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326.花小熊、再び(従魔の弟子:ハナちゃん)

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

氷樹地帯の異変の前哨戦。

花柄のあの子が再登場します。


第四章 氷雪の国と不良王子(326)

  (アンソロ編・氷樹地帯)



326.花小熊、再び(従魔の弟子:ハナちゃん)



「ディーくん、来て。」


僕が【召喚】を発動すると、目の前に光の粒が集まりディーくんが現れた。

その右手には既に長剣が握られている。


「あるじ〜、いい判断だね〜。最近、剣の訓練が足りてない気がしてたんだよね〜」


思考が完全に読まれてる。

いや、僕と従魔の場合、メンタルのどこかが繋がってるんじゃないだろうか。


ディーくんの指摘通り、最近はディーくんとの訓練が疎かになっていた。

次から次へといろんなことがあって、訓練どころじゃなかったというのもあるし、ディーくんが忙しかったというのもある。

ディーくん、リベルさんの再教育(従魔ブートキャンプとも言う)にかかりっきりだったしね。


そのせいかどうか分からないけど、『氷だるま』との戦闘で長剣を使ってみた時、なんかイマイチな感じだったんだよな。

思い描いたイメージと実際の動きが微妙にズレているというか。

角度や軌道や間合いが、髪の毛一本分くらいブレているというか。


「あるじ〜、ひとつお願いがあるんだけど〜」

「何?」

「小屋を出してくれないかな〜。弟子を呼びたいんだよね〜」

「弟子? リベルさんのこと?」

「違うよ〜。別の弟子だよ〜」


別の弟子?

そんな人いたっけ?

ルルさんはここにいるから違うし、従魔同士に師弟関係は無いはずだ。

まさかネロさん(冒険者ギルド・コロン本部ギルド長)とか、グラナータさん(同副ギルド長)を弟子にしてないよね。

大穴で武神様とか。


まあ、考えるだけ無駄だな。

とりあえず【小屋】を出せば分かるか。


リベルさん以外の弟子に心当たりがないまま、僕は【小屋】を出すことにした。

誰が出てくるにしろ、敵ってことはないだろうし。


【小屋】が目の前に出現すると、ディーくんがトコトコと近づき扉を開いた。

そしてそこから現れたのは・・・・・花柄模様の小熊だった。


え〜と・・・・・

誰だっけ?

そうだ、ハナちゃんだ。

花小熊フロース・リトルベアのハナちゃん。

シルワの森のお花畑で討伐した魔物だよね。

そう言えばディーくんが弟子にしたんだっけ。


「あるじ様、ハナです。よろしく。」

「えっ?」


ハナちゃんの言葉を聞いて僕は目を見開いた。


ハナちゃんって、しゃべれたっけ?

魔物って普通しゃべれないはずだよな。

うちの従魔たちはしゃべれるけど、例外中の例外みたいだから。

ディーくんがしゃべった時、シルフィさん(テイマーギルド・アマレ本部ギルド長)、驚愕してたもんな。


「ディーくん、ハナちゃんがしゃべってるけど。」

「あるじ〜。そうなんだよね〜。弟子にしたらなぜかしゃべれるようになったんだよ〜。たぶん、あるじの【テイム】の効果だと思うよ〜」


ディーくん、言ってる意味がよく分かりません。

ハナちゃんのことはテイムしてないと思うんだけど。


僕がテイムしたのはディーくんで、ハナちゃんはディーくんの弟子で・・・・・。

つまり僕がテイムした従魔が別の魔物を弟子にすると、弟子も言葉が使えるようになるってこと?

理屈がよく理解できないけど、ちょっとハナちゃんを鑑定してみよう。



【鑑定結果】

◯ハナちゃん

 種族 : フロース・リトルベア(花小熊) ☆☆

 体型 : 小型

 体色 : 緑色

 食性 : 雑食(花が大好物)

 生息地: 森林

 特徴 : 全身を花柄で偽装する。

      咆哮で威嚇する。

      腕力が強く、鋭く長い爪を持つ。

      基本は単独行動。

      おっとりしているようで好戦的。

      剣を使える。

      言葉をしゃべる。

      可食(鍋物がおすすめ)

 特技 : 花偽装・剛腕・切裂・威圧・剣術(新)・言語(新)

 称号 : 『従魔の弟子』



うん、新しい特技が2つ追加されてる。

【剣術】と【言語】。

こんな短期間で2つもスキルが増えるなんてちょっと常識外れじゃない?


