60.ルルさんの部屋にお邪魔します(聖女:ルル)
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第二章 葡萄の国と聖女
主人公が戦闘狂の聖女と知り合い、葡萄の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
年内は毎日投稿する予定です。
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第二章 葡萄の国と聖女(60)
【コロンバール編・首都コロン】
60.ルルさんの部屋にお邪魔します(聖女:ルル)
〜(独白)〜
女性の部屋にお邪魔してます。
もちろんこの世界では初めてです。
前の世界ではどうだったか?
記憶がないので分かりません。
ルルさんの部屋は、予想通りアレな感じです。
それでも少しは緊張したりしますが。
* * * * *
商業ギルド前での従魔召喚騒ぎの後、僕とルルさんは教会に向かうことになった。
なぜ二人で教会に行くのか?
それはそこにルルさんの部屋があるからだ。
ではなぜルルさんの部屋に行くのか?
ルルさんの言い分はこうだ。
「まだ従魔に紹介してもらっていない。外で召喚すると騒ぎになる。私の部屋なら大丈夫。」
とてもシンプルで分かりやすい。
筋も一応通っている。
ただ疑問点がいくつか残されている。
なぜルルさんは教会に部屋があるのか。
教会の中で従魔とはいえ魔物を出して本当に大丈夫なのか。
あと、女性の部屋に男性である僕が入っていいものなのかどうか。
誰かこの国の常識を教えて下さい。
そういうことを確認しようとしたところ、ルルさんはこう言った。
「すべて私の部屋で話す。」
いや、それではいろいろ遅い気がするんですが。
とにかくついて来い?
はい、分かりました。
そんな話の流れの末に僕は今、ルルさんの部屋の木の椅子に座っている。
ルルさんの部屋は教会の建物の中ではなく、バックヤードにある小さな木造の小屋の中にあった。
見た目は僕の小屋の外見と大差がなく、中はとても狭い。
その狭い部屋に必要最低限の家具と武器類、防具類が置いてある。
シンプルで武闘派。
まるでルルさんそのもの。
ルルさんは椅子に座って心なしか目をキラキラさせている。
もちろん僕に対してではない。
これから出会えるであろう従魔たちへの期待で。
でもその前に確認したいことがある。
「ルルさん、どうして教会の敷地に住んでるんですか?」
「聖女だから。」
「?」
そういえばアンドレア隊長がルルさんのことを「孤高の聖女」とか呼んでたな。
二つ名が「聖女」だからって教会に住めるんだろうか?
「ウィン、人物鑑定してみろ。」
僕が「?」な顔をしているのを見てルルさんが言った。
あれ?
人物鑑定ができるって、ルルさんに言ったっけ?
「どうして人物鑑定ができるって知ってるんですか?」
「できるだろう。」
「できます。」
「じゃあ私を鑑定しろ。」
確かに冒険者ギルドでスキルについて訊かれた時に「鑑定」も答えに入れたけど、「人物鑑定」とは言ってない。
まあルルさんに繊細な説明を求めるのは時間の無駄なので次へ進もうか。
ちなみに人物鑑定については、街中で通りすがりに練習したので既に中級になっている。
○鑑定クエスト
クエスト : 人物鑑定しろ②
報酬 : 人物鑑定(中級)
達成目標 : 人物鑑定(50回)
鑑定項目 : 名前・年齢・種族・職業・スキル・魔力
追加項目 : 称号・友好度
カウント : 達成済み
中級になると称号と友好度の項目が追加されるようだ。
「中の女性」によると「称号」は何かを成し遂げたり、多くの人から認識された内容により自然発生的に付くとのこと。
特別な効果はないらしい。
「友好度」は鑑定された人が鑑定した人に対して持っている好感度で、友情・愛情・肉親の情・憧れ・尊敬などを含み、0〜100で示される。
50より上ならプラス評価、下ならマイナス評価らしい。
「鑑定しますよ。」
「いいぞ。」
一応ルルさんに確認してから鑑定クエスト(中級)を発動する。
すぐにルルさんの人物鑑定の結果が視界に表示された。
名前 : ルル(25歳) 女性
種族 : ヒト族
職業 : 冒険者(A)・拳闘士・聖女
スキル: 敏捷・破壊・魔力視・治癒(上)・浄化(上)
魔力 : 2015
称号 : 『鋼の拳闘士』『孤高の聖女』
友好度: 100/100
ルルさん、僕と同じ年だったんですね。
ちょっと上かと思ってました。
いや見た目じゃなくて、メンタル的な意味で。
それよりルルさんのステータス。
黒山猫ギルド長じゃないけど、なんじゃこりゃって感じ。
見た瞬間に突っ込みどころ満載だね。
まずは職業の項目。
「冒険者(A)」と「拳闘士」は理解できる。
魔物を殴り倒して回るAランク冒険者。
ルルさんのイメージそのものだ。
でも職業に「聖女」?
これって、二つ名とかじゃなくて本物の聖女?
「勇者と聖女」の聖女?
次にスキル。
さすがAランクというラインナップ。
そして治癒(上)と浄化(上)がある。
(上)はおそらく上級ということだろう。
やはり聖女?
魔力は・・・
2015って多過ぎない?
僕が鑑定した中では飛び抜けてる。
今まで2桁の人しかいなかったからね。
それにしてもいきなり4桁ですか。
僕は0ですけどね。
あとは追加項目の称号と友好度。
うん、称号に同じ人が同時に持ってはいけないものが二つ並んでいる気がするのは僕だけかな。
『鋼の拳闘士』と『孤高の聖女』って、どう考えても前衛と後衛の二人分だよね。
最後に友好度。
100/100?
これ、僕に対する友好度だよね。
正直嬉しいけど極端過ぎるんじゃないだろうか。
普通は好感を持っていても、73とか82とか、そういうある意味余白を残した数字が人間的で正しいんだと思う。
まあルルさんだから、しょうがないか。
たぶん興味のない人に対しては全員0/100なんだろうな。
まさに0か100かって感じで。
結構長い時間、黙り込んでいたと思う。
僕が鑑定結果を吟味する間、ルルさんは静かに座って待っていた。
僕は視線をルルさんに向け、質問する。
「ルルさん、確認してもいいですか?」
「もちろんだ。」
「ルルさんは本物の聖女なんですか?」
「そう言っている。」
「だから教会に住んでる?」
「そうだ。」
「聖女としての仕事は?」
「してない。」
「なぜ?」
「つまらないから。」
うん、聖女であることは気にしないことにしよう。
この世界で聖女がどういう役割なのかよく分かってないけど、ルルさんは冒険者、それでいいかな。
何か問題があれば、その時考えよう。
あっ、従魔たちのこと、すっかり忘れてた。
そっちが本題だよね。
まさか従魔たち、あのポーズのまま待ってたりしないよね。
読んで頂いてありがとうございます。
次回投稿は明日です。
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