表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

243/333

243.勇者が本気を見せるようです(光縛り一の型:光蔓))

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(243)

【アマレパークス編・地下都市ララピス】



243.勇者が本気を見せるようです(光縛り一の型:光蔓)



その変化は突然に起こった。

リベルさんが『棒の魔物』の5メートル圏内に入ったくらいのタイミングだった。


カシャン、カシャン、カシャン、カシャン。


金属の棒の表面に複雑な曲線の亀裂が入り、金属同士が擦れる軽い音を響かせながら、『棒の魔物』が変形した。

そして目の前に金属のパーツでできた一体の人形が出現した。


その人形は直立の状態から上半身を折り曲げ、リベルさんに向かって一礼した。

そこから腰を落として右足を引き、両手を上げてファイティングポーズを取った。


なるほど。

戦いの前に一礼する魔物なんて初めて見た。

確かに礼儀正しい。


『棒の魔物』、改め『金属人形』はファイティングポーズで一瞬止まった後、素早い足捌きでリベルさんに迫った。

一方のリベルさんは、いつの間にか豪華な装飾が施された剣を両手で構えている。

あれはおそらく『勇者の剣』だろう。


リベルさん、『光衣』を発動してないけど大丈夫かな。

金属の拳を喰らうと、ダメージが大きそうだけど。


しかしそんな心配は無用とばかりに、リベルさんは『金属人形』の攻撃を体術と剣を駆使して捌いていった。

やる気を失っていた時の動きとは見違える程、無駄なく正確な戦い方だ。


しばらく『金属人形』が攻めリベルさんが守るターンが続いた後、満を持してって感じでリベルさんが攻撃に出た。

『金属人形』がバランスを崩した一瞬の隙をついて、立て続けに剣を4度振り抜く。

その剣閃は見事に『金属人形』の四肢の関節を捉え、切り砕いた。

両手両足を失った『金属人形』は、壊れた玩具のようにその場に崩れ落ちた。


凄いじゃないですか。

リベルさんがまともに攻撃するの、初めて見たかも。

元々こんなにレベルが高いのか、従魔たちの特訓のおかげなのかは分からないけど、自分のことをスーパー・リベルと豪語するだけのことはある。

まあ『金属人形』は血を流さないようなので、リベルさんでも攻撃できるのかもしれないけど。


1体目の『金属人形』は撃破した。

次は何が起こるんだろう?

そう思って状況を見守っていると、崩れ落ちた『金属人形』があっという間に修復して、再び立ち上がった。


修復機能付き?

これってキリがなくない?

まだ後ろに『棒の魔物』がいっぱい控えてるし。


そんなことを危惧していると、立ち上がった『金属人形』が姿勢を正し、リベルさんに深く一礼してから脇に退いた。

そしてその場で金属の棒に戻った。


何だろう、この礼儀正し過ぎる魔物は。

変貌したリベルさんにも驚いたけど、この魔物の態度の方がもっと驚愕に値するかも。

「礼に始まり礼に終わる」なんて、人間だってそこまでできる人は少ない。

リベルさんなんて、始まりも終わりも礼を返してないし。


リベルさん、礼儀正しさでは魔物に完敗してるなとか思っていると、今度は別の2体の『棒の魔物』が変形を開始し、金属人形の姿になった。

新しい2体も礼儀正しく一礼してからファイティングポーズを取り、リベルさんに向かって挑んでいく。


次は2体と同時に戦うのか。

リベルさん、大丈夫かな。

まあ、さっきの動きを見るとまだまだ余裕がありそうだったけど。


2体の『金属人形』は、それぞれが別々に戦うのではなく、かなり巧妙な連携攻撃を見せた。

しかしリベルさんは受けに回りながらも、軽々とその連携攻撃を捌き続ける。


あのリベルさんが優雅に見えるなんて・・・・・。

こんなことがあっていいんだろうか。

従魔たちのブートキャンプの効果・・・高過ぎるんじゃないの?


