293.神様は英語もOK?(『だん』by 称号神様)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週2回程度の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(293)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
293.神様は英語もOK?(『だん』 by 称号神様)
「一回で5種類は反則だよ〜」
ディーくんは、完全に呆れたような態度でそう言った。
金床の上には、短剣、剣、長剣、大剣、刀が綺麗に並んでいる。
確かに『錬金』が発動する前に、その5種類の剣を思い浮かべていたけど・・・。
でもどれを作ろうか考えているうちに、勝手にスキルが発動しちゃったんだよね。
「いや、そんなつもりはなかったんだけど、どうしようかなと思ってたら勝手にできちゃったというか・・・・・」
「あるじ〜、つもりはなくてもやっちゃったら同じことだよ〜。」
僕の言い訳に対して、問答無用でダメ出しをするディーくん。
確かに失敗したのは僕だけど、従魔って主人に対してこんなに厳しくていいのか。
もうちょと主人を庇ったりするもんじゃないのか。
まあ僕と従魔たちの関係が普通じゃないってことは、十分理解してるけどね。
金床の上の5種類の剣を眺めながら、この事態をどうやって収拾しようかなと考えていると、突然背後から2つの声が聞こえた。
「これは、これは、また良いものが見れましたのう。」
「ジャコモ・・・・・これはそんなレベルの話ではないぞ。」
振り返って見ると、そこにはジャコモさんとマーロンさん(鍛治士ギルド・ポルト支部のギルド長)が立っていた。
「ジャコモさん、なぜここに?」
「もちろんウィン殿の錬金を見るためじゃよ。」
「いや、元々錬金なんてする予定は無かったはずですけど。」
「フォッフォッフォッ、ウィン殿、商人ギルドの情報網は鉄壁じゃよ。ウィン殿の性格を踏まえた展開予測も含めてのう。」
ジャコモさん、それってたぶん「商人ギルドの」じゃなくて、ジャコモさんの個人的な諜報チームですよね。
僕の最初の世界にあったC Iなんちゃらとかの諜報機関より凄いんじゃないですか。
今回はマーロンさんまで連れて来てるし。
「マーロンさん、お久しぶりです。ジャコモさんのせいで、はるばるララピスの街までお越し頂いたんですね。」
「いやいや、突然ポルトの商人ギルドに呼び出されてな。裏庭にある小屋に入ってすぐに出たらもうララピスだと言われて、訳が分からんかったぞ。いや、そんなことよりウィン殿、今のはいったい何が起こったのだ?」
「何と言われても・・・錬金をしただけですけど・・・」
そう答えるとマーロンさんは腕を組んで難しい顔をした。
「ウィン殿、錬金というのは鉱石から金属を抜き出すスキルだとわしは理解しておる。ウィン殿のそれはまったく別物に見えるが。」
「えっ、そうなんですか。錬金って、素材からものを作るスキルだと思ってました。」
「錬金スキルにそんな能力があるとは聞いたこともない。しかし目の前で実際に見てしまった以上、認めるしかないがな。」
確かに『錬金』という言葉の本来の意味は「鉱石から金を精製すること」だよな。
僕自身、「はじまりの島」で初めて短剣(黒)ができた時、これって錬金というより鍛治じゃないのって思ったし。
でもファンタジー的には、異なる素材の組み合わせからワンランク上の物を作る技術も『錬金』と呼んでた気がする。
「ウィン殿、鍛治士としての秘匿事項があることは理解しておるが、あえて質問してもよいか?」
マーロンさんがその立派な黒髭を右手で揉みながらそう尋ねてきた。
彼の隣ではジャコモさんが同じように白髭を揉み揉みしている。
2人は兄弟か親子なのかな。
真面目な会話中なのに笑ってしまいそうになるので、そのシンクロはやめて欲しい。
「マーロンさん、もちろん構いませんよ。」
僕は表情が緩むのを堪えながら、そう答えた。
スキルについては面倒なことにならない限り、特別隠すつもりもない。
「ウィン殿の錬金は鉱石から金属を抜き出すことはできるのか?」
「やったことはありませんが、たぶんできると思います。砂からガラスを取り出したことはあるので。」
「そしてその素材からさらに望んだものを作ることができると?」
「そうですね。ガラス玉からグラスを作れますね・・・あっ、砂から直接グラスを作ることもできます。」
「・・・・・・・・」
そう答えると、マーロンさんはさらに険しい顔になり、黒髭を揉む手を右手から左手に変えた。
同時にジャコモさんも白髭を揉む手を左手に変える。
ジャコモさん、それもう狙ってますよね。
面白がってるとしか思えませんよ。
マーロンさんと僕の会話に茶々を入れるの、やめてもらえます?
