表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

281/333

281.武神様、再び(初対面:リベル)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週2回(月・木)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(281)

【アマレパークス編・地下都市ララピス】



281.武神様、再び(初対面:リベル)



「どうした? かかってこんのか?」


いつの間にか闇ダンジョンの空中に怪しい人物が浮かんでいた。

両腕を組んで僕たちを見下ろしている。

黒いボディスーツに黒いマントを羽織り、目だけを隠す黒い仮面を着けた姿。

これって、変装してるつもりだろうか?


「わしの登場に度肝を抜かれて声も出んのか?」


僕とルルさんが言葉もなく見上げていると、その黒尽くめの人物は何を勘違いしたのか、僕たちを煽る言葉を投げ掛けてきた。

ルルさんは呆れているのか、口を開こうともしない。

仕方がないので僕が対応することにした。


「あのぉ、一応質問してもいいですか?」

「もちろんじゃ。何でも聞くが良い。」

「貴方様はどちら様ですか?」

「見ての通りじゃ。この闇ダンジョンを統べる神じゃよ。」


そう答えながらその人物は空中から地面へとゆっくり降りて来た。


なるほど、『闇ダンジョンの神様』という設定なんですね。

だから黒尽くめの衣装を着てるんですね。

でも個々のダンジョンに、神様っているんですか。

神様が統べる範囲って、そんなに狭くてもいいんですか。

どうせならすべてのダンジョンを統括する『ダンジョン神』って設定の方が説得力があった気がします。


「それで、闇ダンジョンの神様が僕たちにどのような御用でしょうか?」

「いや、じゃからわしが相手をしてやろうと言うておる。」

「いえいえいえ、神様と戦うなんてとんでもありません。」

「遠慮することはない。ど〜んとかかってくれば良い。」

「いえいえ、もう少し強い魔物を出して頂ければ、それで十分ですので。」


神様と戦うなんて面倒過ぎる。

特にこの神様に絡むのは極力避けたい。

だってこの神様、ちょっとフェイスさん(諜報ギルドのエース)と同じ匂いがするんだよね。

下手に相手にすると付き纏いそうな気がする。


「ここの魔物はダメじゃ。闇で戦うことに特化しておるでのう。暗視持ち相手じゃ話にならんわい。先ほどもルルちゃ・・・・・そこの女性が瞬殺しておったじゃろう。」


自称『闇ダンジョンの神様』が、自ら闇ダンジョンの弱点を公言してしまった。

そんなに情報統制が緩くていいのか。

まあこの世界に『暗視』持ちがどれくらいいるのか知らないけど。


それにそこの神様、今『ルルちゃん』って言いかけましたよね。

せっかく気づかないふりしてあげてるのに、どうして自爆しそうになってるんですか。

調子を合わせるのもそろそろ潮時かな。

このジジィ・・・じゃなくて神様、諦めそうにないしね。


そんなことを考えていると、


「戦闘爺さん、いい加減にしろ。呼び出してもないのに勝手に出てくるな。」


ルルさんが冷たく言い放った。

右手でシッシッと、追い払う仕草までつけて。


「ルルちゃん・・・なぜ正体が・・・わしの完璧な偽装を見抜くとは・・・さすがじゃ。」


『闇ダンジョンの神様』に変装しているつもりの武神様が驚愕の表情でつぶやいた。

組んでいた両腕を解いて、かなりのオーバーリアクションだ。


いや最初っからバレてますけど。

逆になぜそれで隠せてると思ったの?

いくら黒尽くめの衣装を着て仮面を着けても、声もしゃべり方もそのまんまじゃバレバレでしょう。


「武神様、こんな所で何してるんですか?」

「ウィンよ、お主もわしに気付いておったのか?」

「いや、まあ、何となく。」

「なんと! わしの偽装のどこが悪かったと言うんじゃ?」


どこと言われても返答に困るよね。

それにそれ、偽装じゃなくて変装、いや仮装ですよね。

武神様、暇なの?


