283.神様も鑑定できるようです(押しかけ居候2号:武神様)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週2回(月・木)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(283)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
283.神様も鑑定できるようです(押しかけ居候2号:武神様)
「鑑定。」
僕は武神様に向かって『人物鑑定』を発動してみた。
【鑑定結果】
名前 : 武神(男神)
種族 : 神族(中級神)
職業 : 武神
スキル: 武乃祝福・武乃加護・無限遠見・万物透視
読心念話・瞬間移動・完全隠蔽・自在偽装
万物鑑定
神力 : 100000
称号 : 『武神様』『色物神』『色欲神』『神ハラ爺さん』
『人物鑑定』で神様を鑑定できてしまった。
神様にも称号が付くという情報から、もしかしてと思って試してみたらすぐに鑑定結果が表示された。
つまりは神様も人の範疇ってことなんだろうか。
ちょっとびっくりだ。
僕は武神様の鑑定結果をじっくり吟味してみた。
まず気になったのは職業にある『神族(中級神)』の表示。
武神様が中級神ってことは、他に下級神や上級神もいるってことだよな。
もしかすると最高神とかもいるのかもしれない。
次にスキルの項目。
さすがに神様だけあって凄いスキルが並んでいる。
祝福と加護は当然としても、何でも見えて(無限遠見・万物透視)、心が読めて(読心念話)、どこにでも行けて(瞬間移動)、姿を変えたり消せたりできて(完全隠蔽・自在偽装)、すべてのものを鑑定できる(万物鑑定)。
無敵じゃないか。
確かに戦闘系のスキルはないけど、これだけの能力があれば相手を倒せなくても負けることはないはずだ。
なぜリベルさんの一撃をまともに受けたのか理解できない。
何か意図があるのか、ただ気を抜いていただけなのか。
まあどちらにしろ、武神様がかなりハイスペックであることは確認できた。
ただ・・・・・
どうしても武神様の趣味に合わせたスキルに見えてしまうのは僕の偏見だろうか。
多彩なスキルを駆使して敵を翻弄する、そんな武神様の姿はまったく想像できないけど、全能力を駆使してかわいい『戦乙女』を探しまわってる姿なら容易に目に浮かぶ。
まあ武神様の趣味嗜好については置いておいて、次の項目をチェックしよう。
本来なら『魔力』の項目があるところに『神力』が表示されている。
まあ神様に『魔力』があったらおかしいか。
武神様の『神力』が10万。
これって神様として多いのかな、少ないのかな。
今のところ比較対象がないので判断できない。
そのうち別の神様に出会ったら比べてみよう。
そんな機会があるのどうか分からないけど。
最後に問題の『称号』を見てみると・・・・・
すでに『神ハラ爺さん』が生えてるんですけど。
いやその前に、『武神様』はいいとして『色物神』と『色欲神』って・・・・・
『神ハラ爺さん』より酷くない?
「ああっ! 称号神のやつ、称号基準のルールを曲げおったな。ウィン1人の思いつきで称号にするなど神の理を乱す行為じゃ。あやつ、わしに何ぞ恨みでもあるのか。」
土下座の態勢をとっていた武神様がいきなり叫んだ。
たぶん自己鑑定もできるんだろう。
それで新しい称号を発見して憤慨しているようだ。
でもなぁ。
「武神様、その称号神様って簡単にルールを曲げるような神様なんですか?」
「いや、とても几帳面なやつでのう。冗談も通じんし賄賂も受け取らん。わしがいくら頼んでもルール外の称号は認めてくれんかったわい。」
「ちなみにどんな称号をお願いしたんですか?」
「わしのかわいいライラちゃんに『マジカル超絶美少女』を頼んだ時も、わしの愛しいマリアちゃんに『奇跡のスーパーボディ』を頼んだ時も、あやつは鼻で笑って却下しよった。本当に融通のきかんやつじゃ。○屋の甘味詰め合わせまで持参したというのに。あれ、高かったんじゃぞ。」
なるほど。
称号神様はとても仕事に忠実な神様なんですね。
あなたと違って。
そんな神様が今回だけルールを曲げるなんて考えにくいですよね。
ということはつまり、
「武神様、僕の言葉は最後のダメ押しだったんじゃないかと思います。」
「ん? どういうことじゃ?」
「きっと以前から武神様のことを『神ハラ爺さん』だと思っていた女性がいっぱいいたんだと思います。そして今回の僕の一言で称号神様の基準を満たしたんじゃないですか。」
僕がそう指摘すると武神様は一瞬黙り込んだ。
そして両目が左右に泳いだ後、焦った感じで再び話し出した。
「そんなことは・・・ないはずじゃ。絶対に・・・きっと・・・たぶん・・・・・」
「じゃあ訊きますけど、ライラちゃんとマリアちゃんは先程の称号を武神様に頼んできたんですか?」
「いや・・・・・あの2人は遠慮深くてのう。わしがわしの愛情の証としてあの2人にぴったりの称号を考えたんじゃよ。」
でしょうね。
もうその時点でアウトですよ。
完全に『神ハラ』が成立してます。
絶対に2人とも心の中でそう思ってたはずだ。
でも心が読めるはずの武神様がそのことに気づかないはずはないんだけどな。
「彼女らの心を読んだりはしておらん。」
「えっ、どうしてですか?」
「つらいじゃろうが。」
「つらい?」
「心を読んで、わしに対して酷いことを考えておったら・・・・・立ち直れんじゃろうが。」
ああ、あるあるですね。
他人の心がすべて分かる能力なんて地獄ですよね。
でもだからこそ神様は俗世間に染まっちゃいけないんじゃないですか。
人間の醜い部分を見てもさらりと流せる境地にいないといけないんじゃないですか。
「バカ者、そんな神などおるわけがないじゃろう。」
「えっ、いないんですか?」
「当たり前じゃ。神とて感情もあれば欲望もある。褒められれば嬉しいし貶されれば悲しい。美味しいものも食べたければ楽しい時間も過ごしたい。神に聖人君子を求められても困るんじゃ。」
「そうなんですね。てっきり神様は聖人君子のさらに上だと思ってました。」
「そうやって神を祭り上げるのは人間の勝手な思い込みじゃ。神は人間のための便利な道具じゃない。神には神の生き方があるんじゃ。」
つまり、この世界の神様は前の前の世界での多神教的な神様たちってことですね。
多神教の神々って、感情豊かで善悪に無頓着でけっこう暴走してるタイプも多かったし。
この世界もそういう神様が多いのかもしれない。
あんまり遭遇したくないけど。
まあ、武神様については『鑑定』でいろいろ分かったし、称号も生えちゃったものはもうしょうがないし、これくらいでいいかな。
「ウィン、何がこれくらいじゃ。」
「いや心配しましたけど、武神様、大丈夫そうだし、リベルさんは再教育のために従魔たちに連れ去られたし、ルルさんは『庭』でディーくんと稽古してるし、僕もそろそろ自室で昼寝でもしようかなぁとか思ってみたり・・・・・。」
「だから何じゃ?」
「え〜と、そのですね、武神様、そろそろ帰らないのかなぁと。」
「いやじゃ。」
「えっ?」
「帰るところなどない。」
「ええっ?」
「わしもここに住む。」
「えええっ?」
押しかけ居候2号が現れました。
誰か、神様の追い出し方を教えてくれませんか。
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