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233.ガチの殴り合い希望のようです(決勝戦:vs ルル)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(233)

【格闘大会編】



233.ガチの殴り合い希望のようです(決勝戦:vs ルル)



「フフフ、どうだウィン?」


ルルさんが腕を組んだままとても悪い笑顔を僕に向けてきた。


「ルルさん、どうだじゃないですよ。買収ってどういうことですか?」

「そのままの意味だが。」

「従魔たちを買収するなんて、ひどくないですか?」

「ウィン、何を言っている。敵の戦力を削ぐために買収することなど、いくさでは基本戦略だ。私とて、無策でウィンに挑むほど馬鹿ではない。」


やられた。

まさかルルさんがそんな手を使ってくるなんて思いもしなかった。

でもどうやって従魔たちを買収したんだろう。

何か美味しい食べ物でももらったんだろうか。

いやその前に、敵に買収される従魔って何なの?


「あるじ〜、ルルちゃんは敵じゃないからね〜。ディーくんの弟子だからね〜」


ディーくんが僕の思考を読んで、そんなことを言ってくる。

敵には買収されないけど、弟子には買収されるってことか。

それはそれでどうなの?

『あるじ』である僕の立場は?


「あるじ〜、ルルちゃんとガチで殴り合いだね〜。楽しみにしてるね〜」


ディーくんがそう言うと、従魔たちは一斉にポンポンを大きく振った。

いつの間にか全員が右に青、左に白のポンポンを装着している。

完全に応援団の様相だ。


「それじゃあウィン、そろそろ始めるぞ。」


ルルさんのその言葉を聞いて、僕は集中力を高めた。

『打撃無効』と『魔法攻撃無効』持ちの僕に対してルルさんはどう仕掛けてくるのか。

従魔たちを買収してるくらいだから、きっと何らかの策があるに違いない。


「では参る。」


ルルさんはそう言うとファイティングポーズをとった。

僕は咄嗟に『転移』からの打撃に備える。

しかし、ルルさんは転移せず、大きく前に一歩を踏み出した。

そして試合会場の石床を踏み砕き、跳ね上がった石のカケラに右の拳を叩き込んだ。


次の瞬間、超高速の石のカケラが僕の頬を掠めていった。

右頬がざっくり裂けて、生暖かい血が流れる。


なるほどそう来ましたか。

飛来する石のカケラによるダメージは魔法攻撃判定でも打撃判定でもないということか。

さすがに本気のルルさんは違う。

戦略をきちんと立ててくる。


それにしても今のは危なかったな。

一瞬避けるのが遅れていたら、まともに頭にくらっていた。

ていうかルルさん、それまともに当たったら死んじゃいますよ。


僕は『転移』を小刻みに繰り返して立ち位置を変えながら、『ヒール』で右頬の傷を癒した。

対してルルさんは最初の位置から動いていない。


「ウィン、これなら耐性はないだろう? 今のは挨拶代わりだ。ここからが本番だ。」

「でもルルさん、それだと殴り倒すことにはならないですよね。」

「ウィンを倒すためなら、そんな小さなことには拘らぬ。」


ルルさんはそう宣言すると、今度は『転移』を使い、場所を変えて石床を踏み砕き、同じ攻撃を仕掛けてきた。

そして更にその動きを繰り返す。

僕は『石壁』と『転移』を併用しながら、次々に飛来する超高速石弾を避け続けた。


石床を砕くというワンステップが入るおかげで、僕はそれほど無理せずにルルさんの攻撃を防ぐことができた。

それでも攻守を反転させることは難しく、しばらくルルさんが攻め、僕が守るターンが続く。


「ウィン、避け続けるのはさすがだが、逃げてばかりじゃ勝利はないぞ。」

「分かってます。そのうち反撃します。」

「そんな余裕があるのか。こちらは次の準備ができたぞ。」


ルルさんはそう言うと、右手を横に伸ばして『風魔法』を発動した。

強い風が試合会場の上で渦を巻くように吹き荒れる。

その風に乗って、ルルさんが踏み砕いた石のカケラたちが宙を舞い始めた。


ゲゲッ、これはやばい。

ルルさんが石床を割りまくってたのはこのためか。

これで石床を砕くというワンステップが無くなる。

転移して即、空中の石のカケラを拳で撃ち抜けば、超高速石弾の乱れ打ちが可能だ。

これって、何気に絶体絶命かも。


僕の予想通り、ルルさんは転移を繰り返し、ノータイムで四方八方から石弾を撃ってきた。

僕は弾道を見極める暇がなくなり、直感頼みで逃げ回る。

しかしそんな防御ではルルさんの攻撃をすべて防げる訳もなく、何発も石弾を喰らいながらも、どうにか致命傷だけは避け続けた。


これ、『ヒール』がなければ完全に終わってたな。

でも対策を打たないとこのままじゃやられる。

ひとつ間違えば、意識か命を刈り取られちゃうからね。


「暴風!」


僕は逃げながら思いついた対抗策を叫んだ。

ルルさんの『風魔法』より強い風が、試合会場の上を吹き抜ける。

僕のクエストにより発動したその暴風が、ルルさんが作った石のカケラたちをすべて巻き取り、そのまま格闘場の外まで吹き飛ばした。


「ふぅ〜、これで一息つける。」

「ウィン、さすがだな。私の武器を吹き飛ばすとは。」

「ルルさん、あれ、まともに当たったら死にますから。」

「これくらいで死ぬなら、それまでの男ということだ。」

「いやいやいや、これ試合なんで。殺し合いじゃないんで。」

「ウィンは私が認めた男だ。これくらいじゃ死なんだろう。」

「・・・当たったら・・・死にます。」


ルルさん、僕のこと、頭が潰れても死なない未知の生物か何かだと思ってんじゃないですか?

あと、爆上がりしてる自分の能力と威力について自覚してないんじゃないのかな。


「また一から床を砕かないとな。次はウィンの風魔法も止めるぞ。」


そうですよね。

石のカケラはまた作ればいいだけですもんね。

それにさっきの『暴風』は、予め分かっていればルルさんなら対応可能だろうし。

ルルさん、『魔力視』持ちだからね。


でもこのままやられっぱなしは嫌だ。

何とかしないといけない。

仕方がない。

封印してたやつ、使っちゃうか。

使い方を間違えると、大惨事になっちゃうけど。


まあ練習は続けてたし、使い勝手も良くなったし、途中解除もできるようになったから、大丈夫だとは思うけど。


僕はそこまで考えて、ルルさんに戦意のこもった視線を向けた。

ルルさんはもちろん、挑発的な眼差しで睨み返してきた。





読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は3月1日(金)です。

よろしくお願いします。

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