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227.強者は何度でも立ち上がるそうです(by 戦闘狂の聖女)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(227)

【格闘大会編】



227.強者は何度でも立ち上がるそうです(by 戦闘狂の聖女)



試合が終わって円形の舞台を降りると、係員が迎えに来ていた。

どうやらそのまま格闘技場内に設置された出場者席に戻るようだ。

フェイスさんは退場したので、勝者だけが残って行く形なんだろう。

席に戻ると、既に座席が一つ減らされていた。


「ウィン、よくやった。フェイスもなかなかやるな。」


自分の席に座ると隣のルルさんが声をかけてきた。

ルルさんは『アルジェさん』がフェイスさんだと見抜いていたようだ。


「ルルさん、アルジェさんがフェイスさんだって気づいてたんですね。」

「アルジェ? 誰だそれは?」


あれ?

そうか、ルルさん、初めから名前なんてちゃんと聞いてないんだ。

でもどうしてフェイスさんだと分かったんだろう。


「フェイスさん、外見を偽装してましたよね。」

「ああそんな事か。魔力の色を見れば知ってる者ならだいたい分かるぞ。」


なるほど。

そういう事ですか。

『魔力視』、便利ですね。

僕も早く獲得したいです。


『波動感知』と『波動視』は達成したけど、『魔力視』はまだなんだよな。

そんな事を考えていると、視界にクエストの途中経過が表示された。



○クエスト : 魔法攻撃を見極めろ②

 報酬   : 魔力視

 達成目標 : 魔法攻撃を避ける(500回)

 カウント : 479/500



おお、いつの間にかもう少しでクエスト達成するところまで来ている。

これはあれかな。

『庭』で戦った『色付き角ウサギ』の魔法攻撃を避けまくったのがカウントされてるのかな。

残り21回だから、この大会中に達成できるかもしれない。

物理攻撃しかしてこない相手だと無理だけど。


「ウィン、行ってくるぞ。」


『魔力視』獲得の可能性にワクワクしてると、隣のルルさんが立ち上がった。

準々決勝2試合目はルルさんの出番らしい。


ルルさん、昨日の予選ラウンドは不完全燃焼だったようなので、今日は楽しめるといいですね。

決勝ラウンドですから、きっと相手も強いはずです。

思う存分戦って下さい。

そんな想いを込めて送り出したんだけど・・・・・


結果的には、今回の相手は確かに強かった。

『火魔法』の有名な使い手だったらしい。

ルルさん相手に接近戦は無理だと判断したのか、開始早々から遠距離で魔法攻撃を連発した。


しかし悲しいかな魔法の発動スピードが遅い。

しかも今のルルさんには『水魔法』がある。

ルルさんは転移で避けることもせず、的確に『水魔法』で『火魔法』を弾き飛ばしながら相手に一歩ずつ近付いて行った。

そしてちょうど相手の魔力が尽きたタイミングで、右の拳を相手の腹部に叩き込んだ。


哀れ火魔法使いは、円形の舞台の外に吹っ飛んでいった。

試合時間は少し伸びたけど、やっぱりワンパンで終わっちゃったね。


ルルさんの勝利が確定した瞬間、観客席いっぱいに白いポンポンが溢れるように振られた。

従魔たち、白もいっぱい配ったんだね。

・・・もうポンポンのことは気にしないことにしよう。


「ふん、何が『天下無双の火魔法使い』だ。速度も工夫も無さ過ぎる。」

「ルルさん、どうせワンパンなら、転移からの拳一発で良かったんじゃないですか?」

「少しは楽しめるかと思って様子を見ただけだ。拍子抜けだったがな。」

「でもあれじゃあ、あの人、もう立ち直れないんじゃないですか。得意の火魔法を完封された上でワンパンですからね。」

「強者は何度でも立ち上がるものだ。負けて止まる者は、所詮そこまでだ。」


ルルさん、戦闘に関しては本当に手厳しいですね。

戦闘以外だと優しい部分もあるのは知ってますけど。

でも言いたいことは分かります。

優しさだけで生き残れる世界じゃないし。


誰でも強くなれるわけではないので、強さがすべてだとは思わないけど、諦めない気持ちは大切だよな。

うまくいかないと、他人や境遇のせいにしたくなるけど、それだと前に進めない。


まあ何事も『自業自得』ってことで。

あれ、なんか違うかな。

この言葉、良い意味もあったよね。

良いことも悪いことも、自分の行いが結果的に自分に返ってくるみたいな・・・・・。


そんな思考にハマり込んでいると、


「勝者、『宵闇の魔導士』ノックス!」


司会者の勝利宣言が聞こえてきた。


あっ、ルルさんとの話に気を取られて、次の試合をまったく見てなかった。

慌てて円形の舞台に視線を移すと、真っ黒なローブを着てフードを深く被った人物が一人だけ立っている。

対戦相手は少し離れた場所に倒れていた。


「ルルさん、あのノックスって人、知ってます?」

「知らん。」


ルルさんの返事は相変わらず簡潔だ。

まあルルさんの場合、興味がないと会ったことがあっても覚えてないだろうけど。


「今の試合、見てました?」

「見てない。」


念の為に尋ねてみたけど、予想通りの答えが返ってきた。

ここまで対戦者の情報収集に無頓着だといっそ清々しい。


それにしても、あのノックスって人、試合直後なのに服装も呼吸も乱れた様子がどこにもない。

ということはほとんど動かずに瞬殺したってことか。

間違いなくコンゲムさんが送り込んだ刺客の一人だと思うけど、どんな戦い方をするんだろう。

ネロさんの解説を聞けば少しは分かるかな。


「では続きまして準々決勝第4試合を始めます。」


あれ、もう次の試合に行くの?

そう言えば、ルルさんの試合の解説も無かったような。

もしかしてネロさんの解説ってあの1試合だけ?

あるいは僕の試合限定とか?


そんな疑問を抱きながら司会者席の方を見ると、黒い子猫姿になったネロさんが机の上にちょこんと座って毛繕いしていた。


ネロさん、解説の仕事を放棄して何してんですか。

子猫の姿になればサボっても許されるってもんじゃないですよ。

もしかして僕をディスるためだけに解説者やってるのかな。

でも受けた仕事はきちんと全うしないと。

そんなことだからグラナータさんに『馬鹿ギルド長』呼ばわりされるんですよ。


僕は軽蔑の視線を子猫ネロさんに送りつつ、ノックスさんに関する情報を諦めて椅子に座り直した。

まあ、ちゃんと試合を見ていなかった自分が悪いんだし仕方がない。

次の試合はちゃんと見よう。


準々決勝第4試合は、パワー系対スピード系の戦いだった。

一発当てれば相手を倒せそうなパワー系。

逃げ回りながら細かい攻撃を積み重ねるスピード系。

割と時間がかかった末に、先にスタミナが切れたパワー系が敗北した。


でも正直言って、あんまり見所はなかった。

どう考えても、カタラットさんやグラナータさん、ネロさんやフェイスさんの方が強い。

まあ、コンゲムさんが組み合わせを偏らせたせいで、こんなことになってるんだろう。


でもとにかく、これでベスト4は出揃った。

次の僕の相手は、ルルさんかノックスさんか。

まさかあのスピード系の人ってことはないよな。

コンゲムさん、嫌がらせの仕方が徹底してそうだし。


そんなことを考えているうちに、格闘大会の舞台は準決勝へと進んでいった。



読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は2月16日(金)です。

よろしくお願いします。

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