286.ウィンギルドの幹部との四方山話(幹部会:終了)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週2回(月・木)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(286)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
286.ウィンギルド幹部との四方山話(幹部会:終了)
「突然召集しておいて、こんな結末で申し訳ありません。」
僕はジャコモさん、シルフィさん、ネロさん、フェイスさんの4人に向かって頭を下げた。
幹部メンバーで話し合ってもらおうと思って集まってもらったのに、ルルさんが1人で掻き回して、1人で決めちゃったからね。
当事者たち(ルルさんと武神様)は既に庭に出て行っちゃったし。
「ウィン殿、まったく無問題じゃよ。小屋に来るのは簡単じゃからのう。むしろ実物の武神様を拝むことができて嬉しい限りじゃ。」
「ジャコモさんは、商売の神様とかに会ったことはないんですか?」
「ないんじゃよ。普通は滅多に会えるものではないからのう。」
「そうなんですね。武神様があんな感じなので、この世界の神様ってどこにでもヒョイヒョイ現れるのかと思ってました。」
「それはないのう。『預言』や『神託』のスキル持ちを通じて御言葉を授かるくらいがせいぜいじゃな。」
そういうものなのか。
武神様がちょっと特殊なのかな。
でも待てよ。
フェイスさんは女神様に伝手があるって言ってなかったっけ?
「フェイスさんは女神様たちと繋がりがあるんですよね。」
「はい。でも直接会えるわけではありません。『巫女』スキル持ちの諜報員を通じて情報を収集しております。」
やっぱり神様とは間接的な関係なんですね。
まあその辺に神様がポコポコいたら、有り難みが薄れちゃうよな。
それにしても『巫女』スキルかぁ。
僕の知らないスキル、まだまだいっぱいありそうだな。
そう言えば、フェイスさん、格闘大会で巫女装束を身に付けてたよね。
鑑定には表示されなかったけど、実は『巫女』スキル持ってたりする?
「ウィン様、私に『巫女』スキルはありません。あれは私の部下の姿をコピーしていただけですので。」
フェイスさんが妖艶に微笑みながらそう言った。
『念話』持ちじゃないはずなのに、やっぱり考えてることがバレバレだ。
フェイスさん、ステータスに偽装かけてない?
実は『念話』も『巫女』も持ってるんじゃないの?
何と言っても『偽装(極)』のスキル持ちだからね。
「私は、ウィン様には、嘘はついておりません。ウィン様に対しては、何も隠す必要がありませんので。信じてもらえないのは悲しいです。」
フェイスさんが、右手を頬に当てて、よよよと泣き崩れる真似をする。
あくまでも真似で本当に泣いてる訳ではない。
「あ、ごめんなさい。別に疑ってるわけでは・・・・・いや疑ってましたね。すみません。あまりにも心の中を読まれてしまうのでつい。
「ウィン様の心の内が分かるのは、一重に私の努力の賜物だと思ってください。」
そう言いながらフェイスさんは泣きそうな表情からすぐに笑顔に戻った。
僕の背中にぞくっと悪寒が走る。
それはつまり、ストーカー的な努力ってことですよね。
話題を変えよう。
「ところであの格闘大会での偽名は部下の名前ですか?」
「ああ、アルジェですか。その通りです。もちろんコードネームで実名ではありませんが。」
「格闘大会でアルジェさんの姿と名前を使うのは問題なかったんですか?」
「大丈夫です。本人の許可は取りましたし。どうせ彼女は姿も名前もどんどん変えるので問題ありません。」
姿も名前もどんどん変えるから問題ない?
