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206.それは心が死にます(コンゲム:コン狐?)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(206)

【格闘大会編】



206.それは心が死にます(コンゲム:コン狐?)



晴れ渡る空。

花の香りを運ぶ風。

響き渡る管楽器の調べ。


うん、格闘大会日和だね。



大会当日、ルルさんと僕は早起きして、『庭』で軽くトレーニングした後、コロン格闘場に転移した。

今日は従魔たちも勢揃いしている。

リーたんも幼女の姿で同行している。

全員が青いポンポンを持っているのは、きっとタコさんの仕業だろう。


ウィンギルドのメンバーは、ルルさん以外誰も姿を見せていない。

まあ、皆さんそれぞれ忙しいとは思うけど、これだけのイベントにあの2大ストーカー、伝説の大商人ジャコモさんと諜報ギルドのエースのフェイスさんがいないのは、ちょっとおかしい。

きっと何か企んでる気がする。


リベルさんは『庭』で寝てたので置いてきた。

従魔ブートキャンプで疲れ果てているのかもしれない。

格闘場の近くに『小屋』を出して、リベルさんの通行許可も出しておいたので、目が覚めたら来るだろう。

来なければ、それはそれで別にいいし。


格闘場前には多くの屋台が立ち並び、続々と詰めかける観客たちに朝食を売っていた。

結構な数の人々がスープらしきものとパンを買って食べている。

初めて見るけど、これが格闘大会の日常風景なのかもしれない。


「ルルさん、朝からこんなに人が集まるんですね。」

「そうだな。私も初めてだが、ちょっと多過ぎる気がする。」

「もしかするとコンゲムさんが、ルルさん出場の噂を広めたんじゃないですか。」

「昨日の今日だからな。宣伝するにも限度があると思うが。」


そんなことを話しながら歩いていると、周囲の人が僕たち(主にルルさん)に気付いて、視線が集まり始める。


「あそこに聖女様がいる!」

「ガセネタかと思ったけど、本当に出場するんだ。」

「あっ、あのパッとしない男も一緒だ!」

「何だと! あのパッとしない男、まだ捨てられてなかったのか。」


おいおい、「パッとしない」はまだ許すけど、「捨てられる」ってどういう意味?

だいたい「拾われて」ないのに、「捨てられ」たりしないって。

あれっ、でもよく考えてみれば、初めてコロンに来た時、僕はルルさんに「拾われた」のか?

街門前で困ってる時に助けてもらったんだよな。

状況から見れば、「拾われた」と言えなくもないかもしれない。


「それにしてもあの張り紙、本当だったんだな。」

「そうだよな。あっという間に街中に貼ってあったから何事かと思ったよな。」

「格闘士ギルドだけなら信じなかったけど、商人ギルドと諜報ギルドの連名だったしな。」


商人ギルドと諜報ギルドの連名?

やっぱりあの2人か。

張り紙と同時に街中に噂も流したんだろうな。

あの二人が一緒になると、情報伝達能力、半端ないな。


「ウィン、中に入るぞ。」


周囲の声に気を取られていると、ルルさんから声がかかった。

いつの間にか格闘場の入口にたどり着いていたようだ。

そしてそこには顔見知りたちが待ち構えていた。


「ウィン君、ルルちゃん、待ってたわよ。」

「ウィン君、元気そうだな。」


真っ先にアリーチェさんが駆け寄って来て、僕とルルさんに声をかけてきた。

その後ろから巨体のマッテオさんものしのし歩いて来る。


「ウィン、てめぇ、ずいぶんご無沙汰じゃねぇか。いつの間に冒険者ギルドから格闘士ギルドに鞍替えしやがった?」


さらに後方には冒険者ギルド・コロン本部のギルド長、ネロさんが僕に鋭い視線を向けていた。

今日は黒山猫姿ではなく人間の姿だ。

ただ、耳だけが山猫耳になっている。

ネロさん、そんなパターンもありなんですね。


「ルル様、ウィン様、お久しぶりです。」


ネロさんの隣には副ギルド長のグラナータさん。

ミスリル製のビキニアーマーを着用して、腰には大剣を提げている。

グラナータさん、まさか大会に参加するわけじゃないですよね。


「フォフォフォ、ウィン殿、格闘大会に出場なさるとは、いよいよ表舞台にデビューですかのう。年寄りの楽しみがまた増えますのう。」

「ウィン様、陰ながら応援させて頂きます。」


最後は言わずと知れた情報操作の達人コンビ。

ジャコモさんとフェイスさんがニコニコ顔で立っていた。


ジャコモさん、現役ばりばりの凄腕商人が「年寄りの楽しみ」とか言っても、似合いませんよ。

フェイスさん、今日は金髪エルフ姿なんですね。

まあ、たくさん人がいるから当然ですよね。


でも二人とも、街中に張り紙はちょっとやり過ぎだと思いますよ。

商人ギルドや諜報ギルドの人たちを扱き使ったんじゃないですか?

