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264.『琥珀酒』は貴重品のようです(『琥珀』+『火酒』)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週2回(月・木)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(264)

【アマレパークス編・地下都市ララピス】



264.『琥珀酒』は貴重品のようです(『琥珀』+『火酒』)



「ウィン、それはな、『ツチオニ』と読むんだ。」


僕とティティンさんの無言のやり取りを見て、察しのいいルカさんがそう教えてくれた。

僕の疑問顔とティティンさんの睨み顔で内容を読み取れるなんて、ルカさんの洞察力も侮れない。


ルルさんが『筋肉執事』とか呼ぶもんだから、どうしても脳筋タイプに見えてしまうんだけど・・・・・。

ルカさん、これでも商人ギルド・アマレ本部のギルド長だからね。


「ツチオニ!」


僕はルカさんの言葉を聞いて、思わず大きな声で叫んでしまった。

『旋風の槌鬼』という称号の字面自体、ティティンさんの優雅な外見に似合わないと思ってたけど、『ツチオニ』という音感はさらにミスマッチに感じる。


「ルカ君、後でハンマーでお仕置きさせてもらうからね。」


一方、読み方をバラされたティティンさんは、ルカさんのことをジロリと睨んで、低音ヴォイスでお仕置き宣言。

それにしてもハンマーでお仕置きって・・・・・ルカさん、どんなことになっちゃうんだろうか。


「でもルカさん、ティティンさんに『鬼』って・・・イメージが合いませんよね。」

「はっはっはっ、ウィン、こいつの普段の見た目に騙されちゃいけない。魔物相手にハンマーを振り回す様を見た日にゃ、震えあがっちまうからよ。」

「それほどなんですか? でもティティンさんって商人ですよね。」

「ティティンは元冒険者だ。『旋風の槌鬼』はその頃からの称号だな。ティティンは商人としては遅咲きだからな。」


そうなんですね。

だからジャコモさんと2歳しか違わないのに、一方は商人ギルド連合会の副会長まで務め上げ、一方はまだ支部のギルド長なのか。

まあ、ジャコモさんの域に達するには経験や年数だけじゃ無理かもしれないけど。


「フォッフォッフォッ、誰しも若い頃には黒歴史があるもんじゃ。そんなことよりコロロック討伐も済んだことじゃし、商人ギルドとしての報酬の話をせんとのう、ティティン殿?」

「そうでした。ではウィン君、報酬についてだけど事前に確定していなかったので事後交渉ということになる。ここまで迅速に対処してくれたので出し惜しみはしないが、何か欲しいものはあるか?」


そうでしたね。

報酬未定でした。

これって、冒険者パーティーのリーダーとしては失格だよな。


でもどうしても、ダンジョンとか魔物への興味が先走ってしまう。

うちのパーティーメンバー、報酬とかあんまり気にしないし。

ルルさんは戦えればいいし、リベルさんは食べ物があればいいし、僕は新しい体験ができればいい。

当面の必要な資金は、『七色ワームの洞窟』で稼いじゃったからね。


さて、報酬は何がいいかな。

ここララピスで欲しいものというと・・・・・


「琥珀酒って、もらえたりします?」


僕は少し考えた後でそう答えた。


以前、この世界のお酒を集めようって決めた気がするけど、すっかり忘れてた。

ミエーレさんから『花酒』を樽買いしたのが最後かも。

『琥珀酒』はダンジョンで10本手に入ったけど、可能ならもう少し欲しいところだよね。


「琥珀酒ですか。ウィン君、さすがにいいところを突いてくるね。ないことはないけど、希少な品ではあるんですよね。」

「フォッフォッフォッ、ウィン殿、目の付け所が既に大商人ですのう。超高級品ではないが誰もが欲しがる商品。しかも品薄。こういうものが一番利益になるでのう。金銭的のみならず交渉材料としてものう。」


