280.闇ダンジョンの魔物たち(泥と蝙蝠と蜘蛛)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週2回(月・木)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(280)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
280.闇ダンジョンの魔物たち(泥と蝙蝠と蜘蛛)
「ぬるい! ぬるすぎるぞウィン!」
ルルさんの機嫌が下降の一途を辿っている。
せっかくルルさんの希望通りダンジョン攻略にやってきたのに、ルルさんの顔が般若のように歪んでいる。
これはまずい。
非常にまずい。
まあ、僕のせいじゃないんだけど。
問題はこの『闇ダンジョン』だ。
ギザギザを瞬殺した後、何種類かの魔物が現れたんだけど、これがまたことごとく弱かった。
おそらく、視界が奪われた状態ならかなり難易度の高いダンジョンなんだと思う。
しかし、『暗視』スキルを得て『闇』がなくなった途端、初心者用のダンジョンに成り下がってしまった。
とりあえず、ここまでに出現した魔物を紹介しておこう。
討伐(瞬殺)の模様も交えて。
ギザギザ以降は3種の魔物が10体ずつで順番に襲ってきた。
1種類目は『ドロロック』だ。
【鑑定結果】
○ドロロック(dororock) ☆
系統 : 鉱物系水溶型
通称 : 『泥の魔物』
体型 : 小型
体色 : 黒色
食性 : 雑食
生息地: 洞窟
特徴 : 泥状の軟体。
体内に溶解液を持つ。
自分の存在を隠蔽する。
打撃を軽減する。
食材には向かない。
特技 : 溶解・隠蔽・打撃軽減・暗視
ドロロックはその通称通り『泥の魔物』だ。
一見すると濁った水溜りのように見える。
その泥水が10体、凸凹の岩場をゆっくり流れるように移動して近付いて来た。
攻撃手段は『溶解』だ。
体内に溶解液があるので、それで相手を溶かすのだろう。
ただ、マッテオさんの農園で遭遇したフルーツ・スライムの『飛酸』のような溶解液を飛ばす能力は持っていなかった。
「ウィン、なぜこんなにゆっくりなんだ?」
「闇の中なので、ゆっくりの方が見つかりにくいんでしょう。」
「丸見えだが。」
「暗視、使ってますから。」
「攻撃してもいいのか?」
「いいと思います。ただ、体内に溶解液がありますので気をつけて下さい。」
「了解。参る。」
そしてルルさんはドロロックたちを瞬殺した。
直接殴ったら拳が溶けるんじゃないかと心配したが、風魔法を纏わせた拳で殴ったようだ。
そうすれば溶解液に触れずに殴れるらしい。
さすがルルさん。
魔物を殴り倒すためなら、いろんなことを考えるんですね。
ぜひその他の面でも、いろいろ考えて頂けるとありがたいです。
でもこのドロロック、何も見えない状態だったら気付かないうちに溶かされちゃうだろうな。
全身をやられることはなくても、こっそり忍び寄られて、足の先とか腕の一部とかを攻撃される可能性はある。
そうなれば冒険者の戦闘力は格段に落ちてしまうに違いない。
2種類目は『ノクス・ババット』だ。
通称は『闇コウモリ』。
【鑑定結果】
○ノクス・ババット(nox babat) ☆
系統 : 翼手系蝙蝠型
通称 : 『闇コウモリ』
体型 : 小型
体色 : 黒色
食性 : 昆虫食
生息地: 洞窟
特徴 : 闇に紛れる真っ黒な体。
音波(物理系)を発する。
自分の存在を隠蔽する。
ランダムな飛び方ができる。
可食(串焼きがお勧め)
特技 : 音波・隠蔽・飛行・暗視
真っ黒なコウモリ型の魔物は、空洞の天井の方からヒラリヒラリと舞い降りてきた。
