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296.依頼を受けることになりました(武具生産:アンソロ)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週2回程度の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(296)

【アマレパークス編・地下都市ララピス】



296.依頼を受けることになりました(武具生産:アンソロ)



「アンソロはのう、この大陸の北部にある国じゃよ。面積は広いんじゃがとにかく寒さが厳しくてのう。住んどる者はそれほど多くはない。治めとるのは『獣王』、獣人族のトップじゃな。」


白髭ジャコモさんが『アンソロ』について説明してくれた。

どうやら獣人族の国らしい。

確かルルさんから一度聞いた気がする。

でも広くて寒い国かぁ。

寒いの、苦手なんだよな。


「でもなぜ僕がアンソロに行くんですか?」


僕は依頼主の黒髭マーロンさんに理由を尋ねてみた。


「実はな、獣王から大量の武具の注文が入ったのだが、こちらで生産が追いつかなくてな。ウィン殿に現地で武具生産をお願いしたいと思っておる。これは正式には商人ギルドと鍛治士ギルドからの共同依頼となる。」

「共同依頼ですか・・・でも大量の武具ってアンソロはどこかと戦争でもしてるんですか?」

「戦争はしておらん。」

「じゃあ何のために?」

「スタンピード対策だ。どうやらアンソロの各地で頻発しておるようでな。」


スタンピード。

魔物が大量発生して暴走することだよね。

確か魔力が溜まり過ぎた場所とか、特別に強い魔物が発生したりすると起こるんだっけ?

