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83.ルルさんに説明を求めてはいけません(感知クエスト:魔力感知・波動感知)

見つけて頂いてありがとうございます。


第二章 葡萄の国と聖女


主人公が戦闘狂の聖女と知り合い、葡萄のコロンバールで様々な出来事に遭遇するお話です。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第二章 葡萄の国と聖女(83)

【コロンバール編・首都コロン】



83.ルルさんに説明を求めてはいけません(感知クエスト:魔力感知・波動感知)



「師匠、今の技は?」


ルルさんがディーくんに問いかける。

すっかり「師匠」呼びが定着したようだ。

聖女であるルルさんにとっては、ウサくんの方が師匠に適任だと思うけど、聖女より戦闘狂が優先らしい。

戦闘訓練は暇さあればしてるけど、『回復』を習っているところは見たことがない。

まあ、『回復』は習って覚えられるものではないのかもしれないけど。


「短転移と三連切りだよ〜」


ディーくんが答える。

『短転移』と『三連切り』?

僕に対する答えより具体的になってるよね。


「師匠は拳だけでなく剣も使えるんですね。」

「剣術あるからね〜」

「剣はどこに?」

「剣じゃないよ〜。刀だよ〜。ほら、いつでも出せるんだよ〜」


そう言ってディーくんが小さな手を上にあげると、一瞬でそこにでディーくんの身長より長い刀が現れた。


ちょっと待とうか。

いろいろ突っ込んでいいかな。

まず、ルルさん。

僕に対する言葉遣いとディーくんに対する言葉遣い、違い過ぎませんか。

ルルさんの丁寧語、初めて聞いた気がしますが。

それから、ディーくん。

主人に対しては「秘匿事項」とか言ってたのに、ルルさんにはあっさりバラしてるのはどういうことかな。


「あるじ〜、あるじはあるじだけどルルちゃんは弟子だからね〜」


僕の心の中の不満を読み取って、ディーくんがそう言った。

でもそれ、まったく説明になってないし納得がいかない。

あるじには教えないけど、弟子には教えるってどういうこと?

従魔たちの判断基準って、やっぱりよく分からないよ。


「あるじ〜、細かいことは気にしない方がいいよ〜」


ディーくんの言葉にちょっと膝から力が抜けそうになる。

そのタイミングで「中の女性」からメッセージが来た。


…お取り込み中すいません。諸々、表示してもいいですか?…


もちろんいいよ。

なんか微妙に落ち込んでるところだけど、気分転換にクエスト表示お願いします。

諸々ってことはいくつかあるんだよね。



○剣クエスト

 クエスト : 剣を成長させろ

 報酬   : 長剣(黒)

 達成目標 : 魔物を倒す(2000体)

 カウント : 1218/2000


○魔力感知クエスト

 クエスト : 魔法攻撃を見極めろ

 報酬   : 魔力感知

 達成目標 : 魔法攻撃を避ける(100回)

 カウント : 1/100


○波動感知クエスト

 クエスト : 波動を見極めろ

 報酬   : 波動感知

 達成目標 : 波動系攻撃を避ける(100回)

 カウント : 1/100


○討伐クエスト

 クエスト : フルーツラプトルを倒せ

 報酬   : 果実の種(レア 1個)

 達成目標 : フルーツラプトル(1体)

 カウント : (3回達成済み)



一度に4つのクエストが表示された。

1つ目は先ほどに続いて剣クエスト。

カウントが3増えているということは、従魔が倒した数もカウントされるってことだろう。

ということは、フルーツスライムの時もカウントされてたんだね。


2つ目は魔力感知。

これは欲しかったのでとてもありがたい。

でも100回は遠いな。

後でルルさんに風魔法を打ってもらおうかな。


3つ目は波動感知?

波動系攻撃なんてあるんだね。

でもこれは、仲間が誰も使えないので達成には時間がかかるだろうな。

フルーツラプトルは星2つの魔物だったから頻繁には遭遇しないだろうし。


最後は討伐クエストだけど、そう言えば森の中に落ちたフルーツラプトルってどうしたっけ?

えっ、既に解体して倉庫に運んだ?

いつの間に?

解体処理班ラクちゃん・コンちゃん・ウサくん、仕事が早い。

それで、報酬の果実のレアは?

ハニちゃんが確保してる?

