285.武神様に武神様に居住許可が下りたようです(手の平返し:ルル)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週2回(月・木)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(285)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
285.武神様に居住許可が下りたようです(手の平返し:ルル)
「戦闘爺さん、何か勘違いしてないか。」
「ルルちゃん、それはどういう意味かのう?」
『最終兵器』vs『ワガママ爺さん(武神様)』の舌戦が開始された。
武神様の呼び方が毎回変わるのは、僕の中の抑えきれない思いの表れなので気にしないでほしい。
ウィンギルド幹部会のメンバーは、口をつぐんで成り行きを静観している。
下手に関わると面倒なので2人に丸投げしたともいう。
「ウィンの許可を得たからといって、ここに住めると思うな。」
「なぜじゃ?」
「ここにはここの掟があるからだ。」
「掟じゃと? なんじゃそれは?」
『神ハラ爺さん(武神様)』に激しく同意。
ここの掟?
なんだそれ?
そんなものいつの間にできたの?
ウィンギルドで決めたのかな。
それともルルさんが勝手に作った?
「この小屋の絶対的なルールだ。ウィン、戦闘爺さんに説明してやれ。」
ルルさんが僕に視線を向けながら、顎をクイっと振った。
えっ、そこで僕に振る?
そう言われても何のことかさっぱり分からないんだけど。
この『小屋』に『掟』があるなんて初耳だし。
僕は目を泳がせながら幹部会のメンバーを見回した。
でも誰も反応しない。
唯一ジャコモさんだけが微かに首を横に振っている。
『掟』については誰も把握していないということだろう。
ウィンギルドで作ったわけではないようだ。
仕方がないので、僕はルルさんに向かって両手を上げて見せた。
『お手上げ』のポーズだ。
知らないものは説明のしようがない。
ルルさんはしばらく僕の方を見つめた後、ため息をついて話し始めた。
「ウィン、自分が作ったルールくらい自分で説明したらどうだ。まあ仕方がない。私が説明してやろう。戦闘爺さん、ここに住むにはウィンの承諾だけではダメだ。ここにいる者すべての多数決で決定する必要がある。」
ルルさんが『激弱爺さん(武神様)』に向かって断言した。
多数決?
ああなるほど、そういうことか。
ルルさんとリベルさんがここに住むかどうかって時に、従魔たちがやった多数決のことを言ってるんですね。
あの時はほんの思いつきだったので、今まですっかり忘れてました。
いつの間にか(ルルさんの中では)『掟』になってたんですね。
「そんな掟が・・・・・ここにいる者ということは、今いる6人による多数決ということじゃろうか?」
「いや、従魔たちも参加する。」
「なんじゃと、従魔たちにも決定権があるじゃと?」
「当たり前だ。ここは元々従魔たちの小屋だ。今ではウィンギルドでも使用するのでギルドの幹部メンバーにも多数決に参加してもらう。」
ルルさん、言ってることは理解できますけど、そこまでする必要あります?
『最終兵器』なんですから、単純に「出ていけ」の一言で決着すると思ってたんですが。
あるいは白銀の右腕の一振りで『付き纏い爺さん(武神様)』を吹っ飛ばせばいいかと。
それに多数決を取った場合、従魔たちは気まぐれなんで武神様が住むことに賛成しちゃうかもしれませんよ。
あの子たち、面白ければ何でもいいってタイプだし。
あと、細かいことだけど、この『小屋』、従魔たちのじゃなくて僕の小屋なんだけどな。
「ルルちゃん、掟があることはよく分かったのじゃ。甘んじてその多数決を受け入れても構わん。じゃがのう、その前にわしからの提案を聞いてもらえんかのう。」
「提案? いいだろう。私の時もここに住みたい理由をきちんと説明させてもらったからな。」
ルルさんのここに住みたい理由?
ああ確か「ここに住んで毎日従魔たちと戦いたい」だったっけ。
まあ、理由っちゃあ理由だな。
目的が達成できたのかどうかは知らないけど、とりあえずディーくんの訓練は受けてるしね。
「わしもタダでここに住ませてもらおうとは思っとらん。ちゃんと手土産を用意しておる。」
「手土産だと。戦闘爺さん、そんなもので私を買収できると思うなよ。」
ルルさんが強い眼差しで武神様を睨みつける。
手土産かぁ?
