330. あるじはいなくても従魔は育つ(4つ星揃い踏み)
いつの間にか従魔たちは・・・・・
予定調和的展開ですが、よろしくお願いします。
第四章 氷雪の国と不良王子(330)
(アンソロ編・氷樹地帯)
330.あるじはいなくても従魔は育つ(4つ星揃い踏み)
僕は違和感の正体に気がつき、無言のまま正座しているディーくんに向かって問い質した。
「ディーくん、これ、どういうこと? 従魔たち、全員しゃべってるんだけど。」
「あるじ〜、すぐに気づいたんだね〜。さすがだね〜」
いや、ディーくん、さすがだね〜じゃなくて理由を教えてくれないかな。
言葉がしゃべれたのはディーくんとウサくんだけで、他の従魔たちは念話だったはず。
スラちゃんもリンリン言ってただけなのに、さっきの謝罪は言葉になってたよね。
「スラちゃんはね〜、4つ星になった時にしゃべれるようになってたんだよ〜。でもあるじには鳴き声でも通じるからね〜。そのままにしてただけだよ〜」
そうだったの?
まあ意思疎通ができれば手段は何でも構わないだろうけど・・・・・
ちょっと待って、てことはもしかして。
「そうだよ〜。コンちゃんとハニちゃんとラクちゃんも4つ星になったんだよ〜。やっぱりあるじはいなくても従魔は育つんだね〜。」
ディーくんがいつもののんびりした口調でそう言った。
でもねディーくん、「あるじはいなくても」って部分は語弊があるんじゃないかな。
あるじはちゃんとここにいるし。
ただ最近あんまり構ってなかっただけで。
いや問題はそんなことじゃなくて・・・・・
これで従魔たち全員が星4つになったってことだよね。
つまり「国を滅ぼす」と言われるレベルの従魔が7人。
この世界に幾つの国があるのか知らないけど、これってもう世界を滅ぼすレベルじゃないの?
「あるじ〜、『国を滅ぼす』っていうのはね〜、人間が言ってるだけだよ〜。誰も滅ぼすつもりなんてないし〜。だって滅ぼしちゃったらつまんないでしょ〜。それにね〜、まだまだ上には上がいるんだよ〜。」
ディーくん、いろいろ突っ込み所満載のセリフだけど、この話はここまでにして、後でゆっくり話し合いしよう。
周囲の人たちの表情がどんどん悪くなってる気がするし。
それに今は氷樹地帯の調査を優先しないと。
「ウィン、なぜ止めた。」
ディーくんと従魔たちの進化について念話と言語を織り交ぜて会話していると、ルルさんが割って入ってきた。
どうやら僕がルルさんと従魔たちの激突を回避したことが不満らしい。
「なぜってルルさん、ルルさんと従魔たちが戦ったら、この辺一体が地獄絵図になっちゃうじゃないですか。従魔たちも悪ふざけが過ぎたことを反省してますので、どうか許してやって下さい。」
「許す? 何をだ?」
「えっ、ルルさん、従魔たちの暴走を見てキレたんじゃないんですか?」
「ウィン、何を言っている? 私はキレてなんかいない。従魔たちがさらに強くなったようだから戦ってみようと思っただけだが。」
戦ってみようって・・・・・
光の竜巻状態の時に、このままでは大惨劇になるって言ってませんでしたっけ。
えっ、覚えてない?
巨大化した従魔たちを見た瞬間、戦いたくなった?
