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304.ハワイアンじゃないですよね(岩人族:ミケラン)

極寒の国にハワイアンな人が登場します。

第四章 氷雪の国と不良王子(304)

  (アンソロ編・首都セリオン)



304.ハワイアンじゃないですよね(岩人族:ミケラン)



「すみません。武具生産の依頼を受けたウィンですが。」


僕は鍛治士ギルド・セリオン本部の受付でウサ耳の受付嬢に来訪目的を告げた。

それにしてもギルドの受付って、ウサギ獣人率が高くない?

ウサギ獣人って、受付職に特化した種族なんだろうか。


「ウィン様ですね。少しお待ち・・・あっ、黒騎士王子様、ようこそ鍛治士ギルドへ。何か御用でしょうか?」


受付嬢は僕の後方に立っているアルムさんを見つけて、視線がそちらに釘付けになった。

心なしか瞳がハートマークになってる気がする。

でも僕のことを完全にスルーするのは、ちょっと失礼じゃないかな。


「騎士でも王子でもない。冒険者のアルムだ。私のことよりウィン殿の対応を頼む。」

「(チッ)はい、畏まりました。え〜と、ウィン様ですね。」


受付嬢はそう言いながら台帳のようなものをめくって指を滑らせる。

依頼受注の台帳か何かで僕の名前を確認しているようだ。

でもその前に受付嬢さん、先ほど「チッ」って言いましたよね。

僕にはしっかり聞こえましたよ。


「黒騎士王子様、ウィン様の依頼受注、確認できました。」

「騎士でも王子でもない。いやそれより、私にではなくウィン殿と話してくれ。」

「(チッ)了解致しました。ウィン様、担当がギルド長となっておりますので、ギルド長室にお進みください。」


受付嬢はスラリと左手を上げるとギルドの奥にある大きな扉を指し示した。

言葉使いは丁寧だけど、態度は素っ気ない。

瞳のハートマークも消えている。


それからまた「チッ」って言いましたよね。

僕よりアルムさんに興味があるのは分かるけど、仕事としてその態度はどうなのかな。

投書箱があったら投書しちゃうぞ。


そんなクレーマー的思考に陥っていると、受付嬢の後方に何か大きな物体が現れた。


「ラビ君、相手によって態度を変えてはいけないと先月注意したばかりですよね。」

「ヒェッ! ギルド長、申し訳ありません。黒騎士王子様はレジェンド級のレアキャラなので舞い上がってしまいました。」

「そんなことだともう一度研修所送りになるけどいいのかな。」

「それは勘弁してください。これからはちゃんとします。たとえパッとしない依頼受注者が来ても、きちんと対応します。」


うん、ギルド長さん、その人、研修所に送った方がいいと思います。

パッとしない依頼受注者の前で、「パッとしない依頼受注者」なんて言葉にしちゃう時点で受付失格でしょう。


まあそんなことより、もっと気になることがあるんですが。

ギルド長さん、大き過ぎません。

アルムさんより背が高いし横幅もなかなか。

それからその独特の服装は・・・・・。


短パンにアロハシャツ?

サンダル履きにサングラス?

ここって極寒の国ですよね。

南の島じゃないですよね。


鍛治士ギルドはドワーフ族が多いし、超大型のハワイアンなドワーフ族とかですか。


そんな疑問を抱いていると、視界にメッセージが表示された。



…旦那、岩人族だ…


岩人族?


…俺と同族だ…


え? 

中の人にも種族とかあるの?


…ある・・・いや、あった…


過去形?

なぜ?


…続きはまた…


ちょっと待って。

呼び方、どうしよう?