「ウィンさん、もぐもぐ、この黒い人、もぐもぐ、誰ですか?」


リベルさんがいきなり話に割り込んできた。

僕が渡した5個目のパニーニを食べながら。


正直、リベルさんがいること、すっかり忘れてました。

そう言えばリベルさん、武神様とは初対面だったよね。

『格闘大会』の時は、1人だけ『小屋』に置き去りにされて寝てたからね。


「リベルさん、この方は武神様です。武の神様です。」

「ええっ、そうなんですか? もぐもぐ。ボク、神様って初めて見ました。もぐもぐ。」


リベルさん、神様の前でも通常運転なんですね。

まあ信仰心は人それぞれなので、必ず敬う必要もないですけど。

ただしつこいようですが、人と話す時は食べるの止めましょうね。


「武神様、こちらは『はらぺこ勇者』で『ダメダメ勇者』で『3歳児勇者』のリベルさんです。」


僕はリベルさんのことを改めて武神様に紹介した。

特別サービスで、称号(はらぺこ勇者以外は未承認)を3つ付けてあげた。

その方がリベルさんの本質を理解しやすいと思って。

武神様は僕の言葉を聞いて、解いていた両腕を組み直しリベルさんの方を見た。


「わしは武の神じゃ。よろしくな。ところで勇者リベルよ。お主にはわしの祝福も加護も付いとらんようじゃのう。」

「祝福? 加護? もぐもぐ。それ、何ですか?」

「勇者をやっておって、そんなことも知らんのか。」

「ボク、食べられるもの以外に興味がないので。もぐもぐ。」


リベルさん、自覚してたんですね。

だからどうだって話だけど、己のことを知るのは大事なことです。

でもそこから一歩進んで、自己改善にまで至ってくれるとありがたいんですが。


「わしの加護があれば、戦闘力が上がるぞ。」

「そうなんですか? もぐもぐ。でもボク、戦闘にはあんまり興味ないので。」

「妙なヤツじゃのう。勇者のくせに強さに興味がないとは。」

「戦うより、美味しいもの食べてるほうが幸せじゃないですか。もぐもぐ。」

「それはまあ、分からんでもないが。」


美味しいものより戦闘が好きな聖女様がここにいるけど、リベルさんの言ってることも理解できる。

人は美味しいものを食べてる時に一番素直な笑顔を見せる。

恋愛や仕事には打算や駆け引きが含まれるけど、美味しいという感情には裏がない。

まあ何事にも例外は存在するけど。


「しかしのう、お前たち、冒険者パーティーじゃろう? このままではリベルだけ仲間はずれじゃぞ。」

「えっ、どういうことですか?」

「ルルちゃんとウィンは持っとるぞ。わしの加護。」

「ええっ!」


リベルさんは驚きの声を上げると、手にしていた食べかけのパニーニをポトリと地面に落とした。

普段なら大騒ぎするところだけど、今はそれどころじゃないようだ。


「ウィンさん、どういうことですか? どうしてボクだけ仲間外れなんですか?」

「いや、別に、成り行きで。」

「成り行きで親友を仲間外れにするんですか? ウィンさんはそんな人だったんですか?」


いや、仲間外れとか、そんなことまるで考えてなかったんだけど。

あと、どさくさに紛れて『親友』とか言ってるけど、リベルさん、別に親友じゃないし。

それに、神様の加護はそんなに簡単にもらえるものじゃないよね。


「リベルさん、加護があるとかないとか、別にどうでもいいじゃないですか。」

「加護の問題じゃないです。仲間はずれが嫌なんです。」


まさかリベルさんが、『仲間』にこれほどこだわるとは・・・・・。

落としたパニーニに気付かないくらいだから、相当だよな。

これはどうしたもんかな。


そんなふうに解決策に頭を悩ませていると、


「勇者リベルよ、よくぞ申した。わしの加護を授けてやろう。」


いきなり武神様が大声でそう叫んだ。


『よくぞ申した』?・・・どの部分が?

『加護を授ける』?・・・簡単過ぎじゃない?


武神様の思考回路も、ほんと良く分からないな。



読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


申し訳ありませんが、都合で2週間ほど夏休みをいただきます。

次回は8月15日(木)の予定です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