どこまで脳内が戦闘狂一色なんですか。
ルルさんと巨大化した従魔たちが戦闘訓練なんかしたら、大惨劇どころか天変地異になっちゃいますよ。
「ということで、今から戦ってもいいか?」
「ダメです。」
「ウィン、どうしてそんな意地悪を言うんだ?」
「意地悪じゃありません。周りの迷惑を考えて下さい。どうしてもやりたいなら『庭』か『島(はじまりの島)』でやって下さい。従魔たちには自分で頼んで下さいね。僕は知りませんからね。」
僕は強い口調でルルさんにそう念を押した。
ルルさんは珍しくちょっと怯んだ表情を見せて、それでもすぐに従魔たちの方へ足を向けた。
僕に言われた通り、自分でお願いするんだろう。
「ウィン殿、よろしいか?」
僕がルルさんの後ろ姿を見送っていると、アルムさんが遠慮がちに声をかけてきた。
「はい、アルムさん。いろいろご迷惑をかけてすみません。」
「いや迷惑ではないが、正直肝が冷えた。」
「申し訳ありません。僕も従魔たちがあんな派手な演出をするとは思わなくて。」
「あれを演出と呼ぶところが、ウィン殿の規格外さなのだろうな。」
アルムさんの声が心なしか震えている。
そんなに怖かったのかな。
そう言えば顔色も良くないね。
「従魔たちは、ああ見えて優しい子たちなので、心配は要りません。勝手に暴れたりしませんので。」
「いやウィン殿、そこは心配していない。ただ、お願いがあるのだが。」
「何でしょう?」
「その・・・ウィン殿の威圧を収めてもらえないだろうか。」
えっ、威圧?
そんなもの出して・・・・・出てるみたいですね。
ダメだな。
知らないうちに【威圧】が発動してる。
だからルルさんも怯んでたのか。
これはちょっと【威圧】のコントロールを練習しないといけないな。
「ところでウィン殿、先ほどディーくんの話が聞こえたのだが、従魔たちが全員4つ星というのは本当だろうか?」
「はい、まだ鑑定してませんが、そうなっちゃったようです。」
意識的に【威圧】を止めると、アルムさんが従魔たちの星の数について質問してきた。
念の為、コンちゃんとハニちゃんとラクちゃんを鑑定してみることにする。
【鑑定結果】
○コンちゃん
種族 : カニバラスコブラ・ミニマ ☆☆☆☆
(カニバラス・ミニマの進化種)
体型 : 中型
体色 : 濃緑色
食性 : 肉食(昆虫類・動物を食べる。)
生息地: 森の中。
特徴 : 植物系食虫植物型
攻撃・捕縛用の長い根と蔓を複数出せる。
根から麻痺毒を出す。
環境に合わせて体色を変化させる。
植物を操る。
特技 : 打撃・捕縛・麻痺・擬態・緑操作
特殊能力:統率
○ハニちゃん
種族 : ハニーワスプ・ミニマ ☆☆☆☆
(ハニー・ミニマの進化種)
体型 : 中型
体色 : 黒色(全身に黒色の短毛)
食性 : 雑食(何でも食べる)
生息地: 森の中。
特徴 : 昆虫系蜂型
口から麻痺針を飛ばす。
尾から毒針を飛ばす。
短距離を瞬間移動する。
魔力の動きを感じることができる。
飛行技術が高く、羽は防水。
風を操る。
特技 : 毒針・麻痺針・飛行・転移(短)・仲間呼び・
魔力察知・風操作
特殊能力:統率
○ラクちゃん
種族 : キメララクネ・ミニマ ☆☆☆☆
(ラクネ・ミニマの進化種)
体型 : 中型
体色 : 金色(金属質の外殻)
食性 : 雑食
生息地 : 森・砂漠・岩山にいる。
特徴 : 足が1番前の1対が鎌状、2番目の1対が槍状。
蜘蛛型の体に蠍に似た尻尾を持つ。
尻尾の先から粘着質で網状の糸を飛ばす。
外殻は魔法を弾く。
土を操る。
特技 : 切断・貫通・投網・地潜り・物理耐性(上)
魔法無効・土操作
特殊能力: 統率
うん、確かに進化してる。
これ、シルフィさん(テイマーギルド・アマレ本部ギルド長)に見せたら卒倒しちゃうんじゃないだろうか。
お読み頂きありがとうございます。
暑い日が続きますが、体調には十分お気をつけください。




