231.解説者ネロ、再び(いい加減なようで的確)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(231)
【格闘大会編】
231.解説者ネロ、再び(いい加減なようで的確)
「準決勝第1試合は、ウィン様の勝利!・・・でいいんでしょうか、解説のネロさん?」
「しょうがねぇだろ。相手が逃げちまったんだからよぉ。」
あっ、ネロさん、また解説者に戻ってる。
見た目も子猫ネロさんから普通サイズの獣人ネロさんに戻ってる。
「壮絶な戦いが繰り広げられた・・・に違いないのですが、正直戦いのレベルが高度過ぎて理解が追いつきませんでした。ネロさん、詳しく解説をお願いします。」
「ウィンが追い詰められて、ウィンの従魔たちが反撃して、ノックスが逃げた。そんなとこじゃねぇか。」
ネロさん、相変わらず大雑把というか、やる気ゼロですね。
大観衆が聞いてるんですから、ちゃんと仕事しましょうね。
それから僕はどうすればいいんでしょうか。
試合会場に一人ポツンと取り残された状態なんですけど。
「・・・詳しく、解説を、お願いします、解説者のネロさん。」
「面倒くせぇなぁ。」
「解説料、払ってますので。お願いします、ネロさん。」
「しょうがねぇなぁ。」
しょうがなくないですよ、ネロさん。
お金もらってるなら、その分きちんと働かないと。
でも司会者さんもよくキレないよな。
僕には到底無理だな。
あのネロさんの相手は。
なんか手持ち無沙汰だし、今のうちにこっそり退場しちゃおうかな。
「あっ、ウィン様はそのままで。ではネロさん、まず最初の部分について伺います。ノックスさんが一方的にウィン様に話しかけていたようですが。」
「ああ、ノックスが初めて面ぁ見せやがったからな。たぶんウィンとノックスは知り合いだったんじゃねぇか。あと、二人とも『念話』持ってんな。だから一方的じゃなく二人で会話してたってこったろう。」
離脱失敗。
司会者さん、何気に感がいいですね。
でも一人で立ちっぱなしって、結構間抜けな感じなんですけど。
それからネロさんも、いい加減な割によく見てますよね。
『念話』に気づくなんて。
ダメダメっぽく見せておいて実はできる男、みたいなキャラでも目指してるんですか。
「『念話』で会話ですか。ネロさん、よくそこまで見抜けましたね。ちょっと見直し・・・いえ、次の解説をお願いします。会話の後からウィン様の従魔の皆さんが登場するまでの展開はいかがでしょうか?」
あっ、司会者さん、今、本音がポロッとこぼれかけましたね。
でも優秀な司会者さんのことだからミスじゃないですよね。
わざと本音をチラ見せしたんじゃないのかな。
かなり高等テクニックですね。
「まず、ノックスが例の妙な魔法をウィンにかけやがった。」
「それまでの対戦者がみんな自爆した、あれですか?」
「そうだな。」
「あれはどんな魔法なんでしょうか?」
「理屈は分からねぇが、あれを喰らうと自分の攻撃が全部自分に跳ね返るんじゃねぇか。」
ネロさん、さすがS級冒険者。
まあ僕やルルさんと違って他の試合も見てたんだろうし、ノックス(パサート)さんの試合を何試合か見れば、それくらいの予想は立つのかもしれないけど。
「ということは、ウィン様があの状態で魔法攻撃をしていたら、ウィン様も自爆していたということですか?」
「そういうこったな。ただウィンのやつぁ、『耐性』とか『無効』とかいろいろ持ってやがるみてぇだから、自爆しても無傷って可能性もあるがな。」
ネロさん、そこなんですよ。
『魔法攻撃無効』があるので、自爆しても大丈夫な気がするんですが、それなら「中の女性」があんなに必死に従魔たちに助けを求めないと思うんですよね。
ということは、クエストによる魔法攻撃は普通の魔法攻撃と別枠なんじゃないかと・・・。
後で「中の女性」に尋ねてみないと。
