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76.後回しにします(名前疑惑)

見つけて頂いてありがとうございます。


第二章 葡萄の国と聖女


主人公が戦闘狂の聖女と知り合い、葡萄のコロンバールで様々な出来事に遭遇するお話です。


投稿、遅くなりました。

今日から週3回(月・水・金)の投稿になります。

よろしくお願いします。


第二章 葡萄の国と聖女(76)

【コロンバール編・首都コロン】



76.後回しにします(名前疑惑)



…管轄が違いますので。「訓練を受けろ①」はキリ…



僕はこのメッセージを見てある疑問を持った。

あの島に名前があるのかもしれない。

あるいは、「中のヒト」に名前があるのかもしれない。

キリなんちゃら。

ネーミングセンスの無さに定評のある僕では、推測は不可能だけど。


もし「中のヒト」に名前があるのなら、当然「中の女性」にも名前があるに違いない。

ストレートに訊いてみようか。


(島に名前があるの?)


心の中で尋ねてみた。

しばらく待ったけど「中の女性」から返事はない。


(中のヒトに名前がある?)


続けて質問してみる。

この問いにもメッセージは返って来ない。

どうやら答える気がないようだ。


もしどちらかに名前があるとして、またはどちらにも名前があるとして、それを明らかにすることに何か問題があるのだろうか。

いずれにしろ「中の女性」が答えてくれないと、僕には解明する手段がない。

記憶が戻れば何か分かるのかも知れないけど。


「ウィン、何をぼーっとしてる。行くぞ。」


ルルさんの声で我に返った。

「中の女性」とのやり取りは当然他の人には分からないので、結構な時間考え込んでいるように見えたようだ。

でもルルさん、行くって、いったいどこに?


ルルさんの方を見ると、いつの間にかその膝の上にディーくんがちょこんと座っている。

ディーくんは短い手で外を指した後、ルルさんの膝に座ったままでシャドーボクシングの仕草をして見せた。


そうでした。

島に行って訓練ですね。

とりあえず「名前疑惑」は、そのうちまた考えよう。



   *   *   *   *   *



小屋を経由して島の台地の上に移動した。

呼び名がないと面倒なので、この場所を「島の訓練場」と命名した。

やっぱり名前は分かり易いのが一番だよね(いつもの言い訳)。


訓練を始める前に、まずルルさんにクエストを設定する。



○訓練クエスト

 クエスト : クマさんの訓練を受けろ①

 報酬   : 転移陣(単独)

 達成目標 : クマさんの訓練を受ける(10日) 

 カウント : 0/10

 受注者  : ルル



よし、ちゃんと設定できた。

あれ、「テディ・ミニマの訓練」のところが「クマさんの訓練」になってる!

クマさんじゃなくてディーくんだよね。


…ルルにとってはクマさんだ。…


島なのでメッセージの発信者は「中のヒト」だ。

いや、名前はきちんとしたほうが良くないですか。


…テメェは相変わらず、洒落ってもんがわからねぇやつだな。…

 

「中のヒト」にディスられました。

塩対応というより、ずいぶん口調が乱暴になってないですか?


…うるさい、ほら、テメェの分だ。…



○訓練クエスト

 クエスト : ディーくんの訓練を受けろ②

 報酬   : 剣術(初級)

 達成目標 : ディーくんの訓練を受ける(10日)

 カウント : 0/10



僕の訓練クエストが表示された。

今回の報酬は「剣術(初級)」になってる。

このパターンだと、スキルを獲得するためのクエストとそのスキルのレベルアップのためのクエストが別々の系統になるってことかな。


「じゃあ始めるよ〜。最初はルルちゃんね〜。動けなくなったらあるじと交代ね〜。」


ディーくんが訓練開始を告げる。

ていうかディーくん、「ルルちゃん」呼びしてる。

アリーチェさんの影響だな。

それにしても時間制じゃなくて動けなくなったら交代だと、すぐ交代になりそうだけど。

まあ、ディーくんの手加減次第か。


「ルルちゃん、スキルと武器なしね〜。敏捷は使っていいよ〜。」

「了解した。クマさん、よろしく頼む。」


ルルさんとディーくんは向かい合って一礼し訓練を開始した。


好戦的なルルさんはいきなりディーくんとの間合いを詰める。

大振りでは当てられないと判断したのだろう、小さな振りで左右の拳を連打する。

ディーくんは小さいので慣れないと戦いにくい相手だけど、ルルさんもいろいろなサイズの魔物との戦闘経験があるはずだ。

特にぎごちなさは見えなかった。


ディーくんは大きく動くことなく、最小限の見切りで全ての打撃を躱していく。

早回しの映像を見ているような高速の接近戦。

でも力量の差は明らかだった。


ルルさんの攻撃が少し緩んだ瞬間、ディーくんの拳がカウンター気味にルルさんの腹部に入った。


(あっディーくん、そのパンチちょっと強すぎ。)


ルルさんの動きが止まり、一瞬立ったまま堪えたものの、そのまま仰向けにひっくり返ってしまった。

大の字になったまま起き上がれない様子。


「あれ〜。ちょっと加減間違えたかな〜。」


ディーくん、呑気に頭かいてますけど、その拳は凶器だからね。

軽く振っても、フルーツスライムがパンってなってたからね。

ルルさんの装備、龍革(白色だから白龍?)でかなり防御力が高いらしいんだけど、ほとんど役に立ってない気がする。


(あれは立てないかも。)


そう思って慌ててルルさんのところへ向かおうとすると、急にルルさんが上半身を起こした。

良く見ると隣にウサくんがいる。

いち早く影潜りで移動して、ルルさんにヒールをかけてくれたようだ。

いつものんびりモグモグしてるのに、こんな時は素早い。


「師匠、もう一回。」


ルルさんは立ち上がって訓練を続けようとする。

そしてディーくんの呼び方が「クマさん」から「師匠」になってる。

でもディーくんは首を振って否定した。


「だめだよ〜。あるじに交代ね〜。ウサくんのヒールが必要になった時点でダウン判定だよ〜。」


ルルさんは悔しそうにしてたけど、ディーくんにそう言われて素直に引き下がった。

ウサくんは影潜りでその場から消えた。

そう言えば、他の従魔たちは何をしてるんだろう?

そう思って後ろを振り返ると従魔たちは草原にソファを置いて、その上でくつろいでいた。


そのソファ、小屋から出せるんだね。

初めて知ったよ。


ルルさんと交代してディーくんの向かい側に立つ。

報酬は剣術(初級)になってるけど、木刀も刃引きした練習用の剣も何もない。

まさか、僕の短剣(黒)で訓練するんだろうか。

これ、結構よく切れるんだけど。

そんなことを考えているとディーくんから指示が来た。


「あるじ〜、武器もクエストもなしだよ〜。拳で語り合おうね〜。」


え〜と、意味がよく分からないんですが。

剣術の訓練じゃないの?


「獲得報酬は剣術のスキルだけど、訓練は何でもいいんだよ〜。じゃあ前回の復習からね〜。」


僕の怪訝な顔を見て、ディーくんが説明を付け足してくれた。

今ひとつ納得いかないけど、ディーくんが動き出したので、僕も動かざるを得ない。

それから30分ほど、倒れることもなくディーくんと拳を交わした。


前回の訓練のおかげで慣れてるからね。

僕じゃなく、ディーくんが。

絶妙の手加減、ありがとうございます。


読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂く方が増え、励みになります。

次回投稿は金曜日です。

よろしくお願いします。

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