さすがだね。

従魔たち、いろいろとフォローしてくれてありがとう。


「ウィン、そろそろ冒険者ギルドに報告に戻るぞ。」


従魔たちと念話でやり取りしてると、ルルさんから帰還を促された。

そうだよね。

これ、冒険者ギルドから受けた依頼だから報告義務があるよね。

だとすると討伐証明とかいるんじゃないかな。


「ルルさん、討伐証明とかどうするんですか?」

「鳥系の魔物の場合は嘴だな。」


鳥系の討伐証明は嘴。

覚えておこう。

ウサくんが全部うちの倉庫に運んだはずだから、後で冒険者ギルドに持ってきてもらえばいいか。


「じゃあ、転移で帰りましょう。従魔たちは召喚解除するので、小屋で待っててね。」


従魔たちを冒険者ギルドに連れて行ったら、別の大騒ぎが起きそうな気がするので、まず召喚解除で小屋に送り返した。

その後、ルルさんと二人、転移陣で冒険者ギルド前に移動した。



   *   *   *   *   *   *



冒険者ギルドに入ると、1回のフロアはまだ騒然としていた。


「俺たち『死神』は、Cランクだから森の中に行くぞ!」

「分かりました。Dランクの『与太吹き』と『悪銭』の2パーティーは南の街門前で兵士隊と合流してください。」

「俺たちはどうすればいい?」

「Eランク以下の冒険者の方々は街の住民に屋内に避難するよう呼びかけて下さい。」

「フルーツバードなのに、街に来るのか?」

「一応、念のためです。葡萄農園には既にギルドから避難勧告済みです。」

「Cランクパーティー『宵越し』、今戻った。どこに行けばいい?」

「『宵越し』さんは、『死神』さんと森の中の討伐に向かって下さい。」

「分かった。」


なんか大変な騒ぎになっている。

フルーツバードの群れは倒したよね?

ついでにフルーツラプトルも。

まだ別の群れがあるのかな?

早朝より殺気立ってるけど。


「あっ、ルル様と・・・・・・ウィンさん!」


冒険者たちに指示出しをしていた受付嬢が僕たちを見つけて声をかけてきた。

今、ルルさんと僕の名前の間にかなり長い間があったような。

まあ、僕は寛大なので気にしないけど。

ちょっとしか。


「ルル様、フルーツバードの群れはかなり大きいみたいです。ルル様頼みになりそうです。よろしくお願いします。」


(?)


受付嬢さんの言葉を聞いて僕の頭の中に疑問符が浮かぶ。

彼女は何を言ってるんだろう。

僕は説明を求めてルルさんの顔を見る。


「ウィン、ここから南の森まで普通は半日かかる。私たちが冒険者ギルドを出てからまだ1時間も経っていない。だからギルドはまだ討伐の準備中だ。」


なるほど。

今回はルルさんの説明でも状況が把握できた。

僕たちの討伐が早過ぎたってことですね。

たぶん僕が「もう討伐終わりましたよ。」って言っても誰も信じてくれないと思うので、報告はルルさんに丸投げしよう。


「みんな聞いてくれ!」


よく通る綺麗なルルさんの声が冒険者ギルドの1階フロアに響いた。

その一声で喧騒に包まれていた空間に静寂が満ちる。

フロアにいる全員の視線がルルさんに向けられた。

ルルさんが静かになったのを確かめるように全体を見回して言葉を続ける。


「フルーツバードの討伐は、終了した。」


ルルさんはそこで言葉を止めた。

冒険者たちとギルド職員たちは驚きの表情を浮かべながらも、ルルさんの次の言葉を待っている。

ルルさんはひとつ息を吸い込んでから言葉を発した。


「以上!」


思わず、ずっこけかけた。

いや、実際に転んでる冒険者もいるね。

いやいやいや、ルルさん、さすがにそれはない。

説明を省略するにも程があるんじゃないですか。

ルルさんだから誰も文句は言ってないけど、普通なら怒号が飛び交うと思いますよ。


「ルル様、それはいったいどういうことでしょうか?」


先ほど声をかけてきた受付嬢さんが、勇気を振り絞った感じでルルさんに尋ねてきた。

さすがにこのままでは情報が無さ過ぎてどうしていいか分からないよね。

さあ、ルルさん、もう少しきちんと説明しましょうね。

そう思ってルルさんを見ると、ルルさんは表情を変えずに受付嬢さんに言った。


「詳しいことは、ウィンが説明する。」


やられました。

丸投げしたつもりが、あっさりと丸投げ返されました。

どう説明しましょうかね。


読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。

次回投稿は1月23日です。

よろしくお願いします。

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