241.街は山の中にあるそうです(ララピス:山エルフの街)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(241)
【アマレパークス編・地下都市ララピス】
241.街は山の中にあるそうです(ララピス:山エルフの街)
転移すると、目の前には壮大な山々が連なっていた。
頭の中にディーくんの『鉱山がメイン』という言葉があったので、勝手に岩山をイメージしてたけど、実物は正反対だった。
黒に近い深緑の葉を茂らせた針葉樹が隙間なく山々を覆っていて、他のものは何も見えない。
人間の侵入を完全に拒絶する大自然の佇まいだ。
でもこれ、どこに街があるの?
「ルルさん、転移場所、間違ってません?」
「間違ってない。」
「だって、街とか見当たりませんけど。」
「見えるわけがないだろう。」
「見えるわけがないって・・・意味が分かりません。」
「ララピスの街は山の中にあるんだ。」
ララピスは山の中にあるのか。
ということはここから登って行くってことかな。
でもシルワの森にあったみたいな門とか道とかがどこにも見当たらないんだけど。
それに見渡す限り、切り開かれた場所なんてありそうにない。
道なき道を進まないと辿り着かない感じかな。
「ルルさん、街の中に直接転移した方が良かったんじゃないですか?」
「いや、それは危険だ。」
「危険?」
「言っただろう。ララピスは複雑で変化するんだ。下手に街中を目指して転移すると土の中に埋もれてしまう。」
「土の中?」
「そうだ。」
「どういうことでしょう?」
「言葉通りだ。」
うん、言葉が足りないルルさんと想像力が足りない僕の間で、何か大きな食い違いが起きてる気がする。
もう一度質問し直そう。
「ルルさん、ララピスはこの山の中にあるんですよね?」
「そうだ。」
「でも見えないんですよね?」
「そうだ。」
「見えない理由は?」
「だから山の中にあるからだ。」
山の中・・・なるほど・・・つまり地下にあるってことですね。
「ララピスの街は、すべて地面の下にあるってことですか?」
「そうだ。初めからそう言ってる。」
確かに初めから言ってますね。
山の中にあるって。
ルルさんは僕の心の中を読めるのに、僕はルルさんの言葉を聞いても理解できない。
この差はいったい・・・・・
僕の頭の回転が悪いだけなのか。
「ルルさん、理解しました。それでどうすればララピスに行けるんですか?」
「それなんだが、以前はここに入口があった。」
「以前は?」
「うむ、どうやら入口が変わったようだ。棒の魔物もいないしな。」
ララピスは変化するって言ってましたけど、入口の場所も変わっちゃったってことですかね。
それから唐突に新しい単語が出てきましたけど、『棒の魔物』ってなんですか?
「棒の魔物とは?」
「棒の魔物は、棒の魔物だ。」
「それが名前なんですか?」
「名前は聞いたが忘れた。」
この辺はルルさんにありがちな事なのでそのままスルーして、僕は辛抱強く質問を続けることにした。
「棒の魔物がいないと、何か問題があるんですか?」
「入口がないということだ。」
「え〜と、棒の魔物って門番か何かですか?」
「分からんが、ララピスの入口付近には必ずいる。」
どういうことだろう?
その『棒の魔物』は山エルフたちの従魔か何かだろうか。
ララピスへの入口を守護するために配置してるとか。
あるいは『棒の魔物』には、特殊な習性があるのかもしれない。
人工物にを引き寄せられるとか。
人の気配や匂いを追いかけるとか。
そんな風に『棒の魔物』について考えを巡らせているうちに、僕はもっと大事なことがあることに気づいた。
「ルルさん、入口がないということは、僕たちはララピスに入れないということですか?」
「そうだな。」
ルルさん、「そうだな」じゃないでしょう。
「行ったことがあるから私に任せろ」的なことを言っておいて、その一言で済ますつもりですか?
まあ、入口の場所が変わってしまったというのは不可抗力ではあるけど、何か次の策があるんですよね。
「新しい入口を探す方法がないわけじゃない。」
僕の顔を見ながらルルさんがそう言った。
おそらく僕の考えを読んだんだろうけど、だんだん慣れてきた。
「どんな方法ですか?」
「棒の魔物を探す。」
「棒の魔物って、入口付近にしかいないんですか?」
「他にもいるが、入口付近にはいっぱいいる。」
「いっぱいいて、襲って来ないんですか?」
「襲ってくるぞ。魔物だからな。」
「それ、大変じゃないですか。」
「なぜだ? 殴って倒せば入れるぞ。」
いかにもルルさんらしい答えを聞きながら、僕はため息をついた。
そしてかなりの高さとかなりの広がりを持つ山脈を見渡した。
「ルルさん、大体の場所の見当は付いてます?」
「いや。」
「このバカでかい山脈の中で、どうやって探すんですか?」
「転移で行けないかと思ったんだが・・・・・」
「思ったんだが?」
「何かに邪魔されて場所を指定できない。」
そんなことがあるんだろうか。
僕は自分で「ララピスの入口」と念じて『転移』を発動してみた。
しかし、何も起こらなかった。
次に、「棒の魔物がいっぱいいる所」と指定してみた。
やっぱり何も起こらない。
「本当だ。転移できない。」
「だろう。これはあれだ。『世界樹』だな。」
ルルさんにそう言われて『魔力感知』を意識してみると、確かに『世界樹』から感じた魔力と似たものが辺りを漂っている。
「これは『世界樹』がララピスに入るのを妨害してるってことですか?」
「そういうことになるな。」
「どうしてそんなことが・・・もしかしてララピスって隠れ里だったりします?」
僕は『世界樹』による妨害の理由が分からず、思いついたことをルルさんに訊いてみた。
ルルさんは腕を組んで小首を傾げ、少し考えた後で僕の質問に答えた。
「そんなことはない。ララピスはれっきとした街だ。ただ山エルフは几帳面でな。許可がないと入れない。」
「えっ?」
「許可がない人間は入れない。」
いやルルさん、聞き返したんじゃなくて、驚いたんですよ。
ルルさんが今告げた内容に。
そこ、一番大事なポイントじゃないですか。
「ルルさん、許可取ってます?」
「もちろん、取ってない。」
「許可取らないと入れないんでしょう?」
「いや、前回は入れたんだ。」
「どうやって。」
「入口を偶然見つけて、棒の魔物を全部殴り倒したら入れた。」
僕は思わず天を仰いで目を瞑った。
そして改めて、ルルさんの言葉を信じてそのままついて来たことを後悔した。
なんて僕は愚かなんだ。
ルルさんの言葉は事細かに確認しないと危ないって、十分分かってたはずなのに。
そんな風に自責の念に苛まれていると、
「ウィン、諦めるのはまだ早い。」
ルルさんが弱気になった僕を励ますようにそう言った。
いや、ルルさんのせいでこんなことになってるんですけどね。
申し訳ないとか1ミリも思ってませんよね。
まあ何かいい考えがあるなら一応聞きますけど。
もうほとんど期待はしませんが、言いたいことがあるなら言ってみて下さい。
ルルさんは僕の表情を見てひとつ頷き、予想外の提案を僕に告げた。
「今すぐ、スライムさんを呼んでくれ。」
スライムさん?
スラちゃんのことか。
でもスラちゃんを呼んでどうするんだろう。
穴でも掘らせるんだろうか。
スラちゃんの特技に穴掘りは無かったと思うんだけどな。
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