動を感知して地中から飛び出して噛み付く魔物。

索敵が可能であればそれほど脅威にはならない。

物理耐性もないので、ルルさんにとってはカケラも興味が湧かないのだろう。


さあとどめを刺さないとね。

まだ気絶してるだけだからね。

また動き出しても面倒だし。

でもこれ、どうすれば鉱石が手に入るのかな。


そんなことを考えながら剣(黒)を一体のカラードワームに突き刺すと、次の瞬間、カラードワームの体が光の粒子になって消えた。

そしてその後には、鉱石がひとつ残されていた。


読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。

次回投稿は2月13日(月)です。

よろしくお願いします。

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