265.ケラケラとモルモル(山エルフの従魔たち)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週2回(月・木)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(265)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
265.ケラケラとモルモル(山エルフの従魔たち)
「この街の建物の素材は何で出来てるんですか?」
僕たちはティティンさんお勧めのお店『土竜亭』でテーブルを囲んでいる。
メンバーは結局、ルカさんを含めて6人。
ティティンさんとルカさんの口論は、食事代を折半するという条件で落ち着いたようだ。
「ああ、あれは岩石を一度砕いて、特殊な凝固液で固めたものだ。」
僕の質問にティティンさんが答えてくれる。
ダンジョン前からこのお店までは、ティティンさんの案内で徒歩でやって来た。
僕とルルさんの転移で移動しても良かったんだけど、せっかくだから街の様子を見物しながら歩くことにした。
その時目にした建物の素材が気になったので冒頭の質問に至ったわけだ。
「ほとんどの建物が同じ素材を使ってるんですね。」
「そうだな。ウィン君、この街は採掘がメインの産業だから岩石クズが大量に出るんだ。外の山には木もあるが、それなりに大きな木を探して、それを切り倒してここまで運ぶのは手間だからね。」
なるほど。
近くで手に入るものを有効活用してると。
でもひとつ気になる単語が・・・・・。
「ティティンさん、特殊な凝固液って何ですか?」
「うん? ああ、ケラケラの凝固液だな。」
「ケラケラ?」
「ああそうか。ウィン君はあまり常識がないんだったな。ルカ君から聞いていたのに忘れていたよ。」
なんですと。
僕に常識がない?
ルカさん、そんなことをティティンさんに言ったんですか?
「ウィン、事実だろう。それだけ異常な能力があるのに、人が当たり前に知ってることを知らないじゃないか。」
僕が思わずルカさんを睨むと、ルカさんは悪びれずにそう言った。
でもルカさん、僕がこの世界のことで知らないことが多いのは事実だけど、「常識がない」って言い方はどうなんですかね。
それだと僕が礼儀知らずみたいに聞こえるじゃないですか。
「ウィン君、悪い悪い。別に君を貶す意味で言ったんじゃないんだ。ウィン君はどこか遠方から来たらしいな。だからこの辺りのことには詳しくないとルカ君から聞いていてね。」
ティティンさんがフォローを入れてくれたけど、ルカさん、絶対に悪気があって「常識がない」って言葉を使いましたよね。
覚えておいてくださいね。
僕は根に持つタイプなんですよ。
「それで、ケラケラって何ですか? 皆さんは当たり前に知ってるみたいですけど。」
「ウィン君、そう拗ねるな。ケラケラというのはな、この辺では珍しくない魔物のことだ。」
「魔物? 魔物から凝固液が取れるんですか?」
「少し違うな。ウィン君はエルフ族にテイマーが多いということは知ってるか。」
「はい知ってます。」
「ケラケラは山エルフのテイマーたちが好んで従魔にする魔物なんだ。穴を掘る能力が高くてね。採掘士たちが重宝するんだよ。」
なるほど。
でもそれと凝固液にどんな関係があるんだろう?
「ケラケラはな、土中に穴を掘って巣にする。その穴の壁を固めるために凝固液を出すんだよ。」
「土中の穴に住むってことは、モグラの魔物ですか?」
「それはモルモルだ。ケラケラは昆虫系だ。」
モルモル?
なんか頭が混乱してきたぞ。
モルモルがモグラの魔物で、ケラケラは昆虫?
穴を掘る昆虫でケラケラ・・・・・もしかしてオケラの魔物か。
「昆虫系の魔物って小さそうですけど、役に立つんですか?」
「ウィン君、ケラケラは大きいぞ。むしろ小さいのはモルモルだ。」
モグラが小さくてオケラが大きい?
普通は逆じゃないのか。
まあ、前の世界の常識で考えちゃいけないし、この世界でも普通の生物と魔物は別物だからな。
「この街で建物を建てる時には、たいていテイマーがケラケラを使って手伝うんだよ。」
「後で、建築現場を見てみたいんですが。」
「了解した。明日にでも案内しよう。」
ティティンさんと現場視察の約束をしてから僕は質問を続けることにした。
「山エルフのテイマーは、ケラケラかモルモルを従魔にしてる人が多いんですよね。」
「採掘に関わるテイマーはだいたいそうだな。もちろん、個人の好みなので他にもいろいろいるが。外で狩猟をするテイマーは、狼系や猛禽系を従魔にしてるな。」
そりゃそうだよな。
実利だけじゃなくて趣味趣向ってものもあるからね。
『もふもふ大好き』とか、『スライムLOVE』とか、『絶対爬虫類』とか。
あっ、そう言えばうちの子達の中に爬虫類系はいないな。
あれっ海竜は爬虫類じゃないよね?
まあリーたんは、僕の従魔じゃないけど。
「モルモルは小さいと聞きましたけど、どれくらいですか?」
「普通のモグラと同じくらいだな。これくらいだ。」
ティティンさんはそう言いながら、両手でモルモルのサイズを示してくれた。
僕が普通のモグラの大きさを知らないかもしれないと思ったのだろう。
それは子犬サイズで、僕が知ってるモグラと同じくらいだった。
「モルモルも穴掘り役ですか?」
「穴を掘るのも得意だが、どちらかというと鉱物探知役だな。」
「探知能力があるんですね。」
「そうだ。モルモルが鉱物を探して、ケラケラがそこまで穴を掘る。モルモルの穴だと小さ過ぎて人が通れないからね。」
モルモルの穴は小さ過ぎて人が通れない?
ということは、ケラケラの穴は人が通れるってこと?
ケラケラってそんなに大きいの?
「ちなみにケラケラは大きい個体だと人より大きいんだよ。」
ティティンさんが僕の表情を読んで説明を付け足した。
人より大きいって・・・・・
熊サイズのオケラって、ちょっと怖くないですか。
そんなのが突然目の前に現れたら、僕なら絶対に逃げ出しますよ。
まあ従魔だから大丈夫なんだろうけど。
「ケラケラは元々とても大人しい魔物なので、心配はいらないよ。」
ティティンさんが笑顔でさらに付け足した。
もう心の中を読まれるのはデフォルトになりつつあるな。
親しい人にも初対面の人にも簡単に読まれてる。
これって、僕の表情や態度でバレるというより、僕の『念話』の能力が漏れ出しちゃってるんじゃないだろうか。
「ウィン殿、情報収集に余念がないのは素晴らしいことじゃが、料理が冷める前に食事を始めた方が良いじゃろう。リベル殿が待ちきれない様子ゆえ。」
ジャコモさんに言われてテーブルの上を見ると、既に料理が並べられていた。
リベルさん、勝手に食べ始めないなんて成長したね。
そう思って、リベルさんを見ると、隣のルルさんがリベルさんを羽交締めにしていた。
リベルさん、『ダメ勇者』の称号、『ダメダメ勇者』に強制進化させちゃいますよ。
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