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276.尻尾の色で個性を競っているそうです(モルモル:土中系土竜型)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週2回(月・木)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(276)

【アマレパークス編・地下都市ララピス】



276.尻尾の色で個性を競っているそうです(モルモル:土中系土竜型)



ティティンさんが案内してくれたのは、街外れにある大きな広場だった。

広場と言っても整地されている訳ではなく、建物も見当たらない。

ただ、所々に人が集まって何やら作業をしている。


「ティティンさん、ここが採掘場ですか?」

「そうだよ。」


一応確認してみると、ティティンさんから肯定の返事が返って来た。

やはりここが目的地らしい。


僕はなんとなく、坑道が迷路のように伸びてる採掘場をイメージしてたのでちょっと意外だった。

どうやらここは露天掘りタイプのようだ。

ララピスは地下都市なので、『露天掘り』という言葉が適切なのかどうかは微妙だけど。


「てっきり採掘場は洞窟の中にあるのかと思ってました。」

「ああ、そういうタイプの採掘場もあるよ。でもモルモルを観察するにはこっちの方がいいと思ってね。」


ティティンさんはそう言いながら、一番近くで作業している人たちの方へ向かって歩き始めた。

僕たちも足元に気をつけながら、ティティンさんの後を追う。


「もぐもぐ、ティティン師匠、もぐもぐ、あのチョロチョロしてるのが、もぐもぐ、モルモルですか?」


リベルさんがパニーニを食べながらティティンさんに質問している。

パニーニは、一度は全部取り上げて空間収納に入れたんだけど、リベルさんがあまりにも「ボクのパン、ボクのパン」と騒ぐので、根負けして1個ずつ渡すことにした。

現在は3個目を食べている。


それにしてもリベルさん、口の中に食べ物を入れたまま喋るのはどうなの。

自分が師匠と呼んでるティティンさんに対して失礼じゃないのかな。

まあ、これが『天衣無縫』クオリティと言ってしまえばそれまでだけど。

いや『天衣無縫』はリベルさんにはカッコ良すぎるな。

『ダメダメ勇者』クオリティでいいや。


「勇者様、ご指摘の通り、作業員の足元に見え隠れしているのがモルモルです。ここの採掘場ではテイマーと数名の採掘士がセットで作業を行なっております。」


ティティンさん、相変わらず僕以外に対しては言葉遣いが違うんだよね。

ルルさんに対して丁寧なのはいいとして、リベルさんに敬語で僕にタメ口なのは、なんか納得がいかない。

まあタメ口の方が話しやすいからいいんだけど。


でもモルモル、魔物なのにちっちゃいな。

見た目もモグラというよりリスみたいな感じ。

動きも意外に素早いし。

あと、体毛が長くてもふもふしていて長い尻尾シッポがある。

それにあの尻尾・・・・・


「ティティンさん、モルモルの尻尾、個体によって色が違うのはなぜですか?」

「ああ、あれはテイマーのこだわりだな。」

「テイマーのこだわり?」

「そうだ。好みの色、独自の色を出すのにみんな苦心してるよ。」

「もしかして、染めてたりするんですか?」

「いや違う。モルモルは鉱石食なんだが、食べさせる鉱石の組み合わせによって尻尾の色が変わるんだよ。」


ティティンさんの説明によると、モルモルを従魔に持つテイマーたちの間では、尻尾の色に関する研究が流行っているとのこと。

ほとんどのテイマーが独自の色作りに熱中していて、そのために様々な鉱石を買い集め、散財してしまうテイマーが後を絶たないとか。

尻尾の色を競う品評会まであるらしいので、その盛り上がりは相当なものなんだろう。


「尻尾の色でモルモルの能力が変わったりするんですか?」

「いや、能力に影響はないな。純粋にテイマーたちの趣味だ。」


尻尾の色で能力が変化するのかと思ったけど、そうではないらしい。

まあ前の前の世界でも錦鯉とかで似たようなことしてたしな。

自分の従魔に唯一無二の個性を持たせたいと思う気持ちは、分からないでもない。


そう言えば、うちのスラちゃんも鉱石食だったよね。

スラちゃんも食べる鉱石で体の色が変わったりするんだろうか。


