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268.水晶を届けることになりました(サイン:先祖返り系エルフ)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週2回(月・木)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(268)

【アマレパークス編・地下都市ララピス】



268.水晶を届けることになりました(サイン:先祖返り系エルフ)



ティティンさんにララピスの郷土料理をご馳走になった次の朝、僕たちは地図を頼りにある場所を目指していた。


朝食は宿で済ませた。

昨夜調子に乗って食べ過ぎたので、朝は抜こうかと思ったんだけど、

約1名ものすごくうるさい人がいたので、みんなで食べることにした。

みんなと言っても、ジャコモさんとルカさんは帰ったので、ルルさんとリベルさんと僕の3人だけだ。


「ウィンさん、朝ごはんのオムレツ、フワフワでトロトロでとっても美味しかったですよね。」

「そうだね。バターも効いてて濃厚な味だったね。」

「あれも魔物料理だな。鳥系魔物の『ウズウズ』の卵だ。」


リベルさんと僕の会話にルルさんが補足説明を加える。

まだ昨夜の魔物料理の蘊蓄が続いているようだ。


「ルルさん、もしかしてその魔物の卵ってかなり小さくないですか?」

「いや普通だぞ。まあ大型種の卵に比べれば小さいがな。」


そうなのか。

名前からしてウズラかと思ったけど。

まあ、魔物のウズラは僕の感覚より大きいのかもしれない。


「ところでウィンさん、僕たちどこの屋台に向かってるんですか?」


食欲一筋のリベルさんがそんなことを聞いてきた。


リベルさん、朝ごはん食べたばかりでしょう。

オムレツ、5皿くらい食べたよね。

スープとサラダとパンも一緒に。

それにこれから行く所も説明したじゃないですか。

まあ、まったく耳に入ってなかったんだろうけど。


「屋台には行きません。『占いの館』に向かってます。」

「占いの館? 変わった名前のお店ですね。どんな料理を出してるんですか?」


もうリベルさんへの説明は放棄しよう。

言うだけ無駄だし、疲れるので。


僕たちがなぜ『占いの館』に向かっているかというと、昨夜ティティンさんにある事を頼まれたからだ。

それは次のような会話だった。



「ウィン君、コロロックの水晶種を討伐したってことは、ドロップ品に水晶があったと思うんだが・・・・・。」

「ええありましたよ。」


ドロップ品の水晶は確か11個あったはず。

水晶玉(小)10個と水晶玉(大)1個もあるけど、こちらは討伐クエストの報酬なので言わない方がいいかもしれない。


「可能であればそれを商人ギルドに納品してもらえないだろうか?」

「構いませんけど、納品依頼が出てるんですか?」

「そうなんだよ。実は水晶については常時納品依頼が出ていてね。それも水晶種のドロップ品限定で。」


『水晶種』のドロップ品限定?

確か『琥珀種』がドロップする琥珀が『琥珀酒』の材料になるんだったよね。

もしかして『水晶酒』とかもあるんだろうか。


「単なる興味ですけど、何に使うか訊いてもいいですか?」

「それは、その・・・・・」

「無理には話さなくていいですよ。依頼者の秘密保持とかもあるだろうし。」

「いや、そういう訳じゃないんだが・・・外部の人は信じてくれないことが多くてね。」


そこからのティティンさんの説明は、信じないどころか僕の好奇心を強く刺激する内容だった。


ここララピスには、先祖返り系のエルフの女性が1人住んでいるらしい。

職業は占術士。

これは自称ではなくて、人物鑑定にも表示される正規の職業とのこと。

水晶の常時納品依頼は彼女が出していて、どうやら占術を行う上で必要になるらしい。

ただ、水晶種のコロロックは滅多に出現しないため、最近ではドロップ品の水晶が手に入ることはほとんどないそうだ。


「その女性、名前はサイン様と言うんだが、先日妙な事をおっしゃってな。」

「妙なこと?」

「そうだ。『放浪者が大きな水晶玉を持って来る』と。」


『放浪者』?

なんか聞いたことがあるような。

あっ、それって僕の職業欄に表示されてるやつだ。

単に放浪してる人って意味かもしれないけど、占術士だけに占いで僕の職業が見えたのかもしれない。


「そのサイン様の占いってよく当たるんですか?」

「当たる。」

「どれくらい?」

「100%だ。」


100%?

それってもう占いの域じゃないんじゃないの。

未来視とか、予言とか、そういうジャンルだと思うんだけど。


「もちろん表現が漠然としているので、それらしいことを言ってるだけじゃないかと疑う者もいる。外部から来た人たちは特にな。しかし私の経験から言うと、その漠然とした言葉が結果的にピタリと現実の出来事にハマるんだ。」


ティティンさんの表情は真剣だった。

それくらい何度もサイン様の凄さを経験したんだろう。

僕は改めて今回のサイン様の言葉をティティンさんに確認してみた。


「もう一度、サイン様の言葉を教えてもらえますか?」

「『放浪者が大きな水晶玉を持って来る』だ。『放浪者』も『大きな水晶玉』も現時点では意味がよく分からないがな。」


いや、僕にはよく分かる。

『放浪者』は僕のことで、『大きな水晶玉』は討伐クエスト報酬の水晶玉(大)のことだ。


ということは、サイン様は僕がララピスに来ること、僕の職業が『放浪者』であること、僕が水晶種の変異体を討伐すること、僕に討伐クエストがあること、その報酬が水晶玉(大)であること、これらすべてを予見していたことになる。

これは・・・・・半端ない能力だ。


「ティティンさん、お願いがあります。」

「なんだろう、ウィン君?」

「納品の手続きはきちんと商人ギルドを通しますので、僕が直接サイン様に水晶を届けても構いませんか?」

「もちろん構わない。むしろそうしてくれると助かるよ。実は私はサイン様がちょっと苦手でね。」

「どうしてですか?」

「あの目で見つめられると、どうしてもいたたまれなくなるんだよ。心の中をすべて見透かされてる気がしてね。」


ティティンさんはそう言いながら左手の人差し指を額に当てて、ため息をひとつこぼした。

商人だけに、駆け引きの通用しない相手はやりにくいのかもしれない。


「じゃあ、早速明日行ってもいいですか?」

「もちろんだ。依頼の達成は早いに越したことはないからね。サイン様にはこちらか連絡を入れておこう。」


ということで、僕たちはサイン様の『占いの館』に向かうことになっった。

大きな水晶玉を携えて。



読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は6月17日(月)です。

よろしくお願いします。

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