ヒラリヒラリと言っても音がする訳じゃないし、暗闇の中ではその存在に気づくことは難しいだろう。
攻撃手段は『音波』による物理攻撃。
ジグザグに飛び回って位置を変えながら『音波』を敵に当てる戦法のようだ。
視界を奪われた中で、どこからともなく飛んでくる波動を察知するのは『波動感知』でもない限りまず無理だ。
即死級の威力はなさそうだけど、冒険者の体力を確実に削っていくタイプだろう。
「ウィン、あれは速いのか?」
「いえ、飛び方がランダムなだけだと思います。」
「殴っても溶けないか?」
「溶解はありません。音波攻撃があるのでその射線だけ避けて下さい。」
「了解。参る。」
そう言い残してルルさんは空洞の天井近くまで跳躍した。
そして腕の一振りで10体の闇コウモリたちを光の粒に変えた。
闇コウモリたちの誤算は、自分たちが感知されていないと思っていたことと、まだ周囲に広がる前で一団で固まっていたこと。
あとはルルさんのスピードかな。
翼手系蝙蝠型の魔物は、得意の『音波』攻撃を発動する前に、登場から数秒で退場することとなった。
3種類目は『ノクス・パパイダー』。
通称は『闇グモ』。
○ノクス・パパイダー(nox papayder) ☆
系統 : 昆虫系蜘蛛型
通称 : 『闇グモ』
体型 : 小型
体色 : 黒色
食性 : 雑食
生息地: 洞窟
特徴 : 闇に紛れる真っ黒な体。
牙から麻痺毒を出す。
自分の存在を隠蔽する。
粘着質の糸を吐く。
可食(唐揚げがお勧め)
特技 : 麻痺・隠蔽・粘糸・暗視
蜘蛛型の魔物は、空洞の壁面を左右に分かれて5体ずつでこちらに近付いて来た。
体色は黒で、体の両側面に4つずつ赤い目がある。
頭部にも2個あるので全部で目が10個もある。
頭の中でどんな画像を認識してるんだろう。
混乱しないのかな。
攻撃手段は『麻痺』と『粘糸』。
相手の動きを止めるのが役割のようだ。
いや、違うな。
麻痺と粘糸で身動きできなくして、それを食べるのか。
『雑食』だからね。
そこまで考えて3種類の魔物の意味が見えてきた。
泥の魔物が相手の攻撃力を削ぎ、闇コウモリが相手の体力を奪い、最後に闇グモが動きを止めて捕食する。
うわぁ、めちゃくちゃ感じの悪いダンジョンだな。
「ウィン、あれも殴っていいか?」
「存分にどうぞ。」
「少しは強いのか?」
「どうでしょう? 牙に麻痺毒があるのと粘糸を吐きます。」
「それだけか?」
「はい。」
「つまらんな。参る。」
まず右に跳んで5体、次に左に駆けて5体。
瞬殺2回で終了。
実にあっさりしている。
このダンジョンの魔物たち、相手から見えないことに慣れ過ぎて動きがトロ過ぎるんじゃないのかな。
そんなことを考えていると、いつの間にかルルさんが僕の目の前に戻って仁王立ちしていた。
そして冒頭のセリフに戻る。
「ぬるい! ぬるすぎるぞウィン!」
確かにぬるすぎますよね。
僕でもそう思います。
この後、ダンジョンボスみたいな、強い魔物が出てこないですかね。
でも闇グモの役割とか考えると、これで終わりのような気もするんですよね。
ルルさんの戦闘欲からすると、まだ前菜が終わったくらいで、余計にお腹が空いたって状態ですよね。
どうしたらいいのかな。
そんなふうに途方に暮れていると、突然空洞内にしわがれた声が響いた。
「見事じゃ。わしのかわいい魔物たちをこれほど簡単に倒すとはのう。せっかくじゃし、最後にこのわしが相手をしてやろう。心してかかってくるが良い。」
あれっ、もしかしてダンジョン神様?
いやこの声は・・・・・。
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