あっ、それは僕が言っちゃいけないやつか。

雨後の筍のようにポコポコとスキルを生やしてる人間が、他人のことを批判しちゃいけないな。

すみません。

反省します。


まあとにかく、ハナちゃんがしゃべれるのはこの【言語】というスキルのおかげなんだろう。

【剣術】はディーくんが鍛えた結果だと思うけど、【言語】はいったいどうやって獲得したのかな。

鑑定結果を見るだけじゃ、『従魔の弟子』の効果なのかどうかは分からない。


「あるじ〜、そんなことより魔物がいっぱい来るよ〜。ハナちゃんと二人で頑張ってね〜」


ハナちゃんの鑑定結果を見ながら考え込んでいると、ディーくんがそう言ってきた。


そうだった。

ハナちゃんのことは「そんなこと」で済ませていい問題じゃないとは思うけど、とりあえず今は目の前の魔物に集中しないとね。

【言語】問題は後で検証しよう。

ところでディーくん、「ハナちゃんと二人で」ってことは、君は戦闘に参加しないのかな?


「あるじ〜、今回はアルム君とフェイスちゃんの助っ人に行ってくるよ〜。多少討ち漏らしがあるみたいだからね〜」


そう言われてアルムさんたちの方を見ると、確かに魔物が多過ぎて何体かが冒険者たちの方へ向かっているようだ。


ルルさんは大丈夫かな?

右側を一人で担当してるけど。


そう思って視線を移すと、【風壁】で前に進めないようにして次々に雪狼たちを殴り倒しているルルさんが見えた。


さすが『戦闘狂の聖女』。

敵を殴り倒すためなら魔法の使い方も自由自在だね。


「あるじ様。行きましょう。」


ハナちゃんの声で僕は前方に意識を移した。

雪狼たちがすぐ目の前に迫っている。

僕はルルさんの真似をして【風壁】を発動し、雪狼たちが後ろに抜けるのを防ぐことにした。

そしてそこである疑問に思い至った。


「ハナちゃん、雪狼が見えないんじゃないの?」

「あるじ様、対策、あります。」

「対策?」

「はい。火魔法で、雪、消してください。」


なるほど。

その手があったのか。

ハナちゃん、頭いいね。


僕はハナちゃんの作戦に感心しながら火魔法を発動した。


「炎の絨毯。」


炎の波が一瞬で前方に広がり、地面を覆う雪をすべて蒸発させる。

その途端、真っ白な雪狼たちが姿を現した。

【氷雪偽装】はその名の通り、氷雪が無ければ発動しないようだ。

これならもう肉眼で見える。


「ハナ、行きます。」


ハナちゃんはそう宣言すると、前方左寄りに向かって走り出した。

左半分はハナちゃん、右半分は僕の担当ということだろう。

ハナちゃんの小さな手には、いつの間にか刀っぽい剣が握られている。

刀身に花柄が入った可愛いらしいやつだ。

ディーくんが花ちゃんのために作ってあげたんだろうか。


僕は黒の剣を長剣の状態で空間収納から取り出した。

【俊敏】持ちの魔物相手には、大剣より長剣の方が相性がいい。

倒すだけなら大剣でも問題ないんだけど、雪狼の場合、牙や爪に当たると【氷結牙爪】の影響で剣に氷が付着しちゃうからね。

牙爪を避けて素早く振り抜くには長剣の方が扱いやすい。


ハナちゃんが接敵して無難に雪狼たちを倒していくのを確認したところで、僕も戦闘に参加することにした。

物理で対処すると言っても、基本的には魔法も併用する。

短い【転移】で雪狼に接近し、一撃で屠り、直後にまた転移する。

それを繰り返して次々に魔物たちを狩っていく。

【魔力感知】で周囲を警戒しているので、背後や横から不意打ちを喰らうこともない。


体感で10分くらいだろうか。

気がつくと雪狼たちの討伐が完了していた。

氷樹の森から新手が現れる気配もない。

ルルさんもアルム・フェイスチームも動きを止めている。

とりあえず、魔物の第一陣には完全勝利って感じかな。


そんなことを考えながら一呼吸入れていると、背後から野太い声が聞こえてきた。


「露払い、ご苦労。まあ冒険者風情に負ける魔物など、我らにかかれば瞬殺だがな。」


パラン隊長の上から目線の言葉を聞いて、僕は思わず天を仰いで溜息をついた。


あっ、面倒くさいのが来ちゃった。

これ、相手しないとダメかな。

完全に無視しても構わないよね。

更新間隔が空いてしまい申し訳ありません。

それでも見放さずお読み頂いている皆様に感謝申し上げます。

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