でもそんな危ない所には、できれば近付きたくないんだけど。


「スタンピードって、よく起こるんですか?」

「場所と時期による。ただ今回は異例だと言っておった。原因も分からんらしい。」


原因不明のスタンピードか。

嫌な予感しかしないな。

考え過ぎかもしれないけど、頭の中で吟遊詩人の派手な衣装がチラつくんだよね。


「マーロンさん、ここからアンソロまでは遠いんですか?」

「そうだな。とりあえずこれを見てくれ。」


マーロンさんはそう言うと、懐から筒状に丸めた紙を取り出した。

そしてそれを金床の上に広げる。


「それは、地図ですか?」

「うむ、この大陸の地図だ。ここが今いるララピス、そしてここがアンソロの首都セリオンだな。ウィン殿にはセリオンの鍛治士ギルドに行ってもらいたい。」


僕は初めて見るこの世界の地図をじっくりと観察した。

そこには大陸の輪郭と国境線、主要都市の位置などが記され、川や森や山といった自然の地形から交易路や海路まで描かれていた。


「この地図、誰が作ったんですか?」

「専門の職人がおる。『俯瞰』のスキル持ちのな。」

「大陸全体が見えるなんて、凄いですね。」

「ハッハッハッ、さすがにそこまでの者はおらんよ。何枚もの地図の繋ぎ合わせだな。完全に正確とは言えんが、大体は合っておるはずだ。」


僕は改めて地図を見て、自分が知っている地名を辿ってみた。

この世界の文字は僕にとって未知のものだけど、言葉を理解できるのと同様に文字も読むことができる。

何らかの翻訳機能が働いてるんだろう。


コロンバールはどの辺かな。

・・・・・大陸の中央下、南部の海岸に面したところだね。

そこから西周りに北上するとアマレパークスで、さらに北上して大陸の北の海岸沿いがアンソロか。


アンソロ、確かに大きいな。

それに国境沿いに幅の広い山脈が続いていて、大陸の北の端に隔離されてるみたいになってる。

これは空でも飛べない限り陸路で行くのは難しそうだね。


あと・・・・・大陸中央にある大きな国が悪名高いセントラルか。

他にも初めて名前を見る国が3つある。

つまりこの大陸には7つの国があるってことだな。


「マーロンさん、ララピスからアンソロに行く道がありませんけど。」

「険しい山脈で遮られておるからな。山奥には強い魔物も多いし、普通は皆アマレの港から船で回り込む。時間はかかるが安全第一だからな。」


マーロンさんはそう説明しながら、地図上のララピスの位置から指を下に滑らせてアマレで止め、そこから海路をなぞってアンソロの首都セリオンまでのルートを示した。


まあそうなりますよね。

でも僕とルルさんなら転移を使えば関係ないけどね。

転移先で『小屋』を設置すれば他のメンバーも移動できるし。


「ウィン殿、今回は転移は避けた方がいいかもしれんのう。」


僕がアンソロへの移動の仕方を考えていると、その思考を読んだかのようにジャコモさんが言葉を挟んできた。


「ジャコモさん、どうしてですか?」

「先ほどマーロン殿の説明にあったように、今アンソロではスタンピードが多発しておる。先の状況が不明なままで転移すると、魔物の群れのど真ん中に出てしまう可能性もあるんじゃよ。もちろんウィン殿とルル殿であれば大丈夫かもしれんが、無理はせん方がいいじゃろう。」

「ということはアマレから船で移動するってことですね。」

「いや今回は商人ギルドと鍛治士ギルドからの共同依頼じゃからのう。我々商人ギルドが力を貸そう。」


白髭ジャコモさんは腕を組んだ状態でうんうんと頷きながらそう言った。

隣で黒髭マーロンさんもうんうんと頷いている。


「力を貸すって、具体的にはどうするんですか?」

「実は商人ギルドには秘密兵器があるんじゃよ。」

「秘密兵器?」

「そうじゃよ。ウィン殿は薄々気づいておるやもしれんがのう。」


ジャコモさんはそう言って意味ありげに僕の顔を見つめた。

何となく口頭試験で試されているような感じだ。

ちょっと癪に触ったけど、僕は思っていたことをそのまま告げることにした。


「ジャコモさん、もしかして商人ギルドにはギルド間を移動できる装置みたいなものがあります?」

「フォッフォッフォッ、さすがウィン殿じゃ。商人ギルドの秘匿事項を看破しておるとはのう。」

「やっぱり・・・・・何となくそんな気がしてました。」

「各商人ギルドの地下にはのう、いにしえの魔道具『転移陣』が設置されておるんじゃよ。」


『転移陣』の魔道具があるんですね。

しかも『古の魔道具』ってことは新規では作れないってことかな?

もしかすると『失われた技術』的なものなのかもしれない。


そう言えば僕のスキルも『転移』じゃなくて『転移陣』になってるよね。

ディーくんのスキルは『転移』なのに。

2つに何か違いとかあるんだろうか。

それとも同じものなんだろうか。

いろいろ聞きたいことがあるけど、後で「中の侍」さんにでも確認してみるか。


「ジャコモさん、商人ギルドの秘匿事項を僕にバラしちゃって大丈夫なんですか?」

「フォッフォッフォッ、当然じゃよ。ウィン殿は商人ギルドの幹部候補じゃからのう。」


いやいや、勝手に決めないでください。

商人ギルドの幹部とかなる気ゼロですから。

そんなことしたらジャコモさんにこき使われる未来しか見えないので。


「商人ギルドの幹部にはなりませんが、今回の依頼については検討します。僕1人では決められないのでルルさんに相談してみます。」

「ウィン殿、その必要はないですぞ。すでにルル殿の了解はとってあるでのう。」


ジャコモさん・・・・・

根回し早過ぎ。

すでに外堀を埋められてるじゃないですか。

まあ、スタンピードなんて聞いたら、ルルさんが断る訳ないしね。

むしろ、魔物の群れのど真ん中に転移しろって言いそうだよな。

言われてもしないけど。


元々世界を見て回る予定だったし、このまま依頼を受けても問題ないよな。

他に相談が必要な相手もいないし。

もちろん『庭』に追放したリベルさんの意見も聞く必要なし。


「ジャコモさん、マーロンさん、この依頼、引き受けます。」


僕がそう返事すると、白髭さんと黒髭さんが顔を見合わせ、右手でハイタッチを交わした。

このドワーフ2人の動き、なんかいちいちムカつく。

でももう依頼を受けちゃったし、先へ進むとしますか。


こうして次の旅先はアンソロに決定した。



読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


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