それってお互いに混乱しないんだろうか。
諜報ギルドの人たちって大変そうだな。
それにそんなに色々変えてたら、本来の自分を見失いそうだけど。
まあそういう職業だから仕方ないのか。
「ウィン、そんなことより武神様への紹介はどうしてくれんだ?」
僕とフェイスさんの会話にネロさんが割り込んできた。
「あっ、ネロさん。まだいらっしゃったんですね。早く冒険者ギルドに戻らないと奥様に叱られますよ。」
「ギルドなんてグラ(グラナータさん)に任しときゃ問題ねぇ。それより高所恐怖症を消す加護をだなあ・・・」
「そんな加護ありませんよ。」
「聞いてみなきゃ分かんねぇだろうが。」
「あっ、グラナータさん、お迎えに来られたんですか?」
「ヒェッ!」
僕がネロさんの後方に視線を移してそう言うと、ネロさんが頭を抱えてうずくまった。
頭上からグラナータさんの『赤いダイナマイト』が落ちてくるとでも思ったんだろう。
そしてネロさんは、後ろを確認もせずに、子猫の姿に変身してテーブルの下に逃げ込んだ。
ネロさん、仕事をサボってる自覚はあるんですね。
そしてグラナータさんのこと、そんなに怖いんですね。
もちろん、ここにグラナータさんはいない。
僕のほんのささやかな冗談だ。
まあ転移を使えば、彼女を一瞬でここに連れて来ることも可能だけどね。
僕は恐妻家のネロさんを追い払った後、シルフィさんにも言葉をかけた。
「シルフィさん、わざわざお越し頂いてありがとうございました。」
「いえいえ、いつでもお呼び出し下さい。テイマーギルドに『小屋』を設置して頂いたのでいつでも来れますし。今回、従魔の皆さんにお会いできないのは残念ですが。」
ウィンギルドのメンバーの拠点には既に『小屋』を設置してある。
何かあった時にすぐに集合できるようにとの配慮からだ。
コロンの冒険者ギルド、アマレのテイマーギルド、そしてもちろん、ここララピスの商人ギルドの裏庭にも設置済みだ。
諜報ギルドはどこにあるのか知らないので設置していない。
フェイスさん、必要なさそうだし。
「すいませんねぇ。従魔たち、どこに行っちゃったんでしょうね。せっかくシルフィさんが来られてるのに。たぶん『庭』にいるか、素材集めに行ったんだと思うんですが。召喚しましょうか?」
「いえいえ大丈夫です。ウィン様と従魔たちのその自由な関係性、素敵だと思います。テイマーはどうしても従魔を束縛しがちですから。」
「でもシルフィさんは従魔たちをとても大事にしてますよね。」
「大切だからこそ束縛してしまうんですよ。テイマーの習性ですね。ウィン様のようなテイマーのあり方を少し見習いたいと思います。」
いえいえ、僕の従魔たちが自由過ぎるだけですから。
時々言うこと聞かないし。
むしろ彼らが本当に僕の従魔なのか、疑問に思ってるくらいです。
「おうおうおうウィン、グラのやつ、どこにもいねぇじゃねぇか。てめえ、よくも騙しやがったな。」
テーブルの下から小屋の中の様子を伺っていたネロさんが、グラナータさんの姿がないことを確認して再び戻って来た。
子猫姿のままでイキがってる。
僕はめんどくさくなったので、両手で子猫を捕まえてそのまま転移した。
そしてすぐに転移で『小屋』の中に戻ってきた。
「ネロさんは、どうされたんですか。」
ひとりで戻って来た僕を見て、シルフィさんが尋ねてくる。
「グラナータさんの目の前に転移して置いて来ました。うるさいんで。」
「まあまあそれは・・・・・グラナータさんも驚かれたでしょうね。」
「大丈夫だと思います。グラナータさん、いい笑顔で笑ってましたから。」
子猫姿のネロさんがグラナータさんの前で正座させられてる絵が目に浮かぶ。
ざまあみろだね。
これからネロさんがグダグダ言った時はこの手を使おう。
えっ、性格が悪い?
気にしません。
性格の良さより自分の快適な生活が大事なので。
「ではそろそろ我らもお暇するとしようかのう。」
ジャコモさんがソファから立ち上がりながらそう言った。
その言葉で、緊急幹部会はお開きとなり、それぞれが扉を開いて帰って行った。
いつの間にかリーたんも居なくなってる。
串焼きを食べ終わって、海底の洞窟に帰ったんだろう。
静まり返ったリビングに一人でいると少し寂しさを感じる。
仲間が増えると煩わしいことも増えるけど、孤独よりは断然いい。
結局この『小屋』に居候がもう1人増えることになった。
押しかけ勇者の次は押しかけ神様。
今のうちに武神様の部屋でも用意しようかな。
ついでにいろいろ追加しよう。
『小屋』の改造、割と久しぶりかもしれない。
あれ、そう言えば神様って部屋が必要なのか?
神様って部屋の中で生活するのものなのか?
まあどうでもいいな。
後で本人(本神)に確認すればいい。
とりあえずちゃっちゃっと改造(増築?)して、昼寝でもしよう。
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