273.4刀流の凄いやつ(土中・水中・空中・陸上)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週2回(月・木)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(273)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
273.4刀流の凄いやつ(土中・水中・空中・陸上)
僕は、リベルさんの「ケラケラは美味しくない」発言を聞いて、すぐにケラケラに『魔物鑑定』をかけてみた。
【鑑定結果】
○モール・クリケ(mole cricke) ☆
系統 : 昆虫系オケラ型
通称 : 『ケラケラ』
体型 : 中型
体色 : 茶色・黒色
食性 : 草食・昆虫食
生息地: 土中
特徴 : 穴を掘る。
水の上を滑る。
空を飛ぶ。
凝固液を出す。
性格は大人しい。
可食(唐揚げ・佃煮が美味)
特技 : 掘削・水上移動・飛行・凝固
ケラケラの正式名は『モール・クリケ』というらしい。
予想通り『オケラ型』の魔物だ。
でも魔物の正式名称って、難しげな名前が多いよな。
これじゃ覚えにくいと思うんだけど。
そのせいか大抵の魔物は通称で呼ばれてるし。
正式名は前の世界の学術名みたいなものなのかもしれない。
それから通称って、誰が考えるんだろう。
初めは見た目とかで適当に呼んでて、そのうちに固定されるんだろうか。
国や地域によって呼び方や通称が異なる場合もあるのかな。
僕は魔物の名前の部分で少し考え込んでから、順次、鑑定情報に目を通していった。
そして特徴のところで、再び引っかかった。
ケラケラの特徴として『穴を掘る』は分かる。
事前に説明を受けてたし、昆虫のオケラも穴は掘る。
でも『水の上を滑る』?
さらに『空を飛ぶ』?
それってスリーウェイ(3刀流)ってこと?
土の中も、水の上も、空中も対応できるの?
いや、普通に陸上でもOKだからフォーウェイ(4刀流)か。
ケラケラ、優秀過ぎない?
僕は昆虫のオケラの生態を思い浮かべてみた。
しかし『穴を掘る』以外の情報は思い出せなかった。
どうやら僕は昆虫に詳しいタイプでなかったようだ。
いやそんなことより、今大事なのは特徴の最後の項目。
そこにははっきり『可食』と書かれている。
そしてその後にはおすすめの調理方法も。
「唐揚げ! 佃煮! しかも美味って!」
僕は思わず叫んでしまった。
その声にすかさずリベルさんが反応する。
「ウィンさん、唐揚げと佃煮あるんですか? どこにあるんですか? 早く出してください。」
「いえ、唐揚げも佃煮もありません。あっても出しません。それよりもリベルさん、ケラケラを食べたことがあるんですか?」
僕はリベルさんの要望を即座に却下して、逆に質問を返した。
唐揚げと佃煮なら炎系クエストの『COOK』で作れると思うけど、リベルさんのために作るつもりはない。
現在『食料庫ウィン』は休業中なので。
「唐揚げ・・・佃煮・・・食べたい・・・。ケラケラは、食べたことありますよ。」
リベルさんは唐揚げと佃煮に対する未練満載の表情のままで、それでも僕の質問には答えてくれた。
「どんな料理でした?」
「塩焼きっぽかったです。」
「それが美味しくなかったと?」
「はい、美味しくなかったです。虫っぽくて。全部食べましたけど。」
そりゃ、ケラケラは昆虫系の魔物だからね。
虫っぽくて当然だよね。
でもリベルさん、美味しくなくても一応全部食べるんですね。
それはマナーがいいのか、それとも食い意地が張ってるだけなのか。
まあ後者だと思うけど。
リベルさん情報だとケラケラの塩焼きはあまり美味しくないらしい。
でも鑑定情報だと唐揚げと佃煮なら美味しいと。
いや、この巨大な魔物で唐揚げとか佃煮とかできるのか。
細かく刻めばできなくはないか。
「ティティンさん、ケラケラって食べるんですか?」
僕がそう質問すると、ティティンさんはとても嫌そうな顔をした。
「ウィン君、従魔は食べないよ。」
「いえ、そういう意味ではなくて・・・野生のケラケラは食べるんですか?」
重ねてそう尋ねると、ティティンさんは嫌そうな表情のまましばらく考えてから答えを返してきた。
「食糧が尽きて餓死しそうになったら冒険者なら食べるかもしれないな。でもララピスでは普通は食べない。従魔として一般的な魔物だからね。みんな愛着があるんだよ。」
なるほど。
食べようと思えば食べられるけど、あえて食べたくはないってことですね。
僕も自分の従魔たちと同系統の魔物はちょっと抵抗があるし・・・。
あっでもウサくんの部下だった『カラード・ホーンラビット』は殲滅しちゃったな。
食べてはいないけど。
ウサくん、あの時は本当にごめんなさい。
そこまで考えて、僕は話題を変えることにした。
「ティティンさん、ケラケラの家作り、詳しく見せてもらってもいいですか?」
「もちろんだ。ほら、そこで石を食べてるだろう。」
僕は石の山の近くにいるケラケラに近づいて、じっくり観察することにした。
そのケラケラは、目の前にある石を次々に口の中に入れていく。
ガリ、ゴリという音が響いているので、強そうな顎で噛み砕いているんだろう。
あの口で噛みつかれたら、簡単に骨とか折れそう。
足とか腕とかだったら千切れるかも。
攻撃的な魔物じゃないみたいだけど、間違っても怒らせないようにしないとね。
フォーウェイ(4刀流)だから、どこへ逃げても追いかけて来そうだし。
ケラケラからの逃亡方法についてあれこれ考えつつ、ケラケラが石を食べるのを見ていると、ふと疑問点があることに気付いた。
あれっ、そう言えばケラケラの食性は「草食・昆虫食」だったはず。
「鉱石食」は無かったよね。
どうして石を食べてるんだろう。
「ティティンさん、ケラケラって石を食べるんですか?」
「あ、ごめんごめん、食べてるって言ったけど、本当に食べてるわけじゃないんだ。」
「じゃあ砕いてるだけですか?」
「そうだね。口の中で砕いて同時に凝固液と混ぜてるんだよ。」
「それがあの素材になるんですね。」
「その通り。」
しばらく見ていると、ケラケラが細かく砕いた石を吐き出し始めた。
確かに透明で粘着質っぽいものが絡まっている。
おそらくあれが『凝固液』なんだろう。
でも吐き出す量、ちょっと多くないか。
口の中に入る量は遥かに超えてるように見える。
これは想像だけど、ケラケラには消化器系の胃とは別に、『凝固液』専用の『凝固袋』みたいな器官があるんじゃないのかな。
口の中で噛み砕いた石をそこに溜めて、『凝固液』と混ぜてから吐き出してるんだと思う。
そうじゃないとあの量は説明つかないよね。
「ティティンさん、ケラケラが凝固液を出す仕組みってどうなってるんですか?」
「仕組み? 単にそういう能力があるってだけじゃないのか。」
「解剖して体内の構造を調べたりしないんですか?」
「解剖!? ウィン君、あのかわいいケラケラを解剖しろって言うのか?」
ティティンさんが驚きの声を上げ、信じられないものを見るような視線を僕に向けてきた。
ルルさんの視線も鋭く冷たいものになっている。
また何か間違えちゃったんだろうな。
ケラケラが絡むと、2人ともとても面倒くさい。
もう質問するの、やめようかな。
それにしても、そんな極悪人か人非人を見るような目で見るのは止めて下さい。
そんなにひどい事、言ってないと思うんだけど。
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