271.私の愛情の深さをその体に叩き込んでやる(婚約者?:ルル)
見つけて頂いてありがとうございます。
第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週2回(月・木)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(271)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
271.私の愛情の深さをその体に叩き込んでやる(婚約者?:ルル)
「豪華な部屋。着飾った女性たち。たくさんのご馳走。」
サイン様がリベルさんを占った結果だ。
サイン様は半ば呆れながらも、きちんと『占術』を行なってくれた。
そしてその結果を聞いたリベルさんは、
「豪華な部屋! たくさんのご馳走! 天国じゃないですか!」
と無邪気にはしゃいでいる。
「着飾った女性たち」の部分はスルーらしい。
リベルさん、嬉しいのは分かるけどちょっと抑えて。
テーブルの上に身を乗り出すのはやめて下さい。
サイン様が完全に引いちゃってるじゃないですか。
「いつですか? これいつ起こるんですか? 今日ですか? 明日ですか?」
だからいい加減に落ち着いて下さい。
詳細は分からないって説明受けたでしょう。
どうせアップルパイに夢中で聞いてなかったんだろうけど。
それに本人は無邪気に喜んでるけど、僕の直感的にはちょっと嫌な感じがする。
特に「着飾った女性たち」の部分が。
これって誰かがリベルさんにトラップを仕掛けるってことじゃないの?
まあリベルさんだから、「女性たち」に引っかかることはないだろうけど。
でも「ご馳走」には間違いなく引っかかるよね。
「ウィンさん、どこに行けばこのご馳走を食べられるんでしょう?」
「知りません。」
「早くたくさんのご馳走に出会いたいんですけど。」
「だから知りません。」
「早く行かないと誰かに食べられちゃうじゃないですか〜」
「・・・・・」
リベルさんのあまりの面倒くささに僕はうんざりしてきた
従魔たちの特訓を耐え抜いて多少見直してたんだけど、食べ物が絡むとどうしようもないな、この人。
「ダメ勇者、いい加減にしろ。昼ご飯抜きにするぞ。」
「ルル、うるさい。ウィンさんは、そんなことしない。」
「いや・・・リベルさんのお昼・・・抜こうかな。」
「ええ〜、ウィンさ〜ん、そんなぁ〜」
そんなグダグダな会話を3人でしていると、サイン様がルルさんに向かって声をかけてきた。
「聖女様、ウィン様と勇者様を見させて頂きましたので、聖女様もいかがですか?」
「ああ、見てもらおうか。」
「かしこまりました。では見させて頂きます。」
サイン様の提案にルルさんがすぐに頷いた。
これは意外だ。
ルルさんは『占術』とか、あんまり興味ないと思ってたんだけど。
そして僕とリベルさんはその結果に驚愕することになる。
「真っ白なドレスの聖女様。花が溢れる宴。演壇に立つ牧師様。」
・・・・・・・・・
「「ええ〜っ!!」」
しばらくの沈黙の後、僕とリベルさんが同時に叫んだ。
それって、どう考えても結婚式だよね。
ルルさんが結婚!?
そんなことって、あり得るんだろうか。
僕は女性に対して持つには失礼過ぎる感想を抱きながら、当然本人も驚いているだろうと思ってルルさんを見た。
しかし、
「何を驚いている?」
「いや、ルルさん、結婚式ですよ。どう考えてもルルさんが結婚するってことですよ。」
「だからそれのどこに驚く要素がある?」
「いや、まあ、ルルさんも、いつの日か結婚する可能性がないわけではないと、思わないでもないですけど・・・」
驚き過ぎたせいか、僕の言葉は迷路にはまり込んでしまったようにヨレヨレになっている。
一方のルルさんは、まったく動じた様子もなく、冷静な態度のままだ。
そしてルルさんの次の言葉に、僕の頭の中はさらに混乱した。
「婚約してるのだから、いずれ結婚するのは当たり前だろう。」
えっ?
婚約?
誰と?
いつの間に?
ルルさん、本当に結婚するの?
僕の頭の周りに『?』が飛び交う。
そんな怪訝そうな僕を見てルルさんが言葉を続ける。
「ウィン、何を恥ずかしがっている? 相手はウィンに決まってるだろう。結納の品もここにあるしな。」
ルルさんはそう言いながら両手に嵌めた真っ白なガントレットをガツンとぶつけて不敵に笑った。
恥ずかしがってる?
いやちょっと待って下さい。
その話ってそういう結論になってましたっけ。
ルルさんの記憶、捻じ曲がってませんか?
ミスリル製のガントレットは『結納の品』じゃなくて、『パーティーメンバーへのプレゼント』ということで決着してたような気がするんですが。
…うぃん殿、男は潔さが肝心でござる…
僕が自分の記憶を掘り起こしていると、いきなり目の前に大きな文字でメッセージが流れた。
「中の侍」さん、久しぶりに出てきたと思ったら、余計なことを表示しないでもらえます。
しかもなぜ今回だけ文字のサイズが大きいんですか。
ていうか、そんなこともできたんですね。
それにそもそも中の人たちはこれまでの流れを全て見てるでしょう。
僕とルルさんが婚約なんて展開、どこにもなかったって知ってるじゃないですか。
…他人の恋愛事なんて興味ねぇ、だそうでござる…
…りーだーに手ぇ出すんじゃないわよ、だそうでござる…
…正面突破あるのみ、だそうでござる…
…ラブコメは必要ない、だそうでござる…
僕の心の叫びに呼応してか、「中の侍」さんが立て続けにメッセージを表示してきた。
でもこれ、自分の言葉じゃないよね。
「中の侍」さん、伝言係にされちゃってます?
1つ目と2つ目は、「中のヒト」と「中の女性」ですよね。
3つ目と4つ目は誰なんですか?
中の人たちってまだ他にもいるんですね。
「ウィン様、余計なことをしてしまって申し訳ありません。」
僕が「中の侍」さんのメッセージに気を取られていると、サイン様が謝罪してきた。
僕は慌ててサイン様の謝罪を否定する。
「いえ、別にサイン様に非があるわけでは・・・」
「いえいえ、こういうことはお二人で育み成就させるべきもの。占術などで見て伝えるべきものではありませんでした。」
ああ〜、サイン様も何か勘違いしてるような。
でも完全に勘違いとも言い切れないところがなんとも・・・。
でもサイン様の占術の中で僕の姿は見えてないんだよね。
「サイン様、見えたのはルルさんと牧師様だけですか?」
「はいそうです。」
「ということは相手は僕じゃないかもしれませんよね。」
「ウィン様・・・・・それを聖女様ご本人の前でおっしゃるのはどうかと。」
あっ、しまった。
これって僕が完全に悪い男みたいなパターンになってない?
「私のことを疑うの?」とか、「私が浮気してるっていうの?」とか言われて恋人に泣かれる場面みたいな。
まあ、ルルさんに限って、そんな反応はありえないけど。
それに現時点でルルさんは恋人でもないし。
「ウィン、表に出ろ。私の愛情の深さをその体に叩き込んでやる。」
ルルさんは僕の言葉を聞いて、予想外の、いやある意味予想通りの反応を返してきた。
ルルさん、言ってることが意味不明です。
愛情は拳で叩き込むものじゃないと思います。
でも今回は僕の失言だと思うので、ちょっとくらい殴られても仕方ないかもしれません。
でも婚約者でも恋人でもないんだけどなぁ。
読んで頂いてありがとうございます。
徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。
誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。
ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。
ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。
ありがとうございます。
次回投稿は7月1日(月)です。
よろしくお願いします。