武神様の手土産って何だろう?
ルルさんも僕も『加護』はもうもらってるし、ワンランク下の『祝福』は必要ないし。
特殊な武器とか、レアな戦闘スキルとかかな。
もしかして他の神様を紹介してくれるとか。
いや、『ボッチ爺さん(武神様)』にそんな人脈(神脈)があるわけないか。
「わしにはのう、一時的に特定個体の戦闘力を大きく引き上げる能力があるんじゃ。加護とは比較にならんほど高くのう。これは武神固有の力じゃ。」
武神様はそう言いながら、ニヤリと笑った。
「ふん、そんなもので強くなろうとは思わん。己の力は己で高める。それが戦人の心意気だ。」
ルルさんが光の速さでその提案を却下する。
「まあ待て。勘違いするな。ルルちゃんを一時的に強くしようなどとは思っとらんわい。」
「ならばどういう意味だ?」
武神様の提案の意図が読み切れず、ルルさんが怪訝な顔になる。
武神様、そんな能力も持ってるんですね。
鑑定結果には表示されてなかったけど。
神様に対する僕の『鑑定』は、まだまだだ不完全なのかもしれないな。
それにしても、一時的に攻撃力を上げる能力かぁ。
強敵を相手にする時にはありがたいだろうな。
でもルルさん的にはそれじゃあ面白くないと。
武神様も違う使い方を考えてるみたいだし。
あと、ルルさん、「戦人の心意気」とか言ってますけど、自分が『聖女』だということ覚えてますか?
ルルさんの質問を受けた後、武神様はわざとらしく間を置いて、自分の提案の意図を端的に告げた。
「ルルちゃんが魔物と戦う時にのう、その魔物を強化するんじゃよ。そうすればいつでも強い魔物と戦うことができるぞ。」
「!」
武神様の言葉を聞いて、ルルさんの金色の目が大きく見開かれた。
言葉を失い、明らかに驚愕している。
ルルさんに取って予想外の回答だったのだろう。
もちろん僕にとっても予想外だ。
わざわざ戦う相手を強くするなんて、普通なら成り立たない提案だからね。
でもルルさんの場合・・・・・
「戦闘爺さん、許可する。今日からここに住んでいいぞ。」
ルルさんがはっきりと武神様に居住許可を宣言した。
直前まで拒否するスタンスだったのに、あっという間の手の平返しだ。
おい、ルルさん、さっきまでの『掟』の話はどこに行ったのかな。
多数決で決めるんじゃなかったのか。
絶対的ルールとまで言ってたよね。
まあ、ルルさんだからな。
強いものと戦えるなら他のことはどうでもいいんだろうな。
僕も多数決にこだわりがあったわけじゃないし、武神様がここに住むことに絶対反対ってわけでもないし、成り行きに任せるか。
ちょっと面倒そうではあるけどね。
結局、武神様への『最終兵器』は、思っていたものとは違う方向に威力を発揮した。
彼女はある意味、僕たちにとっても『最終兵器』なので、誰も反論しなかった。
まあ、武神様居候問題については、全員どうでも良かったとも言える。
「結論は出たということで、いいんじゃろうな。」
「聖女様が良しとするなら、私に異存はございません。」
「そうとなりゃあウィン、ちょっくら武神様を紹介しろや。」
「ウィン様、今後、神族周りの諜報を強化いたします。」
ジャコモさん、シルフィさん、ネロさん、フェイスさんの4人は、それぞれにルルさんの決定を受け入れたようだ。
ネロさんの寝言はそのままスルーしておく。
知り合いになりたかったら、自分で勝手になって下さい。
「そうと決まれば戦闘爺さん、早速『庭」でその能力を見せてくれ。」
「まったくルルちゃんはせっかちじゃのう。しかしここの庭に魔物がおるのか?」
「いっぱいいる。」
「ほう、それは面白いのう。では参るか。」
そしてルルさんと武神様は『庭』に出て行った。
海竜のリーたんをダイニングテーブルに残したままで。
2人が出て行くのに気づいたリーたんが、串焼きを食べる手を止めて大声で叫ぶ。
「おじいちゃん、食べ終わったら『ごちそうさま』しなきゃダメだよ!」
誰が教えたのか、いつの間にか食事マナーにとても厳しくなっているりーたんだった。
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