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74.ワインの買取交渉をします(200本+1:黄金のワイン)

見つけて頂いてありがとうございます。


第二章 葡萄の国と聖女


主人公が戦闘狂の聖女と知り合い、葡萄のコロンバールで様々な出来事に遭遇するお話です。


お正月3日までは毎日投稿する予定です。

よろしくお願いします。


第二章 葡萄の国と聖女(74)

【コロンバール編・首都コロン】



74.ワインの買取交渉をします(200本+1:黄金のワイン)



貯蔵庫は地下に作られていた。

小屋が出現して以来初めての縦展開。

地下ができたということはそのうち二階とかもできるかもね。

というか自分で願えばいいのか。

後でやってみよう。

今はまず、貯蔵庫のチェックだ。


床に新しく出現した跳ね上げ式扉を持ち上げると地下へと続く階段が現れた。

早速下に降りようと思ったけど、視線の先は真っ暗で何も見えない。

地下だから窓もないし、暗くて当たり前だけどね。

ジュエルの水槽を取ってこようかなと考えていると、親切なガイド役「中の女性」からメッセージが来た。


…ウィンぽっ、手を叩いてみて下さい。…


手を叩く? 

柏手みたいな感じでいいのかな?


僕は、両手を体の前で合わせるように、軽くパンと叩いてみた。

すると地下への階段の両側の壁がうっすらと光り始めた。


「なにこれ? 壁が光ってますけど。」


僕は思わず声に出して「中の女性」に尋ねていた。

弱い光だけど、足元や周囲を見るには十分な明るさだ。


…『感音照石』を使ってみました。音に反応して弱い光を発します。貯蔵庫にはこれくらいの明かりで十分かと。しばらくすると光は消えます。…


何それ。

滅茶苦茶便利そうなんですけど。


「その『感音照石』って、簡単に手に入るの?」


…いえ、かなりレアです。採れる場所が人外魔境なので。…


そうなんですね。

行けるようになったら採りに行こうかな。

あっ、行くだけだったら行けるのか。

「転移陣」で「感音照石」がある場所って念じれば行ける気がする。

ただそこで無事に生き残れるかどうかは別の問題だけどね。


ダメだ、すぐに思考が逸れてしまう。

今は貯蔵庫の確認だった。

なんか「後でやろうリスト」がどんどん増えてる気がする。

メモしておかないと忘れそうだ。


うっすらと見えるようになった階段を降りて貯蔵庫に入る。

従魔たちも全員後ろからついてくる。

貯蔵庫の中はまだ真っ暗だったので両手をポンっと打ち鳴らすと、階段と同じように壁がゆっくりと弱い光を発し始めた。


基本の16倍で作ったので貯蔵庫はかなり広かった。

設備は後で考えようと思っていたけど、ほとんどすでに設置されていた。

縦置き用の棚、横置き用の棚、樽置き場まである。


(至れり尽くせりですね。ありがとう、中の女性。)


…そんな、当然です(赤面)。それから、時間停止機能、時間経過機能については部分指定可能になっております。…


完璧です。

てことは蒸留酒を樽で手に入れれば熟成を加速させることもできる。

これ、お酒の収集にハマりそうな予感。

コンちゃんだけでなく、僕も前の世界で酒好きだったのかもしれない。



貯蔵庫の確認を終えて、僕は小屋を出てアリーチェさんのレストランへ向かった。

マッテオさんとワインの買取交渉をするためだ。


従魔たちはついて来なかった。

朝ご飯を食べて休憩するらしい。

もしかしてまた夜通し食材と素材集めしてたのかな。

島なら何の心配もいらないけど、この辺りで従魔たちが勝手に出歩いてると問題あるだろうし、後で確認しとかないと。


「おはようございます。」

「ウィン君、おはよう。酒は残ってないか?」

「大丈夫です。」


レストランに入るとすでにマッテオさんが待っていた。

アリーチェさんの姿は見えない。

厨房で料理の仕込みをしてるのかもしれない。


僕はマッテオさんの向かいの椅子に腰を下ろした。

テーブルの上には4本のワインが置かれている。


「早朝から農園を走ってたらしいな。」

「はい、気持ち良かったです。みなさんにも声をかけてもらいました。」

「みんな感心してたぞ。やっぱり強い冒険者は違うと。」

「いえいえ、そんな立派な理由じゃないんですけど・・・」

「謙遜しなくてもいいぞ。あれだけ飲んだ次の日も訓練を欠かさないっていうのは、なかなかできることじゃない。」

「いえ、本当に・・・」


貯蔵庫を作るために走ってましたなんてとても言えない。

まだ説明も難しいし。


「ところでワインのことだが。」

「はい。」


僕は背筋を伸ばして座り直し、目の前の4本のボトルを見た。

昨日飲んだ白ワインと赤ワインが1本ずつ。

それからラベルが少し違うワインの白と赤が1本ずつ。


「うちではいわゆる高級ワインは作ってない。普通のワインとちょっといいワインの2種類だけだ。それぞれ白と赤があるから全部で4種類。普通のワインは1本銅貨1枚。ちょっといいのは銅貨2枚だ。」


マッテオさんは言い終わると僕のほうを見た。

どうするって感じの表情だ。

僕は頭の中で計算してからワインの買取本数を決めた。


「分かりました。では、4種類各50本ずつで計200本買わせて下さい。」


僕はそう言いながら代金の銀貨30枚をテーブルの上に置く。

マッテオさんは微笑みながら頷き、僕にお礼を言った。


「ありがとう、ウィン君。自分が作ったワインを買ってもらえるのはとても嬉しいものなんだ。お金のこととは別にな。」

「僕のほうこそ、マッテオさんのワインをたくさん手に入れることができて満足です。飲むのが楽しみです。」


僕は素直な気持ちをマッテオさん告げた。

最初は買い取ったワインを酒鑑定のレベル上げに使おうと思ってたけど、マッテオさんの造り手としての気持ちを聞いてしまうと、そんな風に飲むのは失礼な気がした。

レベル上げ用のお酒は街中で適当に買って来よう。


「じゃあ次は薬草の差額分のワインだが。」


マッテオさんはそこで一旦言葉を止め、テーブルの下から1本のワインを取り出して僕の前に置いた。

そのワインにはラベルがなく、白ワインでも赤ワインでもなかった。琥珀色にも見えるけど、もう少し明るくて光が当たると輝く感じ。

そう、黄金色だ。


(スラちゃんの色だ。)


従魔の体の色と比べるのはどうかと思ったけど、見た瞬間スラちゃんが思い浮かんだ。

透明だけど黄金。

あの不思議な色。


「このワインは、販売用じゃないんだ。まあ趣味で造ってるようなものだな。造り方が難しくてとても手間暇がかかる上に量も少ししかできない。グラス1杯分を造るのに葡萄の木1本分の葡萄が必要になる。」

「それは・・・ものすごく貴重なワインじゃないですか。」

「言っただろう、趣味みたいなものだって。だから値段は無いんだが、差額分の代わりにこれを受け取って欲しい。」


僕は絶句した。

いくら値段がないといっても、明らかな高級品。

かけた手間暇は相当のものだろう。

こんなもの、もらっちゃっていいの?


読んで頂いてありがとうございます。

次回投稿は明日です。

よろしくお願いします。

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