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316. 親はなくとも子は育つ(進化:ホリブルテディ・ミニマ)

『食欲コンビ』による魔物討伐。

知らないうちに従魔も進化していたようです。

第四章 氷雪の国と不良王子(316)

  (アンソロ編・首都セリオン)



316.親は無くとも子は育つ(進化:ホリブルテディ・ミニマ)



「ディーくん、久しぶりだね。」

「あるじ〜、リベル君の特訓で忙しかったからねぇ〜」

「ここまでどうやって来たの?」

「【小屋】からだよ〜。」


そう言えば念のために砦の手前に【小屋】を設置したんだった。

従魔たちは出入り自由に設定してるからそこの扉から来たのか。

でもなぜこのタイミングで?


「ウサくんがね〜、呼びに来たんだよ〜」

「ウサくんが?」

「そうだよ〜。あるじとルルちゃんが苦戦してるって〜」


ウサくん、いつの間にか姿が見えないと思ったらディーくんを呼びに行ってたんだね。

ということは何か秘策でもあるのかな。


「ディーくん、アレを倒す作戦とかあるの?」

「あるよ〜。秘密兵器がね〜」

「秘密兵器?」

「そうだよ〜」

「何それ?」

「それはね〜、リベル君だよ〜。」

「リベルさん?」

「そうだよ〜。ウサくんとコンビでね〜」


リベルさんとウサくんのコンビ?

なんかあんまり想像がつかないけど。

2人とも食べるのが趣味だから『食欲コンビ』とか?


リベルさんって、颯爽と現れていきなり失敗する『出落ちキャラ』のイメージなんだよな。

でも実際は実力がある『光の勇者』だし、ディーくんのお墨付きがあるなら期待できるのかもしれない。


「ふふふ、ウィンさん、お待たせしました。スーパーでウルトラでアメージングなリベルが帰ってまいりました。あの程度の魔物など、一撃で屠ってみせますよ。」


そうそうこの辺なんだよな、リベルさんの出落ち感って。

黙ってればそれなりの勇者なのに、しゃべった途端にダメダメっぽさがてんこ盛りになる。

本当に大丈夫かな。


「リベルく〜ん、前置きはいいからさっさとやっちゃってね〜。ウサくんもお願いするね〜」


僕がリベルさんの活躍について懐疑的になっていると、ディーくんが戦闘開始の指示を出した。

先陣を切るのはウサくんのようで、目の前で薄茶色の体毛が銀色に変化する。

銀色の毛並み、もふもふそうだなぁとか思っていると、その姿が突然消えた。


あれは【影潜り】・・・じゃないな。

4つ星に進化して獲得した【転移(中)】だね。

久しぶりにウサくんの能力を再確認しておこう。


【鑑定結果】

◯ウサくん

 種族  : セイントレプス・ミニマ ☆☆☆☆

       (レプス・ミニマの進化種)

 体型  : 小型

 体色  : 銀色(短毛)

 食性  : 草食。

 生息地 : あらゆる環境に適応。

 特徴  : 草原系兎型魔物。

       攻撃時にツノが伸びる。

       中距離の転移が可能。

       あらゆる状態異常を回復できる。

       あらゆる傷を治療できる(再生含む)。

       光を操作する。

       兎型魔物を統率する。

 特技  : 貫通・転移(中)・ヒール・影潜り・光操作

 特殊能力: 統率



うん、改めて見ると4つ星の能力って半端ない。

普段はゆる〜い感じなので誤魔化されてるけど、ウサくんってやればできる子・・・じゃなくてやれば凄い子なんだよな。


ウサくんは【転移(中)】で『氷だるま』の正面に移動した。

しかしそこは『氷玉』攻撃を受ける危険地帯だ。

ウサくんの存在に気付いた『氷だるま』はすぐに『氷玉』を発射した。


「ウサくん、危ない!」


僕は思わず叫んでいた。

しかしウサくんはもちろん弱くもなければ愚か者でもない。

瞬時に転移して『氷だるま』の頭上に現れると、その角から強い光を発した。


あの光は【ヒール】?

いや、【光操作】か?

でも何のために?

あっ、『氷だるま』の胴体部分にはっきり『核』が見える!


