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307. 恥ずかしいクエストを思い出しました(転移陣クエスト:拡張)

第四章 氷雪の国と不良王子(アンソロ編・首都セリオン)


元第三王子のアルムが加わり、大陸北端の国アンソロでの冒険が始まります。

首都セリオンではスタンピード対策に取り組みます。

第四章 氷雪の国と不良王子(307)

  (アンソロ編・首都セリオン)



307.恥ずかしいクエストを思い出しました(転移陣クエスト:拡張)



僕たち3人は【転移陣】で『氷雪の谷』の手前に移動した。

ルルさんは単独で、僕はアルムさんと一緒に。


『氷雪の谷』の入り口付近には急造の砦が築かれていて、多くの冒険者たちが集結している。

その向こう側から激しい戦闘音が聞こえてくるので、現在進行形でスタンピードとの攻防戦が繰り広げられているんだろう。


「あっ、フェイスさん置いて来ちゃった。」


僕は寒さに震えながら、フェイスさんがまだ合流してないことを思い出した。

フェイスさんは【転移】スキル持ちじゃないので、ここまで移動するには時間がかかる。


「ウィン、寒さのせいでポンコツに磨きがかかっているな。」

「えっ、もしかしてフェイスさんって【転移】持ちですか?」

「もちろん、フェイスは【転移】など持っていない。」

「じゃあどうやって?」

「ウィンが迎えに行けば済むことだろう。」

「あっ。」


どうやら僕のポンコツ具合は継続しているらしい。

僕が「フェイスさんのところ」へ転移して、一緒にここへ【転移陣】で戻ればいいだけのことだ。

なぜそんな簡単なことに気付かないかな。

もしかすると『寒さ』が僕の最大の敵なのかもしれない。


「ウィン殿、一言良いか?」


僕が自分のポンコツの原因について思い悩んでいると、アルムさんが声をかけてきた。


「アルムさん、いちいち確認しなくてもいいですよ。もう仲間だし、ざっくばらんで行きましょう。」

「了解した。率直に言おう。何を悩んでいる?」

「スキルの使い方について、いつもより頭が回らないのはなぜかなと思って。」

「【転移】の使用方法ということか?」

「はい。」


僕の答えを聞いてアルムさんはしばらく考えた後、口を開いた。


「ウィン殿、【転移】のスキルというものがかなり希少なものだということは知っているか?」

「ええ、聞いたことがあります。」

「実際、宮廷魔導士レベルでも使える者は稀なのだ。そしてとても使い勝手が悪いスキルでもある。」

「使い勝手が悪い?」

「そうだ。遠距離を転移するには莫大な魔力を消費するし、転移先を正確に指定することも難しい。」

「そうなんですね。」

「そうだ。だから私は驚愕している。」

「驚愕?」

「聖女様とウィン殿がいとも簡単に遠距離を正確に転移してみせたことに。そして、」

「そして?」

「ウィン殿が私と一緒に転移したことに。」


そうなのか。

やっぱり複数人での転移は超レアなのか。

今は2人が限界だけど、【転移陣】には拡張クエストがある。

あの恥ずかしいクエストをクリアすれば、3人一緒に転移ができるようになるんだよね。



…旦那、とりあえず表示しておくぜ…


【転移陣クエスト(拡張)】

 クエスト : 僕には選べない

 報酬   : 転移陣(3人用)

 達成目標 : 「どちらかなんて選べない」と告げる(100回)

 カウント : 0/100

 注意点  : 対象は2名同時・相手に聞こえないと無効



「中のガンちゃん」が、以前発生してそのまま放置していた【転移陣】の拡張クエストを僕の視界に表示した。


そう、これなんだよな。

やろうと思えば簡単だけど、あんまりやりたくないクエスト。

後でルルさんとフェイスさんにお願いして挑戦しておこうかな。

パーティー・メンバーが増えるとこれがあった方が便利だし。


「アルムさん、複数人での転移はかなり珍しいんですか?」

「ウィン殿、複数人での転移は不可能だと言われている。」

「不可能?」

「そうだ。【転移】で移動できるのは本人と本人が触れている物のみ。命あるものは一緒に転移できない。」


どういうことだろう。

僕のスキルだけ特殊なんだろうか。

いや違うな。

だから微妙に名称が違うのか。

【転移】と【転移陣】は別のスキルってことなんだね。

あんまり気にしてなかったけど【転移陣】の場合、発動しようとすると足元に転移陣が浮かび上がるし。


「アルムさん、僕のスキルは【転移】じゃなくて【転移陣】なんです。【転移陣】なら複数でも転移可能なんじゃないですか?」


そう尋ねるとアルムさんの眉間に皺が刻まれた。


「ウィン殿、ご存知かと思うが転移陣とは『古の魔道具』。その原理は未だ解明されていない。確かに大型の転移陣であれば複数名の転移も可能だが、その名がついたスキルなど聞いたこともない。」


うんやっぱり特殊なスキルでした。

でも魔道具って実在するスキルがモデルになってると思うんだよね。

ということは、【転移陣】か、複数名を同時に移動させる【転移】が古の時代には存在したんじゃないのかな。


そんなロスト・ワールドの能力に思いを馳せていると、いきなり背中に重い衝撃を喰らった。

それはもちろん、ルルさんの拳だ。


ルルさん、地味に痛い・・・いや派手に痛いです。

人の注意を引く時は、背中を殴らなくても声をかけるだけでもいいんですよ。


「ウィン、うだうだしてないで早くフェイスを迎えに行け。私は先にスタンピードに突撃する。」


ルルさんはそう言い捨てると、直後にその姿を消してしまった。

【転移陣】で砦の向こう側に移動したようだ。


「ウィン殿、私も参戦する。フェイスを頼む。」


ルルさんに続いてアルムさんもそう言い残すと、砦の出入り口らしき場所に向かって駆け出した。


2人とも戦闘好きだよな。

いや、ルルさんは個人的嗜好だろうけど、アルムさんの場合はどちらかというと使命感かもしれない。

言葉では冒険者を名乗っているけど、おそらく心はまだ第三王子のままなんだろう。

この国を守りたいという気持ちがスタンピードとの戦闘に向かわせてる気がする。


さて、早くフェイスさんと合流して僕も戦闘に参加しないとね。

【冷温耐性】、早く獲得したいし。


そんなことを考えながら、1人とり残された僕はすぐに【転移陣】を発動することにした。

フェイスさんのいる場所にと念じながら。

しかし転移した先にはなぜか別の人物が立っていた。


毎週2回程度の更新となります。

よろしくお願いします。

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