僕の答えにティティンさんとジャコモさんが反応する。

でも希少品なのか。

既に10本持ってるけど。

僕は『琥珀酒』についてもう少し質問してみることにした。


「琥珀酒って、コロロックがドロップしたりしません?」

「聞いたことはないな。琥珀種のコロロックがドロップするのは、基本的に琥珀だからね。」


あっそうか。

勘違いしてた。

『琥珀酒』はドロップ品じゃなくて討伐クエストの報酬だった。


「ちなみにウィン君は琥珀酒の作り方って知ってる?」

「いえ、知りません。」


僕がそう答えるとティティンさんが作り方を説明してくれた。


『琥珀酒』は簡単に言うと、『火酒』に『琥珀』を漬け込んで作るらしい。

ただし、『火酒』はドワーフが作る特別なものが必要で、その作り方は酒造家の秘伝とのこと。

そして『琥珀』は、普通の琥珀ではなくコロロックの『琥珀種』のドロップ品に限るそうだ。


「琥珀種のコロロック自体が滅多に出現しないため、琥珀酒は幻の酒扱いになってるんだ。」


ティティンさんの言葉を聞いて僕は決意した。

『琥珀酒』を10本も持ってることは、絶対に内緒にしようと。


「じゃあ、琥珀酒を報酬にするのは無理ですね。」

「いや、そういう訳にも行かない。ギルドの『貴重な』ストックの中から、『なんとかして』数本・・・・・1本で勘弁してもらえるか?」


ティティンさん、そんなに『貴重な』とか『なんとかして』の部分を強調されたら、素直に受け取れないじゃないですか。

まあ、他のものでもいいんですけど。

特に『琥珀酒』にこだわってる訳でもないし。

内緒だけど既に10本持ってるんで。


「ティティンさん、僕も無理を言うつもりはありませんので、報酬は別のものにしたいと思います。」

「本当か? しかしそれでは申し訳ないが・・・・・別の報酬は何がいい?」


ティティンさんは、あっさり僕の提案を受け入れた。

『琥珀酒』は本当に出したくなかったらしい。

商人ギルドが持っているストックも、かなり限られているのかもしれない。


「そうですね。この街の観光案内をお願いします。できるだけいろんなものを見てみたい。もちろん、街の秘匿事項に触れるものは除外して頂いて構いませんので。」

「そんなことでいいのか。了解した。この街での宿泊、食事、その他の滞在費用をギルドで負担させてもらおう。」

「ウィン殿、押し所、引き際、恩の売り方、利益の確保、どれも天晴れじゃのう。」


ジャコモさん、いちいち商人目線で合いの手を入れるの、やめてもらえませんか。

いくら褒められても、その気になって商人ギルドに就職したりしませんからね。


それからティティンさん、食事費用まで面倒見ると言ったのは失言だったと思います。

こちらには『はらぺこ勇者』がいますからね。

この街の食糧、食べ尽くされても知りませんから。


「ウィンさん、報酬決まったみたいだし、早速街へ行きましょう。『食い倒れ』に挑戦です。」


ほら、今まで興味なさそうに突っ立てた『はらぺこ勇者』が、はしゃぎ出したじゃないですか。

街中の屋台から食事処まで、食べ歩く気満々ですよ。

まあ、宿の食事以外はちゃんとこちらで料金払いますけどね。


それにしてもリベルさん、「食い倒れ」なんて言葉、どこで仕入れたのかな。

前世は西の方の出身なのか。

まあ転生してるかどうかは知らないけど。

でもリベルさん、「食い倒れ」は挑戦するものじゃないと思うよ。


「ウィン君、とりあえず今日の夕食は私の親しい店に招待させてくれないか。聖女様と勇者様はもちろん、ジャコモ殿もご一緒に。」

「これはこれは、ありがたいのう。もちろん御相伴に預からせて頂きますぞ。」


ジャコモさんが揉み手をしながら、食事会参加を承諾した。

しかしその隣で納得していない人が一人。


「おいティティン、なぜそこに俺の名前がない。」

「ルカ君は、アマレに帰るんじゃないのか?」

「ウィンは俺の紹介だろう。俺だけ仲間はずれにするんじゃない。」


ティティンさん、どうやらまだ『称号』の読み方をばらされたことを根に持ってるみたいだ。

でもルカさんもギルド長としての仕事は大丈夫なんだろうか。

ジャコモさんには、「コロンの商人ギルドは暇なのか?」って言ってたくせに、自分のところ(商人ギルド・アマレ本部)はほっといていいの?


「ルカ君、君は参加するとしても接待する側だ。料金は折半で出してもらう。」

「俺はアマレからわざわざ応援に来てやったんだぞ。」

「ウィン君にお願いしただけだろう。それにアマレ本部のギルド長はアマレパークスの商人ギルド全体のトップだ。全額出してもらってもいいんだぞ。」


ギルド長同士の言葉による攻防が続いてる。

そしてもう一方では、


「ウィンさん、食事、楽しみですね。ララピスの名物ってなんでしょうね。メニュー全種類食べてみようかな。」

「リベル、勇者としての矜持はないのか。少しは遠慮しろ。そんなだからダメ勇者と呼ばれるんだ。」

「ルル、うるさい。ルル以外には呼ばれてない。」

「そんなことはない、みんなそう呼んでる。」

「みんなって誰だ! ボクは呼ばれたことない!」

「本人の前では言わないだけだ。」


ルルさん、リベルさん、子供のケンカですか。

あとリベルさん、『ダメ勇者』って既に称号になっちゃってるんで、たぶん他の人も呼んでると思います。

悪意を込めてか、親しみを込めてかは、僕には判断できませんが。


「それでは、ウィン殿、お店に参りましょうかのう。」

「ジャコモさん、場所、知ってるんですか?」

「もちろんですじゃ。各ギルド長御用達のお店の把握は基本ですのでのう。」


うん、間違いなく『ジャコモさんの基本』であって普通の商人の基本ではないような気がする。

まあ、どっちでも気にしないけど。


ティティンさんとルカさん、ルルさんとリベルさんがまだそれぞれに言い合いをしている。

なんだか騒々しいけど、まあ楽しそうでいいか。

でも僕としては早くお店に移動したいんだけど。

さすがにお腹も空いたてきたし、続きは食べながらやってくれないかな。

僕とジャコモさんだけ先に転移しちゃいますよ。





読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は6月3日(月)です。

よろしくお願いします。

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