「でもネロさん、ウィン様が魔法攻撃をする前に、従魔の皆さんが空から降って来ましたよね。その辺はどういうことだったんでしょうか?」
「そこはなぁ・・・推測でしかねぇが、やっぱりノックスのあの妙な魔法はウィンにとってもヤバい部分があったんじゃねぇか。だから従魔たちが全員参加でノックスの魔法をぶち壊した。そんでスラちゃんが『結界』でウィンを守った。そんなとこだろう。」
「あの金色の光は従魔のスラちゃんによる結界魔法だったんですか?」
「そういうこったな。ありゃとんでもねぇ防御力だぜ。まったくもってウィンにはもったいねぇ従魔だ。」
はい、僕にはもったいないですね。
そんなことは僕自身が一番よく理解してます。
でもネロさんに言われると、ちょっとイラッとします。
反抗期の少年のような気持ちになるのは何故なんでしょうか。
「結界魔法を使う従魔なんて初めて聞きましたが、改めてそんな凄い従魔たちを従えているウィン様はまさに『神テイマー』ということなんですね。」
「ウィンが神だぁ? バカ言っちゃいけねぇ。あいつぁ運がいいだけじゃねぇか。少なくとも従魔に関しちゃな。神じゃなくて強運テイマーでいいんじゃねぇのか。」
運がいい?
まあ、そう言われても仕方ないとは思いますが・・・。
でも運だけじゃなくて、血の滲むような努力もしてたと思うんですよ。
僕の失われた記憶のどこかできっと。
本人の希望的観測として。
「運だけでは強い従魔は従えられないと思いますが・・・・・まあその話はひとまず置いておいて、ウィン様の従魔たちの総攻撃からノックスさんの敗北宣言まではどう見ますか?」
「前半の従魔たちの攻撃は当たんなかったな。ありゃあたぶんノックスの防御魔法だろう。だが大っきくなったタコさんとウサくんの攻撃の威力には耐えらなかったみてぇだな。防御魔法が壊れたところでノックスが敗北を確信して逃げたってこったな。」
う〜ん、表面的な流れから見ればその通りなんだろうけど・・・
僕にはどうしてもノックスさんが敗北を確信したとは思えないんだよね。
最後の言葉からしても、今回は小手調べ程度で、本気じゃなかったんじゃないのかな。
でも面倒だから、もう絡んできて欲しくないんだけど。
「解説者のネロさん、ひとつ質問してもよろしいですか。」
「いや、よろしくねぇな。もういいんじゃねぇか。」
「解説者のネロさん、ひとつ質問します。」
「面倒くせぇな。」
「お金をもらって解説しているネロさん、ノックスさんはなぜ従魔の皆さんに、あの自爆させる魔法を使わなかったんでしょうか?」
「そこんとこは、はっきりとは分からねぇが、たぶんなんか制限があるんじゃねぇか。効果範囲が狭いとか、従魔や魔物には効かねぇとか。あんなもん、無制限に使えたら誰も相手になんねぇだろ。」
そうなんだよな。
あの訳の分からない魔法が、広範囲で長時間に渡って誰にでも効果を発揮するなんてことになったら無敵だよね。
でもノックス(パサート)さん、『再生率を上げたら』とか言ってたよね。
もっと上があるってことだよな。
なんか怖くなってくるから考えるのやめよう。
「ありがとうございます、解説者のネロさん。最後に何か言っておくことはありますか?」
「おう、あるぜ。おいウィン、次は高い所と従魔禁止で正々堂々おれと戦いやがれ。その時はギッタンギッタンに・・・」
「それでは準決勝第一試合の解説を終わらせて頂きます。解説者のネロさん、ありがとうございました。」
司会者さんが強引に話を締めくくり、僕の試合についての解説は終了した。
ネロさんがまだ何か叫んでるけど、声は聞こえなくなった。
『拡声魔法』の反対で『消音魔法』もあるのかもしれない。
でもネロさん、僕にだけ制限をかけて戦うのは正々堂々とは言わないと思います。
そんなこと言ってると、またグラナータさんにしばかれますよ。
あっ、そうだ。
もう退場してもいいですか?
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