そんなことを考えながら、すっかり気配を消して腕輪になりきっているスラちゃんに視線を向けると、



…リン(主人)、リン(擬態)、リン(あるから)…



スラちゃんから控えめな感じで念話が届けられた。


そうだった。

『擬態』があればどんな色にもなれるよね。

やっぱり僕の思考はどこか抜けてるな。

ごめんね、スラちゃん。



…リン(主人)、リン(無問題)…



心の中でスラちゃんに謝ると、スラちゃんから気にしなくていいという意味の念話が返ってきた。


「もぐもぐ、ティティン師匠、もぐもぐ、ここ、もぐもぐ、ケラケラがいませんね、もぐもぐ。」


リベルさんが3個目のパニーニを食べ続けながら再び質問した。

礼儀はなってないけど、着眼点はなかなか鋭い。

確かにこの採掘場ではケラケラの姿が見当たらない。

事前説明ではケラケラとモルモルはセットだったはずだ。

地上にいればあの巨体を見逃すことはないので、地中に潜ってるんだろうか。


「勇者様、この採掘場は比較的浅い所に鉱石がありますので、ケラケラは使っておりません。モルモルが探知した場所を人力で掘る形になっております。」


ティティンさんが答えを返してくれた。


そういうことか。

だからこの採掘場を選んだんですね。

広々として見学しやすいし、洞窟タイプと違って明るいし、それにケラケラがいないのでモルモルだけに集中できますもんね。


「チェチェロ君、採掘中に申し訳ないが、ちょっといいかな?」


ティティンさんが作業中の集団に近づき、1人の男性に声をかけた。

チェチェロという名前らしい。

その男性の肩の上には1体のモルモルがちょこんと乗っている。


「ティティン様、何か御用でしょうか?」

「すまないが、君のモルモルを見せてもらっても構わないだろうか?」

「いいですよ。マーレ、おいで。」


チェチェロさんがそう声をかけると、肩の上のモルモルがちょこちょこと動いてチェチェロさんの腕の中に収まった。

やっぱり動きがリスみたいだ。

見た目的には、そこはかとなくモグラの面影が残ってるけど。


「はい、どーぞ。」


チェチェロさんは両手でマーレ(たぶんモルモルの名前)を持って、僕たちの前に差し出した。

普通は顔を前にして差し出すと思うんだけど、チェチェロさんはマーレの頭ではなく、お尻を僕たちの方に向けている。


これはあれだな。

「モルモルを見せて」と言われたら、まず尻尾を見せるのが常識になってるんだろうな。

それくらい尻尾自慢というか、モルモルと言えば尻尾、尻尾と言えばモルモルって感じなんだろう。


「ほぉ、これは見事な青だな。色艶もいいし、不思議な透明感もある。」

「そうでしょう、そうでしょう。さすがティティン様、お目が高い。海の色を目指して頑張ったんですよ。この透明感を出すのが大変で・・・・・」

「それはそれは・・・・・チェチェロ君、相当つぎ込んだな?」

「えっ、まあ・・・3ヶ月分ほど・・・」


うん、大好きな従魔のために3ヶ月分の給料くらい安いもの・・・・なのかな?

チェチェロさん、独身?

結婚してたら家庭内問題に発展するレベルの金額じゃない?

まあララピスのテイマーにとっては、これくらい普通なのかもしれないけど。


「あっ、ティティン様、今の話、妻には内緒にして下さいね。本当にお願いしますね。」


チェチェロさんがティティンさんに懇願してる。

どうやらチェチェロさん、既婚者だったようだ。

そして3ヶ月分の稼ぎをモルモルにつぎ込むのは、ララピスでも普通じゃないらしい。

前の前の世界で「婚約指輪は給料の3ヶ月分」って広告があったけど、結婚後に生活費の3ヶ月分を趣味に使うのはやっぱりやり過ぎだよね。


まあティティンさんは優秀な商人だし口が硬いとはと思うけど。


チェチェロさん、奥様にバレないことを心からお祈りしますね。

でもそのうちに絶対バレると思いますよ。

早めに告白して謝ったほうがいいんじゃないかな。

遅くなればなるほど深みにハマると思います。


ララピスにはきっと、『モルモル離婚』って言葉があるんじゃないかな。



読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は7月18日(木)です。

よろしくお願いします。

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