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63.砂浜での決闘(ルルさん vs ディーくん)

見つけて頂いてありがとうございます。


第二章 葡萄の国と聖女


主人公が戦闘狂の聖女と知り合い、葡萄のコロンバールで様々な出来事に遭遇するお話です。


年内は毎日投稿する予定です。

よろしくお願いします。


第二章 葡萄の国と聖女(63)

【コロンバール編・首都コロン】



63.砂浜での決闘(ルルさん vs ディーくん)



「戦ってあげてもいいよ〜」


戦闘意欲満々のルルさんに対してディーくんが名乗りを上げた。

ちょっと待ってと思ったけど、ある意味適任かもしれない。

ルルさんが拳で戦うのならそれほど酷いことにはならないだろう。

まあ、ランクA冒険者がどれくらい強いのか、よく分かってないんだけどね。


「1対1ということか? クマさん、一人でいいのか?」

「クマさんじゃないよ〜。ディーくんだよ〜。強いんだよ〜。」


ルルさんの確認に対して、ディーくんは名前を訂正してる。

それから強さもアピールしてる。

ルルさんの反応も理解はできるんだよね。

ディーくん、見た目は小さくて可愛い熊のぬいぐるみだから。

でも、メチャクチャ強いからね。


「小さいとはいえ星3つ。油断はできないということだな。」

「油断したら瞬殺だよ〜。」


ディーくん、のんびり口調で凄いこと言ってる。

でも僕も初見で瞬殺されたからね。

二人ともやる気みたいだし、仕方ないから外の砂浜で手合わせしてもらおうか。


「じゃあルルさん、外に出ましょう。」

「ウィン、いくら私でも教会の敷地で戦うのはちょっとな。」


あっそうか、ルルさん、扉の外はまだ教会のバックヤードだと思ってるんだね。

でもさっきルルさんの部屋でタコさんを紹介した時、すぐ戦おうとしてた気がするけど。

どこで戦うつもりだったんだろう。


「ルルさん、とにかく外に出れば分かるので。」


説明が面倒なので扉を開けて外に出る。

もちろん扉を開ける前に「島の砂浜」と念じるのも忘れない。

僕の後から扉をくぐったルルさんは、砂浜の景色を見て固まりかけたけど、何とか踏みとどまったようだ。


「驚いてはいけない。これがウィンの当たり前。」


ルルさん、砂浜を見ながらなんか呪文みたいに唱えてるけど、まあ慣れてくれればそれでいいかな。


「これが島です。従魔たちと出会った場所。たぶん無人島だと思います。」

「分かった。何がどうなったのか分からないが、ここが島なのは分かった。これがウィンの当たり前。」


それ、ルルさんの口癖になるのかな。

なんか嫌だな。


最後にディーくんが小屋から出て来た。

他の従魔たちは小屋に残るようで誰も出てこない。

初めての来客なのに興味ないのかな?


「じゃあ始めますよ。お互い、武器はなしでいいですね。」

「ああ、私は拳で戦う。」

「同じでいいよ〜。」


砂浜で一定の距離をとってルルさんとディーくんが向き合った。

開始の合図は特にない。

ルルさんが両手を胸の前で構え、ディーくんは砂の上で軽くステップを踏んでいる。


砂浜に緊張感のある静寂が満ちていく。

太陽はかなり傾き、オレンジ色に変わりつつある。

僕は二人の動きを眺めながら、何となく不安になる。

二人とも怪我だけはしないで欲しい。


波の音だけが響いている浜辺。

寄せては返すその音が一瞬消えたタイミングで、ルルさんが先に動いた。

ディーくんに向かってまっすぐに一歩目を踏み出そうとした。

でも次の瞬間、ディーくんは既にルルさんの背後にいた。

そしてルルさんはゆっくりと砂浜の上に崩れ落ちた。


(やっぱり、そうなるよね。)


ある程度想像してたけど、まさに瞬殺だった。

僕は急いでルルさんに駆け寄り、気を失っている彼女を抱き上げる。

ディーくんは頭をかきながら申し訳なさそうに近づいてきた。


「加減はしたんだよ〜。でもその子、遅過ぎるから〜。」


ルルさんの話だと星3つの魔物はBランク以上の冒険者が対応するということだった。

ルルさんはAランクなのでもしかすると大丈夫かもしれないと思ってた。

ただ、ディーくんは星3つの従魔たちの中でも飛び抜けて強い。

正直、星3つは詐欺じゃないかと思うほど。

やっぱりちょっと、いやかなり無理だったな。


ルルさんを小屋の中に運び込むと、従魔たちがソファの周りで待っていた。

ソファには枕と掛け毛布のようなものが置いてある。


「これ、どうしたの?」


(ラクちゃんが作ってくれたの。枕の中の葉っぱはウサくんが集めてくれたの。あるじの部屋にもあるの。快適なの。)


僕の疑問にタコさんが念話で説明してくれた。

ラクちゃん、布が織れるの?

そういえば生活特技に裁縫があったね。

素晴らしい。


あっ、そんなこと言ってる場合じゃなかった。

ルルさんを寝かさないと。


ルルさんをソファに寝かせるとコンちゃんがかけ毛布をかけてくれた。

従魔たちはこの結果を予想して小屋に残って準備してたらしい。


気を失ってるルルさんを心配そうに見ていると、ウサくんがピョンとソファに乗り、そのツノをルルさんの頬に当てた。

ウサくんのツノから光の粒が溢れ、ルルさんを包み込む。

しばらくして光が消えるとルルさんがゆっくり目を開いた。


「私は、負けたのか?」


ルルさんの第一声は勝敗の確認だった。


はい、瞬殺でした。

でもそんなことは言わない。


「ディーくんは、規格外だから。」

「ウィンはクマさんにどうやって勝った?」

「えっ、勝ってないけど。」

「勝たずにどうやって従魔にした?」

「どうしてでしょう?」


相変わらず会話が締まらない。

分からないんだからしょうがないよね。

ルルさんは諦めたのだろう、質問相手を変更した。


「クマさん、ウィンは私より強いのか?」

「クマさんじゃないよ〜。ディーくんだよ〜。あるじは君より速いよ〜。」


ルルさん、いい加減ディーくんの名前を覚えてあげてほしい。

それからディーくん、本当に僕の方がルルさんより速いの?

でも強いとは言わないんだね。


「ウィンは、私より速いのか。」

「うん、速いよ〜。」

「強さは?」

「相性とか条件とかあるからね〜。でも何でもありなら、あるじの方が強いかな〜。」

「そうか。」


えっ、僕の方が強いの?

Aランク冒険者のルルさんより?

そんなこと言ったらルルさん落ち込んじゃうんじゃ・・・いや落ち込んでないな。

心なしか嬉しそうに見える。

しかも目が再び怪しく光ってる気がする。

とても嫌な予感。


「ウィン」

「はい?」

「永遠についていくからな。」


「一生」が「永遠」に昇格したようです。

その違いはよく分かりませんが。


読んで頂いてありがとうございます。

次回投稿は明日です。

よろしくお願いします。

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