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312. 極寒の地でかき氷は要らないです(変異種:スノーマン・ゴーレム)

スタンピードとの戦いです。

いつも通り、あまり緊迫はしてませんが。

第四章 氷雪の国と不良王子(312)

  (アンソロ編・首都セリオン)



312.極寒の地でかき氷は要らないです(変異種:スノーマン・ゴーレム)



「なんかちょっと・・・予想外の光景が・・・・・」


メルさんがルルさんと合流すべく1人で駆け出したので、僕は念の為にその場に【小屋】を設置してから、フェイスさんと一緒に砦の上に転移した。

砦の向こうで行われている戦闘に参加する前に、冒険者によるスタンピード討伐の全体像を見たかったからだ。

そしてそこから見えた景色は・・・・・


「雪だるまの大群? 雪合戦? これ、魔物なの?」


『氷雪の谷』の入り口と思われる辺りからこの砦の少し手前まで、大量の『雪だるま』たちが密集していた。


大きい雪玉の上にそれより少し小さな雪玉が載った形状。

丸い目にとんがった鼻に開いたままの口もある。

そしてそこから飛び出す攻撃は、雪を丸めたボールのようなもの(スノーボール?)だった。


「フェイスさん、あれ、何ですか? 僕は魔物に詳しくないので。」


素直にそう尋ねるとフェイスさんは少し困惑した表情ながらも答えを返してくれた。


「私にも分かりません。初めて見ます。おそらく『氷雪ゴーレム』の変異種だと思いますが。」


なるほど、『氷雪ゴーレム』って魔物がいるんですね。

それはたぶん、本来は僕が想像するようなゴーレムの形をしてるんでしょうね。

立方体と直方体をくっつけたような角々した感じのヤツ。

それがなぜか球体が2つくっついた形で『雪だるまゴーレム』になっていると。


諜報ギルドのエースが知らないということは間違いなく変異種か特異種だろう。

しかも極めてレアな。


「冒険者の人たち、けっこう苦戦してますね。」


ここから見る限り、冒険者たちは防戦するのが精一杯な様子だ。

大盾を持った者たちが壁を作って前線を支え、その後方から弓や魔術で攻撃を仕掛けている。

しかし、『雪だるま』の数は全然減っているように見えない。


「そうですね。弓も魔術もあまり効果がないようです。それにあの雪玉、当たった場所を凍らせてますね。』


目を凝らして見ると、確かに雪玉が当たった場所が凍りついているように見える。


あれはきついな。

盾や剣に氷が付着すると重くなるし、体の一部が凍りつけば戦闘不能になる。

極寒の中での戦闘でただでも体力が削られるのに、あの攻撃を続けられたら前線が崩壊するのも時間の問題だろう。


とりあえず弱点を探さないと。

まずは情報収集だね。


僕はそう考えて【魔物鑑定】を発動した。



【鑑定結果】

◯スノーマン・ゴーレム ☆☆

 ※氷雪ゴーレムの変異種

 体型 : 小型

 体色 : 白色

 食性 : 氷・雪

 生息地: 寒冷地域に生息。

 特徴 : 雪だるまのような形状をしている。

      氷・雪を吸収して自らを修復する。

      氷結効果のある雪玉を飛ばす。

      火耐性が低い。

      体内の核を破壊すると死ぬ。

      可食(かき氷)

 特技 : 雪玉(氷結)・攻撃耐性(中・核を除く)・氷雪再生



僕は視界に表示された鑑定結果を確認した。


魔物の種類は『スノーマン・ゴーレム』。

フェイスさんの予想通り『氷雪ゴーレム』の変異種だった。

ランクは星2つ。

変異した分、『氷雪ゴーレム』より強化されているんだろう。

攻撃手段は【雪玉】のみでやはり氷結効果がある。

核以外への攻撃はすべてかなり軽減される。

【氷雪再生】があるし、核を破壊しない限り倒せないってことだよね。


あと、どうでもいいことだけど『可食(かき氷)』って・・・・・

ハワイアンな島とかなら大歓迎だけど、こんな寒い所でかき氷なんて食べたくないし。


「フェイスさん、やはり氷雪ゴーレムの変異種でした。弱点は火魔法。でも核を破壊しないと再生します。」

「ウィン様、その鑑定速度と精度、さすがです。でも冒険者たちの魔力では火力不足だと思われます。早速参戦なさいますか?」

「はい。でもその前にルルさんとアルムさんを探さないと。」

「それなら簡単です。あそことあそこだと思います。」


フェイスさんが指差した方を見ると、『雪だるま』の群れの中に2箇所だけ円形に開けた場所があった。

おそらくそれぞれの円の中心にルルさんとアルムさんがいて、周囲の『雪だるま』たちを蹴散らして、いや殴り倒しているんだろう。


しかし、ルルさんもアルムさんも【火魔法】持ちじゃない。

打撃や斬撃で『スノーマン・ゴーレム』の核を破壊しているのかもしれないが、いかんせん相手の数が多すぎる。


そう言えばメルさんも【火魔法】は無かったな。

どこにいるんだろう?

