245.ヒールは空腹には効かないようです(称号ラッシュ:称号神)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(245)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
245.ヒールは空腹には効かないようです(称号ラッシュ:称号神)
「中の侍」さんの説明を要約するとこうだ。
リベルさんは『庭』で従魔たちに徹底的にしごかれていた。
朝も昼も夜も。
食事とわずかな睡眠時間以外は、訓練に次ぐ訓練の毎日だった。
それは、「中の人」たちから見ても、「ちょっとやり過ぎじゃないか」というレベルだったらしい。
最初はだらけていたリベルさんも、さすがに生命の危機を感じて本気を出し始めた。
必死で逃げ回り、防御し、時々反撃するようになった。
まあ反撃と言っても、相変わらず相手を傷つけるような攻撃はできなかったみたいだけど。
従魔たちの訓練は多岐に渡った。
7人がそれぞれの特技を活かして攻撃するだけでなく、どこから集めてきたのか、多種多様な魔物たちをリベルさんにけしかける。
リベルさんは何度もボロボロになって倒れたけど、その度にウサくんが『ヒール』で復活させたとのこと。
うん、永遠に続く『地獄めぐり』だね。
猛特訓の無限ループなんて嫌すぎる。
しかし、その内にリベルさんの中で何かが目覚めたらしい。
それまではただ能力頼みの対応だったものが、相手によって工夫するようになり、応用技を編み出すようになっていった。
どうやら新技は『光縛り』の型だけじゃなく、攻撃用のものもあるようだ。
そしてある時点からリベルさんは、従魔たちを師と仰ぎ、積極的に自分を鍛え始めたという。
あのやさぐれて投げやりになってたリベルさんをやる気にさせて、スーパー・リベルさんに進化させるなんて・・・・・。
『従魔ブートキャンプ』恐るべし。
従魔たちの鬼教官ぶりにボクが震え上がっていると、「中の侍」さんが最後に言葉を付け足した。
…そしていつの間にか、りべる殿に新しい称号が生えていたでござる…
新しい称号?
…左様にござる。それが『従魔の弟子』でござる…
そういうことか。
てっきり新しい称号が付くなら『はらぺこ勇者』の方だと思ってたのに。
…うぃん殿、それは既に生えているでござるよ…
えっ、本当に?
ちょっとリベルさんの称号だけ確認したりできる?
…『人物鑑定』の部分表示でござるな。了解でござる…
【人物鑑定】
リベル : 勇者
称号 : 『光の勇者』『捕縛の勇者』『ダメ勇者』『はらぺこ勇者』
『従魔の弟子』
おお、リベルさん、称号が5つになってる。
この世界、意外と簡単に称号が増えるんだね。
さすがに自称の『スーパー・リベル』はまだ入ってないけど。
でもこれ、誰が付けてるんだろう?
『称号神』とかいるのかな?
でも確か称号が付いても特別な効果はないんだったっけ?
…うぃん殿、称号持ちはそんなに多くはないでござる。常人離れした特殊性が認められた者にのみ付与されるでござる。特別な効果がないのはその通りでござるが・・・・・神については、のーこめんとでご容赦くだされ…
そういうものなんだ。
周りに称号持ちばかりいるから感覚が麻痺してるかも。
神については、「中の人』たちはしゃべれないのかな。
まあ特別興味があるわけでもないし、構わないけど。
あっそうだ。
申し訳ないけど、ルルさんの称号も表示してくれる?
…お安い御用でござる…
【人物鑑定】
ルル : 聖女
称号 : 『孤高の聖女』『鋼の拳闘士』『戦闘狂の聖女』
『瞬殺の天使』
やっぱり。
ルルさんの称号も2つから4つに増えてる。
『戦闘狂の聖女』は僕のせいで、『瞬殺の天使』は格闘大会のせいだろう。
でもルルさんが使う『ダメ勇者』はちゃんとリベルさんの称号になってるのに、リベルさんが使う『バカ聖女』はルルさんの称号になってない。
そこは『称号神』の忖度なのか。
まあそんな神様がいればの話だけど。
そこまで考えて僕はとても嫌な予感がした。
この流れは当然・・・・・自分にも還ってくるよね。
今まで自分自身の鑑定ってしたことないけど、できるのかな?
コロンの冒険者ギルドで見てもらった時は、称号は無かったはずだけど。
「中の侍」さん、もしかして僕の称号とかも表示できたりする?
…もちろんでござる…
【人物鑑定】
ウィン : 放浪者
称号 : 『異世界の賢者』『異空間の創造主』『聖女の相方』
『白鯨を継ぐ者』『海竜の保護者』『九尾を魅了する者』
『勇者の飼い主』『神テイマー』『七色魔法の使い手』
『ポンポン』『青の格闘士』『爆砕の狙撃手』『溶岩使い』
『武神を倒す者』
(その他検討中・・・by 称号神)
すみません。
もう2度と表示しなくていいです。
『聖女の相方』とか、『勇者の飼い主』とか、いろいろ突っ込みたいところですが、もういいです。
それに(その他検討中・・・by 称号神)って、やっぱり『称号神』がいるんですか?
「中の人」たちが面白がってやってるわけじゃないよね。
『武神を倒す者』なんて称号、武神様からクレームが入りますよ。
『称号神』vs『武神』で神界戦争が勃発しますよ。
あと・・・『ポンポン』って・・・・・
とにかく、これ以上他の称号を検討するのは止めて下さい。
好奇心に負けてエゴサーチして落ち込む人の気持ちがよく理解できた。
別にディスられたり、個人情報を晒されたりしてるわけじゃないけど、他の人に見られたら恥ずかし過ぎる。
だってこれ、『人物鑑定』で見えちゃうんだよね。
よし、すべて忘れて、気持ちを入れ替えて、ララピス訪問に専念しよう。
せっかくモノリリスたちが整列して道を示してくれてるんだし。
ルルさん、さあ行きましょう。
「アレは、あのままでいいのか?」
僕が内面の葛藤から現実世界に復帰すると、ルルさんがある方向を指差しながらそう言ってきた。
そしてその方向を見ると、リベルさんが地面に倒れていた。
「リベルさん! ルルさん、何があったんですか?」
「分からん。」
僕は慌ててリベルさんが倒れている場所まで駆け寄った。
そしてすぐに『ヒール』をかけた。
しかし、リベルさんはぐったりしたままだ。
『ヒール』が効かない。
どういうことだろう?
危なげなくモノリリスたちを倒してたはずなのに、最後の最後で何か究極の反撃を受けてしまったんだろうか。
まったく気付かなかったけど・・・・・。
「ウ・・・ウゥ・・・・・、ウィン・・・さん。」
リベルさんの意識が戻り、かろうじて僕の名前を読んだ。
僕はリベルさんに問いかける。
「リベルさん、大丈夫ですか? 何か特殊な攻撃を受けたんですか? ヒールが効かないみたいなんです。どうすればいいんでしょう?」
僕が矢継ぎ早に声をかけると、倒れたままのリベルさんが、うっすらと目を開けて切れ切れに答えた。
「ウィン・・・さん、串焼きを・・・ください。お腹が・・・空きました。」
「・・・・・・・・・・」
『ヒール』は空腹には効かないようです。
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