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325. 青と緑は仲が悪いようです(パランとノクセク)

お読み頂きありがとうございます。


青と緑の騎士団、雪狼(魔物)が登場します。

第四章 氷雪の国と不良王子(325)

  (アンソロ編・氷樹地帯)



325.青と緑は仲が悪いようです(パランとノクセク)



「冒険者風情が、こんなところに何用だ?」


先着した青の騎士(青の武具を着ている方)が嘲るような笑いを浮かべながらそう言って来た。

騎乗のまま馬から降りようともせず、こちらを見下ろしている。

しかし、その視線はしっかりとアルムさんに注がれているので、相手が誰か分かった上でわざと侮辱しているんだろう。


僕はちょっと、いや、かなりカチンと来たので、ささやかな意趣返しをすることにした。

仲間を馬鹿にされて黙っているほど僕は温厚じゃない。


でも何がいいかな。

あんまりあからさまだと騎士の集団と揉めちゃうしな。

よしアレを使ってみるか。

スキルとして自覚はなかったけど、どうやら使えるらしいアレを。


(威圧。)


僕は心の中でそう唱えると、青の騎士が騎乗している馬に向けてぶつけてみた。


ヒッ、ヒッ、ヒヒ〜ン


その馬は体をビクッと震わせた後、大きな悲鳴を上げながら後ろ脚で立ち上がり、青の騎士を振り落として一目散に逃げ出した。


うん、馬くん、期待通りの見事な反応だね。

青の騎士は地面にひっくり返ってるし、僕がやった証拠はないし、大成功かな。

でも馬くんには悪いことしちゃったな。

ちょっと反省。

悪いのは乗ってる人で馬くんには責任ないからね。

後でこっそり聖薬草でもあげよう。


「大丈夫か? パラン隊長。」


何が起こったのか分からず仰向けに倒れたまま呆然としている青の騎士に向かってアルムさんが手を差し出した。

青の騎士の名はパラン隊長というらしい。


パラン隊長はしばらくアルムさんを見つめた後、その手を取ることなく、不機嫌そうに立ち上がった。

かなりガタイのいい獣人だ。

立派な角もあるし・・・水牛っぽい?


「冒険者がここで何をしておる?」


パラン隊長は胸を張って先ほどと同じ質問を繰り返した。

これはアレだ。

馬から転がり落ちたことは無かったことにする作戦だな。

でもキョロキョロ自分の馬を探してる時点で威厳も何もあったもんじゃないけどね。

馬くん、主人を置き去りにして白いテントの所まで逃げちゃったし。


「パラン隊長、我々は陛下の依頼で氷樹地帯の調査に来たところだ。」

「ふん。それなら不要だ。我らオール殿下の親衛隊が万事解決するゆえ。」


なるほどそういうことか。

青の騎士団はオール第二王子の親衛隊なんですね。

水牛っぽいパランさんは親衛隊長かな。

ってことは緑の騎士団の方は・・・・・


「果たしてそううまく行きますかな。」


少し遅れて到着した緑の騎士(緑の武具を着ている方)が会話に割り込んで来た。

こちらは手前で馬から降りて徒歩で近づいて来る。

そしてアルムさんの前で膝を付き頭を下げた。


「アルム殿下、ご無沙汰をしております。」

「ノクセク隊長、頭を上げて下さい。私はもう殿下ではないので。」

「そうは参りません。ゴルデ殿下より最大限の礼を尽くすよう言われておりますので。」


やっぱり。

緑の騎士団はゴルデ第一王子の親衛隊だった。

そしてこの緑の騎士は親衛隊長のノクセクさん。

角はなく、髪の毛が黄色と黒の縞々ってことは虎獣人?