まああのスピードだとまだ前線を越えてないと思うけど。


「フェイスさんはここにいて下さい。行ってきます。」

「了解しました。行ってらっしゃいませ。」


僕はフェイスさんを砦の上に残して、まずアルムさんのところに転移した。


「アルムさん、助っ人に来ました。」

「ウィン殿、ありがたい。倒しても倒してもキリがなくてな。」


アルムさんは黒獅子に獣化してその黒爪で『雪だるま』を切り刻んでいたようだ。

ただ核の位置を正確に把握することはできないようで、手当たり次第って感じだった。


「アルムさん、僕に作戦があります。一度引きましょう。」

「了解した。」


僕はアルムさんの承諾を取ってすぐに2人でフェイスさんのところへ転移した。


「お帰りなさいませ、ウィン様。それから不良王子様も。」

「不良でも、王子でもない。アルムだ。」


フェイスさんとアルムさんが定番のやり取りでじゃれあってるけど、今は時間がない。


「フェイスさん、アルムさんをお願いします。また行ってきます。」

「行ってらっしゃいませ。」


僕はアルムさんを砦の上に残し、今度はルルさんの元へ転移した。


「ルルさん、ご機嫌はいかがですか?」

「ウィンか。つまらん。もう飽きた。」


僕が声をかけると予想通りの答えがルルさんから返ってきた。


そうでしょうね。

数は多いけど一体一体はそれほど強くないですからね。

それにルルさん、『雪だるま』をすべて一撃で倒してますよね。

【魔力視】で核の位置を確認して、的確に破壊してる感じですか。

さすがです。


「ルルさん、一度砦に戻りませんか。」

「いいぞ。残りはウィンに任せる。」


ルルさんはそう言うとそのまま僕の前から姿を消した。

自分で【転移陣】を発動したようだ。


いやいきなり丸投げされても困るんですよね。

【火魔法】で対処しようとは思ってますけど、ここからじゃ威力調整が難しいし。

僕のせいで戦ってくれている冒険者の人たちに被害が出たら大変じゃないですか。


僕は心の中でルルさんに文句を言いながら、後を追うようにして【転移陣】を発動した。





「ルルさまぁ、ようやく会えました。寂しかったです。少し痩せたんじゃないですか。馬の骨・・・ウィンが碌なもの食べさせてないんじゃないですか。でも私が来たからもう大丈夫です。ちゃんとウィンのこと見張り・・・サポートしますから。とっても心配したんですからぁ。」


砦の上に戻る途中でメルさんを回収してきた。

何も説明せずに無言でね。

転移した瞬間は怒ってたメルさんたけど、ルルさんを見た瞬間に大興奮。

機関銃トークが止まらなくなった。


ルルさんは苦笑いしながら僕を見て、「なぜ連れて来た」って視線を送ってくる。


いや、これ(メルさん)、僕の責任ですか?

勝手にアンソロまで来てたのでしょうがないじゃないですか。

放置しとくと周りに多大な迷惑がかかりそうだったし。

それにそもそもメルさんを冒険者ギルで拾って来たのはフェイスさんだし。


「聖女様、申し訳ありません。メル様を同行させたのは私の判断です。」


不満そうな僕を見て、フェイスさんがすかさずフォローを入れてくれる。

本当に優秀過ぎる秘書役だ。

一方のメルさんは、ひとしきりルルさん相手に機関銃トークを炸裂させた後、矛先を僕に向けてきた。


「ウィン、どうしてこんな所で傍観してるの。スタンピード討伐に来たんじゃないの。雪だるま、いっぱいじゃないの。このままじゃ冒険者たち、やられちゃうわよ。早くなんとかしなさいよ。ボーッとしてる場合じゃないわよ。」


はいはい、言われなくても分かってますよ。

メルさん、フェイスさんがちょっと手綱を緩めたら元に戻っちゃいましたね。

また【氷ドーム】を被せて閉じ込めちゃおうかな。


「メル、少し黙れ。ウィンはもう分かっている。この程度のスタンピード、一瞬で終わりだ。」


ルルさんに低い声でたしなめられて、ようやくメルさんの機関銃トークが止まった。

ルルさんはすでに僕の次の行動を予測している。

「一瞬で終わり」とは、「さっさと終わらせろ」という意味だろう。


僕はルルさんを見て一つ頷いてから『雪だるま』の大群の方を向いた。

そして両手を前に出してどのイメージで行こうかと考える。


火炎放射がいいかな?

それとも炎の雨か?

いや絨毯だな。

高温で分厚い炎の絨毯。

核が残ったらその時また考えよう。


僕はイメージが固定した瞬間、それを発動した。


今週もう1話投稿予定です。

よろしくお願いします。

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