リベルさんの動きを追っていると、リベルさんはあっさりと2体の『金属人形』を倒してしまった。

この2体も最初の『金属人形』と同様にすぐに修復され、リベルさんに対して一礼してから、1体目の隣に移動して『棒の魔物』に戻った。


僕はこの時点で『魔物鑑定』のことを思い出して、慌てて『棒の魔物』に鑑定をかけた。

初見時は魔物に見えない魔物だったので、鑑定するのをすっかり忘れていた。



(鑑定結果)


○モノリリス ☆

 系統 : 鉱物系人形型 

 通称 : 『棒の魔物』 

 体型 : 中型(棒→人形型)

 体色 : 銀色

 食性 : 鉄鉱石

 生息地: 山岳地帯・洞窟

 特徴 : 普段は棒状モノリスだが接敵すると人形型になる。

      魔法攻撃を反射する。

      拳闘による物理攻撃が主体。

      礼儀正しい。

      食材には向かない。

 特技 : 変形・魔法攻撃反射・拳術

 ※進化種 取り込む鉱石の種類により、進化種が存在する。

      銅、銀、金、ミスリル、金剛石等。



正式名称は『モノリリス』。

モノリスの魔物だけにそんな名前なのだろう。

でもルルさんの『棒の魔物』の方が覚えやすいかもしれない。


魔法攻撃は反射するみたいだから、物理攻撃で倒すしかない。

モノリリスも拳闘主体となってるので、ルルさんだと完全に殴り合いになるだろうね。

リベルさんは剣で戦ってるけど。


でもモノリリスの礼儀正しい行動のせいか、魔物との死闘というより、練習試合的な雰囲気?

道場で腕試ししてる感じだよね。


鑑定結果を吟味していると、今度は4体のモノリリスが同時に動き出した。

これってもしかして、倒すたびに戦う相手の数が倍々で増えるパターン?

リベルさん、4体が相手ならまだ何とかなりそうだけど、8体はさすがにきついんじゃないのかな。


そこから少し時間はかかったものの、リベルさんは傷一つ負わずに4体のモノリリスを切り伏せた。

そして予想通り、次は8体のモノリリスが人形型に変化する。


「リベルさん、一人で大丈夫ですか?」

「ウィンさん、任せて下さい。スーパーなリベルはここからです。」


僕が声をかけるとリベルさんは胸を張ってそう答えた。

ルルさんは僕の隣で腕を組んだまま黙って立っている。

リベルさんのお手並み拝見って感じだ。


8体のモノリリスが一斉に動き出し、今回はリベルさんを取り囲むように布陣した。

全方位からの連携攻撃で何とかリベルさんを押さえ込もうという作戦だろう。

リベルさんの剣技のレベルはかなり高いけど、果たしてこの数のモノリリスを凌げるんだろうか。


「光縛り一の型、『蔓』!」


僕が心配そうに見ていると、リベルさんは左手一本で剣を持ったまま右手を前方に突き出してそう叫んだ。

すると、開いた状態の右の掌から何本もの光の筋がするすると現れた。

そしてその光の筋はうねうねしながら八方に伸び、8体のモノリリスに巻き付くように絡みついた。

まるでコンちゃんの『蔓』のように。


8体のモノリリスは光の蔓に巻かれてその場で動けなくなっている。

僕がその様子を呆然と見ていると、リベルさんがあっという間に8体のモノリリスを『勇者の剣』で切り捨てた。


「リベルさん、凄い。伝説の勇者みたいですね。」

「ウィンさん、ボク、一応『元勇者』なので・・・」


「ふん、『ダメ勇者』がこれでようやく『まあまあ勇者』だな。」

「ルル、うるさい。ボクだってやればできる。」


3人でそんな掛け合いをしていると、次は当然のように16体のモノリリスが変身を開始した。

まだ背後にいっぱいいるけど、これ、どこまで増えるんだろう?



読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は3月25日(月)です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