えっ、みんな喜んで手伝ってくれた?

しかも張り紙だけじゃなくて号外まで作って配りまくった?

まあ、楽しんでくれてるのなら何よりですけど。


そんな風に格闘場の入口付近で盛り上がっていると、建物の中から急ぎ足で近づいて来る人物がいた。


「これはこれは聖女様、お待ちしておりました。お陰様で本日は満員御礼間違いなしでございます。聖女様人気の凄さ、このコンゲム、再認識させて頂いた次第でございます。」


格闘士ギルドのギルド長は揉み手をしながら、小狡そうな笑顔でルルさんに擦り寄って来る。

相変わらず僕の事は眼中にないって態度だ。


「狐ギルド長、ウィンの対戦相手は決まったのか?」


ルルさんが強めの口調でそう言うと、コンゲムさんはわざとらしく驚いた表情をして、初めて僕の存在に気づいたかのように、こちらに視線を向けた。


「なんとなんと、ウィン様、やはり出場されるのですか? このコンゲム、てっきり辞退されるものと思い込んでおりました。」

「狐ギルド長、出場するとはっきり伝えたはずだが。」

「誠に誠に聖女様、申し開きのしようもございません。しかししかし聖女様、このコンゲムをもってしても、ウィン様に見合った弱い相手を見繕うことはなかなかに難しく・・・ヒエッ!」


ルルさんに対して言い訳をしている途中で、突然コンゲムさんが悲鳴を上げた。

よく見るといつの間にかコンゲムさんの背後にフェイスさんが移動し、その首元に針を突きつけていた。


「コン狐、偉くなったものですね。諜報ギルドからいなくなったと思ったら、こんな所にいたのですね。」

「その・・・その声は・・・きゅ、九尾様。なぜ・・・なぜ九尾様が・・・」

「ウィン様の応援です。もちろんウィン様に私の応援など不要ですが。それよりもコン狐、これ以上ウィン様を愚弄するような言葉を一つでも吐いたら・・・」

「一つでも吐いたら・・・・・」

「あなたの恥ずかしい話を、街中に張り出しますよ。」

「ギエェ〜、きゅ、九尾様、それだけはお許しを〜」


なんだ、痛めつけるとか、殺しちゃうとかじゃないんだね。

まあフェイスさん、暗殺者ギルドじゃなくて諜報ギルドだからな。

でも自分の恥ずかしい話を街中の人に知られるなんて・・・心が死ぬな。


「まあまあフェイスさん、コンゲムさんも悪気があるわけじゃないでしょうし、その辺にしてあげてください。」

「ウィン様、このコン狐は悪気しかありませんよ。上には媚びへつらい、下の者は見下す。そういう狐です。」


うわぁ、コンゲムさんの評価って、地に落ちてるというか、地面にめり込んでるんだね。

でもそんな人物がギルド長になれるんだろうか。


「ウィン様、疑問はもっともですが、このコン狐、三拍子揃っているのです。」

「三拍子?」

「はい、騙す、取り入る、陥れるの三拍子です。」


何それ?

悪の三冠王的な?


「自分より一つ上の人間をこの三拍子で引き摺り下ろしていけば、最後には自分がトップに立てるということです。」


それってある意味凄い才能だよね。

友達にはなりたくないけど。


「その通りです、ウィン様。恥ずかしながら諜報ギルド的には稀有の才能なのです。対象を仕事に限定すればですが。」


なるほどね。

コンゲムさん(コン狐?)、ギルド内の仲間相手にもその才能を使っちゃったのかな。

それで居場所がなくなって逃げ出したとか。


「さすがです、ウィン様。ご推察通りです。」


やっぱり。

あれっ、さっきから僕は何もしゃべってないよね。

心の中で思ってるだけで。

どうして会話が成り立ってるんだろう?

もしかしてフェイスさん、『念話』持ち?

人物鑑定には無かったはずだけどな。


「ウィン様、失礼ながら表情を見て考えを読み取らせて頂いております。ウィン様を観察し続けた成果です(ポッ)。」


フェイスさん、ストーカーレベル上げ過ぎじゃない?

それにそこは、頬を染めながら言うとこじゃないと思います。




読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は12月22日(金)です。

よろしくお願いします。

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