295.黒髭さんから依頼があるそうです(アンソロ?)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週2回程度の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(295)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
295.黒髭さんから依頼があるそうです(アンソロ?)
「ウィンさん、良かったですね。2人目の弟子ができて。」
修行に励む意志を示したフレアさんの姿を眺めていると、背後からまた別の声が聞こえてきた。
振り返るとそこにはリベルさんが立っていた。
リベルさんお帰りなさい。
暴食の旅からようやく戻って来たんですね。
でもブルーベリーパイの食べ過ぎでハイになってるんじゃないのかな。
言ってることが意味不明なんだけど。
「リベルさん、2人目の弟子ってどういうことですか?」
「えっ、フレアさん、弟子になったんじゃないんですか?」
「それはその通りですけど。」
「じゃあこれで弟子が2人になったってことですよね。」
「?」
この『ダメダメ・はらぺこ・3歳児勇者』は何を言ってるんでしょうね。
これまで僕に弟子がいたことなんてありませんよ。
フレアさんは初弟子です。
「リベルさん、フレアさんが2人目ってことは、1人目は誰?」
僕は疑問点をそのままリベルさんに尋ねてみた。
すると、リベルさんが口を開けたまま固まってしまった。
あれっ、リベルさんどうしたんだろう。
そんなにおかしなこと質問したかな。
僕が頭の中に?を浮かべていると、リベルさんが再起動した。
「ウィンさん、何言ってるんですか! ウィンさんの一番弟子はボクに決まってるじゃないですか!」
えっ?
リベルさんが僕の一番弟子?
何の冗談だろう。
一番のタダ飯喰らいっていうなら理解できるけど。
「リベルさんは僕の弟子じゃないでしょう?」
「弟子です! ちゃんと称号にも出てるじゃないですか。」
「称号?」
「はい、称号です。」
「そんな称号、ありましたっけ?」
「ありますよ。『従魔の弟子』って。」
うん、リベルさん甘いものの食べ過ぎで思考回路が混乱してるね。
確かにリベルさんに『従魔の弟子』って称号は付いてるけど、従魔の弟子であって、僕の弟子じゃないよね。
「リベルさん、僕は従魔じゃないですよ。」
「ウィンさん、この『従魔』はウィンさんの従魔のことですよね。」
「そうでしょうね。」
「テイマーにとって従魔とその主人は一体です。つまり従魔の弟子ってことは、主人であるウィンさんの弟子ってことです。」
そうなの?
それって強引過ぎない?
まあ、弟子だからってリベルさんに何かを教えるつもりもないし、肩書きなんてどうでもいいけど。
「ウィンさん、師匠は弟子のために持てるものをすべて提供するんですよね。だからボクにすべての食料を提供してくださいね。」
リベルさんの一番弟子アピールなんてスルーすればいいや。
そんなことを思っていると、リベルさんがニコニコ顔で食料を要求してきた。
ディーくん、すぐにリベルさんを『庭』に連行してください。
そして持てるすべての技をリベルさんの体に叩き込んでください。
もうこちらの世界に出さなくても構わないので。
「御意〜」
僕は念話でディーくんにリベルさんの撤去指示を出した。
ディーくんは承諾の意を示すと、すぐにリベルさんに腹パンを入れ、くの字になったところを肩に担いで鍛治部屋から出て行った。
かくして『天衣無縫』は為す術もなく、『子熊のぬいぐるみ』に連れ去られましたとさ。
でもディーくん、あのまま『小屋』がある商人ギルドの裏庭まで走るんだろうか。
まあ『転移(短)』のスキルがあるから連続転移で移動できるのかもしれないけど。
とにかくあとは任せたよ、ディーくん。
リベルさんがディーくんに担がれて退場すると、目の前に白髭さんと黒髭さんが腕を組んで立っていた。
2人とも何か言いたそうにしている。
弟子入りの話だったら聞く耳持ちませんからね。
速攻で転移で消えちゃいますよ。
その上でジャコモさんの『小屋』の使用許可も取り消して徹底的に逃げまくります。
そんなことを考えていると、まず白髭ジャコモさんが口を開いた。
「ウィン殿、年甲斐もなく弟子入りなどと、つまらんことを口にしてしもうて申し訳なかったのう。」
「いえいえ、考え直して頂けたのならそれでいいです。」
「ついアダマンタイトに目が眩んでしもうてのう。」
「ジャコモさんともあろう大商人がどうしてですか?」
僕はジャコモさんらしくない行動に疑問があったのでそう尋ねてみた。
「アダマンタイトの取引は商人にとっても悲願なんじゃよ。それで焦ってしもうたというか・・・・・」
いつも泰然自若としているジャコモさんが心持ち項垂れている。
僕はちょっと可哀想になって譲歩することにした。
「そういうことならまあ、正規の取引なら応じても構いませんよ。」
僕がそう提案すると、ジャコモさんがゆっくりと顔を上げた。
そして僕を見ながらニヤリと笑った。
「ウィン殿、言質は取らせて頂きましたぞ。」
あっ、やられた。
ジャコモさん、初めからこれ狙いだったのか。
僕が希少品の取引を渋るから打開策を練っていたと。
僕の弟子になる気なんて毛頭なくて、アダマンタイトの取引を確約させるための小芝居だったんですね。
無茶苦茶悔しいけど、ここは素直に負けを認めましょう。
別に僕が損するわけでもないし。
そんなふうに商人としての敗北感を噛み締めていると、今度は黒髭マーロンさんが話しかけてきた。
「ジャコモとの話が終わったのなら、わしの話も聞いてもらえるか?」
マーロンさんからも話があるんですね。
でも今度は簡単に騙されませんよ。
僕の商人としての沽券に関わるからね。
まあ、商人じゃないけど。
「弟子入りの件じゃが、」
「お断りします。」
僕はみなまで言わせず、キッパリと断った。
マーロンさん、本気だったのか。
ギルド長がギルド会員の弟子になるなんてあり得ないと思うけど。
「まあ無理じゃろうな。では本題に入ろう。」
マーロンさんはあっさり引き下がった。
そして本題があると言う。
ジャコモさんもマーロンさんも、弟子入り話を前振りに使うのは止めてください。
話があるなら駆け引きせずにストレートに言えばいいのに。
「本題って、何でしょうか?」
「実はな、ウィン殿に鍛治士ギルドから依頼があるのだ。」
「依頼?」
「そうだ。ウィン殿にしか頼めぬことでな。」
僕にしか頼めないこと?
しかも鍛治士ギルドから?
僕は黙ったまま視線でその先を促した。
「ウィン殿、アンソロに行ってもらえないだろうか。急ぎで。」
アンソロに?
急ぎで?
え〜と、アンソロってどこだっけ?
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