…かつてはガン・・・・・…



そこでメッセージは途絶えた。

「ガン」だと「中のガン」かな。

なんかしっくりこないなぁ。

ちょっと語呂が悪いので「中のガンちゃん」にしよう。


そんなことを考えていると、岩人族のギルド長から声がかかった。


「ウィン殿、受付の対応が悪くて申し訳ありません。貴殿のことはマーロン殿、ジャコモ殿からよく聞かされております。どうぞ奥のギルド長室へお入りください。」


ギルド長さん、話し方がメチャクチャ丁寧だよね。

ちょっと見た目に合わない感じ。

いや、体の大きい人が粗暴って意味じゃないからね。

ハワイアンな人がルーズって意味でもないよ。

もっと豪快というか、迫力を感じさせる外見なのに、言葉だけ聞くと事務職一筋の官吏みたいな雰囲気なんだよね。

間違いなくベテランの鍛治士だとは思うけど。


「ウィン様、今後の対応について一言アドバイスをさせて頂いても構いませんか?」


ギルド長の後についてギルド長室に向かっていると、後方からフェイスさんが小声でそう言ってきた。


「構いませんよ。」

「ウィン様はこれから様々な人たちと出会うことになると思います。」

「そうでしょうね。」

「そして必ずしもすべての人がウィン様に好意的であるとは限りません。」

「その通りだと思います。」

「では、毎回初対面の方には人物鑑定をかけることをお勧めします。」


えっ?

でも断りもなく人物鑑定をかけるのは失礼なことだと教わりましたけど。


「ウィン様のレベルであれば、ほとんど気付かれることはございません。」

「でも人としてそれはどうなの?」

「我が身を守ることが最優先事項です。危機を事前に回避するためにも使える能力は最大限活用したほうがよろしいかと。」


フェイスさんの言うことはもっともだと思う。

でも僕の中にはまだ抵抗感がある。

この感覚はきっと平和ボケ的なものなんだろうな。

常に危険と隣り合わせの世界では、甘過ぎる考え方なのかもしれない。


「ウィン様、このように考えてはいかがでしょうか。仲間が増えれば守るべきものも増えていきます。大切なものを守り抜くためには、常に警戒を怠るべきではないと。」


そうですね。

そう言われてしまうと返す言葉もないです。

了解しました。

とりあえずギルド長さんに人物鑑定をかければいいんですね。


「はい、アルム様にも。」


ええっ、アルムさんも?

フェイスさん、アルムさんのことよく知ってるんですよね。

まあ、すべて自分で確認しろってことですね。

分かりました。


ということで僕は2人に人物鑑定をかけてみた。



【鑑定結果】

◯アルム(ARUM) 冒険者・元第三王子(アンソロ王家)

名前 : アートルム・レギア・アンソロ(26歳) 男性

通称 : アルム

種族 : 獣人族(黒獅子人)

職業 : 冒険者(A)・第三王子(元)・騎士団長(元)

スキル: 斬撃・獣化・敏捷・魔物鑑定(中級)・魔物図鑑

魔力 : 198

称号 : 『不良王子』『黒の騎士』『漆黒の獅子』

友好度: 80

信頼度: 80


◯ミケラン 鍛治士ギルド・セリオン本部ギルド長

名前 : ミケラン・ジェロ(53歳) 男性

通称 : ミケ

種族 : 岩人族

職業 : ギルド長・鍛治士・採掘士・冒険者(元A級)

スキル: 土魔法・鍛治・鉱物鑑定(上級)・武具鑑定(上級)

魔力 : 155

称号 : 『大槌の巨人』

友好度: 50

信頼度: 50



アルムさん、フルネームが長い。

王族だから当然か。

スキルも多いしA級冒険者ってことはパーティーメンバーとしては完璧だね。

でも初対面なのに友好度が高いのはどうしてだろう。

信頼度も高いし。

僕の周囲に共通の友人が多いからかな。

あと、気になるスキルが一つ。

【魔物図鑑】って何だろう?


ギルド長さんは名前がミケラン・・・ジェロ?

コメントは避けよう。

それよりも通称がミケ。

そのガタイでミケ。

イメージがまったく合わないんですけど。

あと友好度が50。

まあ初対面だとこれくらいが当たり前か。

でも信頼度の50っていうのはどういうことだろう。

あんまり信用できないってことかな。


「フェイスさん、フェイスさん。」

「ウィン様、何でしょうか?」

「ミケランさんって、どんな人ですか?」

「元A級の冒険者で凄腕の鍛治士ですね。」

「いや、人柄的に。」

「いたって誠実な方です。」

「でも信頼度が低いんですけど。」

「それはおそらく、まだ相互理解が低いからだと思います。」


そういうことか。

でもミケランさん、奥が深そうだよな。

見た目で判断しちゃいけないけど、あのハワイアンな格好はいったい・・・・・。

理解するのに時間がかかりそうな気がする。

読んで頂きありがとうございます。

今週もう1話、投稿予定です。

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