「ウィン殿・・・つまり、鉱石から直接武具を作ることもできると?」
「ええっと、それは・・・やったことはありませんけどできるかも・・・」
ゴトッ。
僕の言葉の途中で大きな音がした。
そちらを振り向くと、ディーくんが黒くて重そうな石を床に落としたところだった。
そして無言のままでその石を指差した。
ディーくん、それって「やってみれば」ってことだよね。
言葉にしなくてもディーくんの思考パターンはだいたい読める。
まあ考えるより試した方が早いのは確かだよな。
じゃあやっちゃいますか。
はい、錬金。
僕はスキル名を声に出すことも忘れて『錬金』を発動させた。
床の上の黒い石は瞬時に青い炎に包まれ、あっという間にその形を変えた。
「何と! 無詠唱! しかも速い! おおっこれは・・・あの『グレート・ブラック・ショートソード』か。あの名刀がこんなに簡単に・・・・・」
マーロンさんが両手を広げて大げさに驚いている。
もちろんその隣でジャコモさんも同じ体勢になっている。
でも僕は、2人のシンクロした動き以上に気になることがあった。
「グレート・・・ブラック・・・ショート・・・ソード?」
床の上には短剣(黒)が出現している。
みんなにとって一番分かりやすいかと思ってそれを選択した。
その短剣(黒)を見た瞬間に、マーロンさんの口から出た言葉が「グレート・ブラック・ショートソード」。
もしかしてマーロンさん、勝手に名前付けました?
Great Black Short-sword ?
『偉大なる黒い短剣』?
略してGBS?
ネーミングのセンスについては、僕にとやかく言う資格がないのは自覚している。
でも一点だけ指摘してもいいかな。
そのサイズ、ショートソードというよりダガーじゃないですかね。
「ウィン殿。」
「はい。」
「失礼な呼び名をつけてしまい申し訳ない。」
「いえいえ気にしてませんよ。」
GBSについて心の中で問題点を指摘していると、マーロンさんがネーミングについて謝ってきた。
マーロンさん自身、思わず口走っちゃったけど、納得した名付けじゃなかったってことか。
まあ正式名称じゃなければ、誰がどんな呼び方しても構わないけどね。
そんなふうに思っていると、
「ウィン殿に『不世出の新人鍛治士』などと軽い呼び名を付けてしまったことは、わしの一生の不覚。これからは『グレート・ジーニアス・ブラックスミス』と呼ばせて頂こう。」
そっちかい!
いや、それも思いっきり恥ずかしいのでやめてください。
Great Genius Blacksmith。
『偉大なる天才鍛治士』。
略してGGBか。
あっ、称号神様、ダメですよ。
簡単に称号承認しちゃダメですからね。
…うぃん殿、『だん』だそうでござる…
だん?
…ちょっと待ってくだされ・・・・・『done』という文字でござる…
えっ?
done?
もう決まっちゃったってこと?
でもなぜ英語?
そんなことより称号神様、一度ゆっくり称号ルールについて話し合いませんか?
僕の称号だけ、明らかにバグってると思うんですが・・・・・
…『くれーむは受け付けぬ』だそうでござる。文字は・・・・・『claim』でござる…
もういいです。
いちいち英語のスペルも必要ないです。
この世界の神様については、もういろいろ諦めました。
これ以上、他の神様には関わりたくないけど・・・・・たぶん無理だろうな。
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