242.リベルさんを使って欲しいそうですそうです(伝言:ディーくん)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(242)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
242.リベルさんを使って欲しいそうです(伝言:ディーくん)
「で、ルルさん、スラちゃん呼びましたけど、どうすればいいんですか?」
僕が召喚で呼び出したスラちゃんは、水滴型の体型のままで僕とルルさんの目の前にいる。
改めて見ると、金色透明の不思議な体色がとても綺麗だ。
スラちゃんはまん丸の目で僕とルルさんを交互に見ている。
「スライムさんの『鉱物探知』を使う。」
ルルさんはスラちゃんに近づき、スラちゃんのプルプルボディを撫でながらそう言った。
『鉱物探知』?
確かにスラちゃんにはその能力があるけど、それをどう使うんだろう?
この辺りの山は鉱山らしいから、鉱物はいっぱいあるんだろうけど。
あっ、その前にルルさん、どうしてスラちゃんの能力を知ってるんだ?
「ウィンの従魔たちの能力はすべて把握している。」
「把握してるって・・・どうしてですか?」
「従魔たちに教えてもらっただけだが。」
「従魔たちに?・・・教えてもらった?」
どういうことですか、それ?
従魔たちとルルさんの関係って、そこまで親密なんですか。
それってかなり警戒案件じゃないのかな。
この前の買収案件といい、ルルさん、僕の従魔たちを乗っ取ろうとしてません?
「ウィン、心配するな。パーティーメンバーとして能力を把握したかっただけだ。」
ルルさんは相変わらず、僕が何も言葉にしなくても的確に意図を読んで答えてくる。
それにしても、従魔たち、ルルさんに対して脇が甘すぎるんじゃないかな。
あるじの許可なく、能力を全部教えちゃうなんて。
もちろん、ルルさんが裏切るなんて思ってないけど、「今日の友は明日の敵」ってこともあるからね。
世の中には人間性の善悪とは関係なしに、裏切らざるを得ない状況に追い込まれちゃうってストーリーも結構あるんだよ。
「ウィン、絶賛混乱中のところ悪いが、話を前に進めてもいいか?」
「まあ、構いませんけど。今さら愚痴っても何も変わりませんし。」
「よし、じゃあスライムさん、鉱物が集まってる場所を探してもらえるか。地中じゃなくて、山の表面で集まってる所だ。」
「リン(了)。」
スラちゃんは、大きな声で返事をするとプルプルボディをプルンと大きくひと揺らしした。
すると、スラちゃんの体から金色の光が溢れ出し、それが徐々に山々に広がって行った。
「スラちゃん、何、その技!」
「リン(鉱物)、リン(探知)。」
「でも前はそんな光、無かったよね。」
「リン(視覚効果)、リン(付けてみた)。」
付けてみたって・・・。
従魔たち、自由自在過ぎない?
まあ「視覚効果」ってことは、目に見えるようにしただけで、他に特別な効果はないんだろうけど。
「リン(鉄)、リン(いっぱい)。」
スラちゃんがすぐに鉄がいっぱいある場所を見つけたようだ。
ルルさんの指示は、山の表面で鉱物が集まってる場所だったので、山の表面のどこかに鉄が集積してるってことだろう。
でもそれって、どういう意味だろう?
「スライムさん、よくやった。じゃあ、その場所に移動する。スライムさん、場所を教えてくれ。」
ルルさんはスラちゃんにそう言うと、右手を伸ばしてスラちゃんに触れた。
次の瞬間、ルルさんとスラちゃんが目の前から消えた。
僕は突然の出来事にちょっとびっくりしたけど、たぶん一緒に転移したんだろうと思い直した。
僕もルルさんの後を追いかけて転移すればいいだけだ。
ルルさんのいる所。
そう念じて僕は転移した。
景色が壮大な山脈から、一瞬で針葉樹の樹々が生い茂る森の中に変化する。
足元が斜面になっているので、山の中のどこかだろう。
そして僕の前方には、樹々の間に何本もの金属の棒が立っているのが見えた。
スラちゃんは『鉄』って言ってたけど、表面が鏡のように滑らかで、どちらかというとステンレスっぽい。
「モノリス?」
「棒の魔物だ。」
思わず僕がつぶやくと、隣から訂正の言葉が聞こえた。
振り向くとそこには、ルルさんとスラちゃんがいた。
「あれが『棒の魔物』ですか?」
「そうだ。」
「でも単なる金属の棒・・・というか柱にしか見えませんけど。」
「近づくと襲ってくる。まあ礼儀は正しいがな。」
礼儀正しい?
金属の柱が襲ってくるというのも想像しにくいけど、さらに礼儀正しい魔物ってどういう意味だろう?
「リン(主人)、リン(伝言)。」
『棒の魔物』についてあれこれ考えていると、スラちゃんが話しかけてきた。
「スラちゃん、伝言って誰から?」
「リン(ディーくん)。」
「内容は?」
「リン(リベルくん)、リン(使って)。」
リベルさんを使う?
従魔たちの特訓を受けてたせいで出番がなかったリベルさんに、活躍の場をあげてってことかな。
僕には特に異論はないけど、ルルさんと一緒で大丈夫かな。
「ルルさん、リベルさんを連れて来ます。」
「リベルを? なぜ?」
「ディーくんが使えって。」
「了解だ。」
おっ、意外とあっさり了解してくれた。
もう少し何か言われるかと思ったけど。
師匠のディーくんの指示なので反対しなかったのかもしれない。
僕は『庭』にいるリベルさんの所に転移し、リベルさんの腕を掴み、そのまま山の中に戻った。
状況説明とかは面倒なのですっ飛ばした。
「うわっ、庭がいきなり森に・・・・・」
「転移しただけですよ、リベルさん。」
「あっ、ウィンさん、ここどこですか?」
「アマレパークスの北部にあるララピスの山脈です。」
「ララピス? 初めて来ました。あっ、ルルがいる。」
「いますよ。一緒に来ましたから。面倒なのでもめないで下さいね。」
「大丈夫ですよ。今のボクは、前のボクじゃありませんから。特訓を乗り越えてスーパー・リベルに生まれ変わりました。もうルルにも負けません。」
いやいや、それが余計な煽りなんですけど。
成長したなら大人の対応も覚えて下さい。
「ほほぉ、リベル、大した自信だな。そこまで言うなら『棒の魔物』はすべてリベルに任すとしよう。」
「ハッハッハッ、ルル、今のボクには棒でも剣でも斧でも矢でも何でも来いだ。全部まとめて成敗してみせよう。」
「ならばほれ、そこの『棒の魔物』たちを倒してみせろ。」
「ふん、やってやろうじゃない・・・か? 魔物ってどこにいるの?」
うん、『棒の魔物』っていきなり言われても理解できないよね。
僕も今だに、目の前の金属の棒が魔物だって、心の底からは理解できてないし。
これを倒すってどうすればいいんだろう?
文字通り、『棒倒し』的な感じ?
あのモノリスみたいな金属を押し倒せばいいのかな。
「リベル、近付けば分かる。油断はするな。」
ルルさんのその言葉を聞いて、リベルさんは半信半疑の動きでゆっくりと一番手前の金属の棒に近付いて行った。
いったい何が起こるのか。
僕は興味津々でリベルさんの行動を見守っていた。
そしてその後に起こった事は、もちろん『棒倒し』には程遠い事態だった。
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