そう思った次の瞬間、光の槍のようなものが『氷だるま』の胴体部に向かって飛び、透明な氷の部分を通り抜けて内部にある『核』の中心を直撃した。


パリーン。


ガラスが砕けるような音とともに『核』が弾け飛ぶと、『氷だるま』はゆっくりと崩れながら白くなり、最後は潰れた雪だるまのようになった。

頭部の顔は崩れたせいなのか、『泣顔』になっていた。


「光の剣一の型【射光】。」


どこからか中学2年生のような台詞が聞こえてきた。

気がつくとリベルさんが砦上部の壁の上で腰に両手を当てて胸を張って立っている。

心なしか体全体が光を帯びている気がする。


それにしても本当に一撃で倒しちゃったよ。

リベルさん、凄過ぎない?

新しい技を身につけたんだね。

でもさっきの、あの、思春期っぽいネーミング、あれはどうかと思うけど。


「ディーくん師匠、説明をお願いする。」


僕がリベルさんの新技の凄さと、そのネーミングの酷さに戸惑っていると、ルルさんがディーくんに対して説明を求めた。


「ルルちゃん、簡単だよ〜。ウサくんが【隠蔽】を解除してリベルくんがトドメを刺しただけだよ〜」


うん、ディーくん、それじゃあ説明が簡単過ぎるんじゃないかな。

もうちょっと噛み砕いてくれないと理解できないよ。


「あるじ〜、仕方ないなぁ〜。ウサくんの【光操作】はね〜、【隠蔽】の解除もできるんだよ〜。それからリベルくんの【射光】はね〜、透明なものは透過できるんだよ〜。ピカッからのズドン。これで終了〜。分かった〜?」


いまひとつ手抜きの説明だけどだいたいは理解できた。

つまり、隠蔽解除からの核破壊。

これが『氷だるま』討伐の最適解ってことか。


手持ちの能力を正確に把握して、対抗手段を的確に組み上げれば、こんなにも簡単に答えが出るんだね。

ディーくん、僕もディーくんのこと『ディーくん師匠』って呼んでもいいかな?


「あるじ〜、それはダメだよ〜。ディーくんはディーくんだよ〜」


でもルルさんは師匠をつけて呼んでたよね。

そこはスルーなの?


「ルルちゃんとリベルくんは弟子だからいいんだよ〜。あるじはあるじだからダメだよ〜」


うん、明確に断られてちょっと寂しいけどまあいいか。

確かにテイマーが自分の従魔のことを『師匠』呼びしてたら妙だもんな。

それにしても従魔たち、本当に有能だよね。


そんなふうに自分の従魔たちのことを自画自賛(?)していると、


「ウィン殿、その御方は熊獣人の賢者様なのか?」


アルムさんから予想外の質問が飛んできた。


「熊獣人の賢者? 何それ?」

「いや、言葉をしゃべられるということは完全獣化した熊獣人ということではないのか? それに戦略に関する深い洞察力は賢者としか思えぬが。」


なるほど。

そういう見方もあるのか。

いやその方が実際、しっくりくる解釈のような気がする。

ディーくんって実は従魔じゃなくて獣人族じゃないの?


「アルムくん、それは違うよ〜。ディーくんは獣人じゃなくてあるじの従魔だよ〜。今の種族はホリブルテディ・ミニマだよ〜。」


ディーくんの正体について疑惑を抱いていると、本人があっさりと否定した。

いやちょっと待って。

種族名、長くなってない?

ディーくん、どういうこと?


僕は慌ててディーくんに【魔物鑑定】をかけた。

そして僕の視界には驚愕の事実が映し出された。



【鑑定結果】

◯ディーくん

 種族  :ホリブルテディ・ミニマ ☆☆☆☆

      (テディ・ミニマの進化種)

 体型  : 小型〜大型

 体色  : 灰色(凶化時 紅蓮色)

 食性  : 雑食

 生息地 : どんな環境にも適応する。

 特徴  : 猛獣系熊型

       戦闘力が非常に高い。

       中距離転移ができる。

       温厚だが食事の邪魔をすると激怒する。

       強敵に対すると凶化する。

       大型化できる。

       猛獣系魔物を統率する。

 特技  : 剛力・加速・激怒・凶化・転移(中)・大型化

       剣術(極)

 特殊能力: 統率



「ディーくん、進化してるじゃん!」

「あるじ〜、進化しちゃったよ〜。」

「しちゃったよじゃないよ。いつの間に?」

「あるじはいなくても従魔は育つって感じかな〜」


ディーくん・・・・・

それはもしかして「親は無くとも子は育つ」のもじりかな。

どこでそんな言い回しを・・・いやそんなことより、ステータスが凶悪すぎるんですけど。

もう従魔たちだけで世界征服できちゃうんじゃないの?

お読みいただきありがとうございます。

今週も2話投稿できそうです。

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