パラン隊長ほど大きくないけど、鍛え上げられた体付きをしている。


それにしても上司が違うと部下の態度もここまで違うんだね。

第一王子と第二王子の人柄の差が丸分かりだな。


「ノクセク、それはどういう意味だ?」

「氷樹地帯の魔物は侮れないということですよ、パラン隊長。実際、そちらの騎士たちはすぐに逃げ帰って来たように見えましたが。」

「何だと! 我が隊を愚弄する気か! そちらこそ遅参しておいて何もしておらんではないか!」

「こちらは状況把握もせずに突っ込むような戦略は教えておりませんのでな。」

「貴様!」


うわぁ、一触即発な感じ。

派閥争いの激しさはどの世界でも同じなんだね。

まあ王政の国で本流になるか傍流になるかじゃ天と地の違いがあるだろうし。

これでアルムさんが第三王子派閥を作ってたら、国の中が滅茶苦茶になってたかもしれない。


「ウィン様、戦闘準備を。」


青と緑の言い争いを半分呆れながら眺めていると、後方からフェイスさんがささやいた。

僕は慌てて意識を氷樹地帯に向ける。

視界には何も映らないけど、【魔力感知】が無数の魔力の塊を捉えた。

何かが氷樹地帯を出て、前方の3つの集団へと接近しているようだ。


「みんな、まったく気づいてないな。」

「はい。ウィン様、いかが致しますか?」

「そうだなぁ・・・」


僕は対応を少しだけ考える。

ルルさんとアルムさんは、僕とフェイスさんのやり取りを聞いて指示を待ってる様子。

本来なら周囲の人たちと連携すべきだろうけど、いろいろと手間取りそうだし、出たとこ勝負でいいかな。


「ルルさんは右側、緑の騎士団の前へ。」

「了解。参る。」


ルルさんは返事をするとそのまま転移した。


「アルムさんとフェイスさんは中央の冒険者たちのところ。」

「了解した。フェイス、行くぞ。」


アルムさんも返事と共に走り出した。

フェイスさんがその後ろに続く。


しまった。

僕が2人を転移で連れて行くつもりだったのに出遅れた。

指示を出したらいきなり走り出しちゃうんだもんな。

なんか僕だけ取り残された感じ。


「おい、そこの冒険者、何が起こっておる?」


急に慌ただしく動き出した僕たちを見て、パラン隊長が上から目線で訊いてきた。

ノクセク隊長も訝しげにこちらを見ている。

黙って【転移陣】で消えてもいいんだけど、一言だけ返しておくか。


「魔物の襲来です。」


僕はそれだけ言い残すと隊長二人を置き去りにして左端にいる青の騎士団の前方へと転移した。



転移を終えると、すでにかなりの数の魔力の塊が氷樹地帯の外へと溢れ出していた。

しかし相変わらず肉眼では何も見えない。

【隠蔽】で姿を隠しているのか、透明になる別の能力があるのか。

僕は魔物の情報を得るために、すぐに魔力の塊に【鑑定】をかけた。



【鑑定結果】

◯スノー・ルプス(雪狼) ☆☆ 

 ※ホワイト・ルプス(白狼)の変異種

 体型  : 小型

 体色  : 白色

 食性  : 肉食

 生息地 : 寒冷地域に生息。

 特徴  : 真っ白な狼。

       氷雪の中にいると肉眼では見えない。

       氷雪を見にまとい防御力を上げる。

       牙と爪に氷結効果。

       氷雪上でも動きが速い。

       熱は効かない。

       可食(みぞれ鍋に最適)

 特技  : 氷結牙爪・氷雪鎧・氷雪迷彩・俊敏

 特殊能力: 温熱無効



肉眼で見えないのは【氷雪迷彩】の効果か。

魔力を感じ取れない人には脅威だな。

アルムさん、大丈夫かな。

フェイスさんが一緒だし何とかなるか。


それから牙と爪に当たると氷結しちゃうと。

【俊敏】持ちだし、これも厄介。

まあ【雪玉】や【氷玉】みたいな飛び道具じゃないだけマシだと思おう。


最後に・・・特殊能力の【温熱無効】。

これってあの『巨大氷だるま』と同じだよな。

てことはやっぱりあの人の仕業っぽい?

氷雪系の魔物に火魔法が使えないってのは反則だと思うけど。


僕は一通り鑑定結果を確認して、仲間たちの方を見た。

情報共有が必要かと思ったんだけど・・・・・


全然必要なさそう。


ルルさんは連続で【転移】を使いながら、見えないはずの敵を片っ端から殴り倒している。

【魔力視】持ちだから楽勝だよね。

倒されると【氷雪迷彩】の効果が消えるようで、周囲に雪狼スノー・ルプスの残骸が大量に散乱してるのが見えた。


アルムさんの方は、なぜか雪狼たちが可視化していた。

理由はよく分からない。

獣化して黒獅子になったアルムさんが、白い雪狼の群れの中を縦横無尽に駆け抜けて蹂躙している。

フェイスさんは少し離れたところで何らかの支援をしている様子。


どうやら右側と中央は問題なさそうだ。

あとは僕が担当する左側だけど、何を使おうかな。

火魔法で殲滅、とか思ってたんだけど効かないみたいだし・・・


よし、今回は物理で行こう。


今週、ギリギリの投稿となりました。

次週も最低1話は投稿したいと思っております。

よろしくお願いします。

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