329. 七大魔王降臨(怪獣大決戦?)
久しぶりの従魔揃い踏みです。
ちょっとやり過ぎのようですが。
第四章 氷雪の国と不良王子(329)
(アンソロ編・氷樹地帯)
329.七大魔王降臨(怪獣大決戦?)
「ということであるじ〜。従魔たち、呼んでくれるかな〜」
「えっ、呼ぶって召喚しろってこと?」
ディーくんの言葉に僕は疑問を返した。
なぜなら、わざわざ召喚しなくても目の前にハナちゃんが出てきた【小屋】があるからだ。
従魔たちなら、自分で扉を開けて出て来ればいいだけなのに。
「あるじ〜、何事にもショーアップが大事だよ〜。登場シーンは盛り上げないとね〜」
そういうことですか。
要は目立ちたいと。
確かに最近は従魔たちのことは放置気味だったしな。
まあみんな自立してるから構わないかな、くらいに考えていた。
でもそれはテイマーと従魔のあり方としてはちょっと問題なのかもしれない。
地下都市ララピスで見たテイマーと従魔の関係はとても親密なものだった。
チェチェロさんとマーレだっけ。
海色の尻尾をしたマーレ、可愛いかったな。
チェチェロさんもマーレのことをとても可愛がってた。
よし、従魔たち、久しぶりに全員集合させようか。
「従魔たち、全員来て。」
僕は声に出して【従魔召喚】を発動した。
すると、どこからか強い風が吹き始め、その風に乗って光の粒子が空中で乱舞し始めた。
「なんだ? 新手の魔物か?」
「いや、魔法じゃないのか?」
「でもなんだか綺麗じゃない?」
「綺麗でも攻撃魔法だったら洒落にならないだろう。」
周囲の騎士や冒険者から戸惑いの声が上がる。
初見の者にとっては当然の反応だろう。
これは後で、ルルさんに怒られそうだな。
事前説明なしに妙なことをするなと。
「おいおい、光が集まり出したぞ。」
「本当だ。しかも回転してる。」
「光のトルネード? 光系の特級殲滅魔法じゃないの?」
「やばい! 逃げるぞ!」
周囲の反応が戸惑いから恐怖へと移り、逃げ出す者が出始めた。
まあ目の前に光の巨大竜巻が出現したら、誰でもそうなると思う。
魔物たち、ちょっとやり過ぎじゃない?
ショーアップするにも限度があると思うんだけど。
「あっ、竜巻が分裂したぞ!」
「ダメだ! 逃げ道を塞がれた!」
「どうすればいいの? ここで終わりなの?」
「誰か! なんとかしてくれ!」
巨大な光の竜巻が分裂し、調査隊を取り囲む位置へと移動した。
竜巻の数は7つ。
逃げ場を失った者たちからは悲鳴が上がっている。
あれっ?
召喚した従魔は6人だよな。
なぜ竜巻が7つあるんだろう?
そう思ってディーくんがいた場所を振り返ると、そこにディーくんの姿は無かった。
どうやらこの『召喚ショー』に参加しているようだ。
「あっ、痛い、痛い・・・」
ディーくんのことに気を取られていると突然の痛みがこめかみを襲った。
言うまでもなく、久しぶりのグリグリだ。
ルルさんの両方の拳が僕のこめかみに食い込んでいる。
「ウィン、すぐに従魔たちを止めろ。このままだとアンソロの歴史にその名を刻むことになるぞ。大惨劇の主犯としてな。」
わ、分かりましたルルさん。
僕もそんな気はしてました。
ちょっとくらい従魔たちにも目立つことをさせてあげようなんて、考えていた自分がバカでした。
それにしても痛いです。
いつものグリグリより5割増しくらい痛いです。
えっ、これでも足りないくらいの愚かな所業だと。
何をぐずぐずしているのかと。
はい、いちいちごもっともです。
すぐに対応させて頂きます。
「従魔たち! すぐに姿を現して!」
僕はグリグリの痛みに耐えながら、大声で従魔たちに指示を出した。
しかしこの行動がさらなる阿鼻叫喚を引き起こすことになる。
僕が指示を出すと、7つに分裂した竜巻は徐々にその回転を緩め、それぞれが光の粒子の塊になった。
そして回転が完全に止まると、一斉に強い光を放った。
誰もが一瞬視力を失い、目を閉じて横を向いた。
瞬きを何度か繰り返し、ようやく視界が戻ってきたところで正面を向き、全員がその状態で固まった。
そこには魔王が・・・いや魔王たちが降臨していた。
2本の長い触手を持ち上げて、海中にいるかのようにゆらゆらと揺れている海の魔王クラーケン。
長く鋭い一本角を振りかざし、血のように紅い瞳で辺りを睥睨する銀色の巨大兎。
巨体の中で不思議な光を明滅させながら、不気味な金属音を響かせる小山のような黄金スライム。
毒々しい蛍光色の蔓を無数に周囲へ伸ばし、頭頂部にある開口部をせわしなく開閉する食虫(食人?)植物。
不快な羽音をブンブンと響かせながら、空中で短い転移を繰り返す黄色と黒の縞模様を纏った巨大蜂。
鋭利な刃物のような口元をカチカチと鳴らしながら、鎌と槍のような2対の足を振り回して威嚇するアラクネ。
そして
黄色い巨体に赤いチョッキを着て、蜜壺を抱えたまま小首を傾げているクマのぬいぐるみ・・・・・
ディーくん・・・・・
さすがにそれは・・・・・
版権の問題が・・・・・
「従魔にしても限度がある。」
ルルさんの両拳が僕のこめかみから離れ、強烈な殺気が従魔たちに向けて放たれた。
冗談では済まされないレベルの暴挙にルルさんが本気でキレたようだ。
「従魔たち! ここに集合! そして正座!」
ルルさんが転移で魔王と化した従魔たちを殴り倒しに行く前に、僕は慌てて命令を飛ばした。
じゃないと怪獣大決戦が始まっちゃうし。
次の瞬間、7体の魔王たちは姿を消し、僕の目の前に7人の従魔たちが勢揃いした。
もちろん本来の小さな姿で。
ディーくんは膝を揃えて正座してる。
彼以外は・・・正座してるのどうか判別がつかない。
「従魔たち、ダメじゃないか。魔物の前ならまだしも、一般人の前であんなことしたら大騒ぎになっちゃうだろう。」
僕は少し語気を強めて従魔たちを叱った。
「あるじ、ごめんなさいなの。久しぶりだったからちょっと張り切ってみただけなの。」
「主、謝る。だから聖薬草ちょうだい。」
「主人、陳謝、でも楽しかった。」
タコさんとウサくんとスラちゃんが謝罪の言葉を並べた。
いまひとつ完全に反省してるかどうか、怪しい態度だけど。
「アルジ、スマナイ。ヤリスギタ。」
「ご主人様。お詫びします。」
「殿、ご容赦を。」
コンちゃんとハニちゃんとラクちゃんはストレートに謝罪だけを伝えてきた。
そして一番よくしゃべるはずのディーくんは、なぜか正座したまま黙っている。
あれっ?
なんか違和感が・・・・・。
従魔たちを叱ったら全員(ディーくん以外)が謝ってきただけなのに、ものすごく妙な感じがする。
これはいったい何だろう。
あっ、そうか。
しばらく考えて僕はようやく違和感の正体に気がついた。
お読み頂きありがとうございます。
なかなか更新ペースが上がらず申し訳ありません。
気長にお付き合いください。
よろしくお願いします。




