202.庭を拡張してください(全部2倍:by 従魔たち)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(202)
【アマレパークス編・白の森シルワ】
202.庭を拡張してください(全部2倍:by 従魔たち)
(小屋の設置場所を表示して。)
心の中でそう念じると、視界の中に一覧が表示された。
○設置場所
①はじまりの島 最初の浜辺
②はじまりの島 中央の台地
③コロンバール マッテオさんの農園
④コロンバール コロン 教会の裏庭(ルルさんの小屋の隣)
⑤コロンバール ポルト 『七色ワームの洞窟』内部
⑥コロンバール ポルト 商人ギルド・ポルト支部の裏庭
⑦アマレパークス アマレ 商人ギルド・アマレ本部の裏庭
⑧アマレパークス 碧の海 リバイアタンの洞窟
⑨アマレパークス シルワ シルワの森・南の入口近く
⑩アマレパークス フィオーレのお花畑
⑪アマレパークス 商人ギルド・シルワ支部の裏庭
⑫コロンバール コロン 商人ギルド・コロン本部の裏庭
情報表示は、いちいち「中の侍」さんに頼まなくても呼び出せるようになった。
「中の侍」さん曰く、『中の人しすてむ』も日々『あっぷでーと』しているとのこと。
便利になることはいいことだ。
12番目の『商人ギルド・コロン本部の裏庭』の小屋は、ルルさんに頼まれてサクッと設置してきた。
転移して、『小屋』を出して、その『小屋』の扉から中へ戻るだけなのであっという間だった。
これで今まで訪れた街の商人ギルドはコンプしたことになる。
ルルさんがウィンギルド(ジャコモさん)から受けている依頼は、すべての商人ギルドに『小屋』を設置すること。
ジャコモさんが通達を出しているので、どこの商人ギルドでも勝手に設置していいらしい。
ジャコモさん、野望に向けて着々と準備してる。
まだ『小屋』を商売に使わせるかどうかは決めてないんだけど、悪用しないなら、まあいいかなと思い始めている。
でも利益に応じて、きちんと使用料は払ってもらうよ。
これでも商人の端くれだし。
「ウィンさん、この焼き鳥(焼きコウモリ)も美味しいんですけど、他の串焼きも食べたい気がするんですが。」
「もぐもぐ、私も。」
小屋に戻ってすぐに花コウモリの串焼きを大量にダイニングテーブルの上に出したので、リベルさんとリーたんがそれに齧り付いている。
ようやく「串焼き食べ放題〜」が聞こえなくなったので安心していると、2人から他の種類の串焼きが食べたいと催促が来た。
リーたんは可愛いから許すけど、リベルさんはなぁ。
特に何の働きもしてないし。
面倒だから「庭」に追い出して、従魔ブートキャンプに戻そうかなぁ。
そんなことを考えていると、
「ウィンさ〜ん、それはもうちょっと待ってください〜。お掃除でもお洗濯でもお皿洗いでも何でもしますから〜」
うん、表情で考えを読まれるのがデフォルト化してるな。
まあこれはこれで、いちいち言葉にしなくてもいいので便利だけどね。
あれっ、そう言えば従魔たちは?
「リーたん、従魔たちはどこに行ったの?」
僕はリーたんに魚介類の串焼きを手渡しながらそう尋ねた。
「ありがとう。もぐもぐ。従魔たち、素材集めに行ってるよ。あっそうだ。従魔たちから伝言。『庭を拡張してください』って。」
リーたんが従魔たちの伝言を伝えてきた。
内容は庭の拡張。
でも、草原も畑も果樹園も森も湖も山もあるのにまだ拡張するの?
従魔たち、『庭』で何を目指してるんだろう。
「リーたん、どんな風に拡張するか聞いてる?」
「うん、よく分からないけど、とりあえず全部2倍にしてって。」
「2倍? とりあえず?」
「そう言ってたよ、ディーくんが。あと、海も作ってって。それはタコさんから。」
ディーくん、あの広さの2倍って、ちょっと想像しにくいんだけど。
それからタコさん、『庭』に海は無理なんじゃないかなぁ。
今でも『庭』と呼ぶべき空間ではないと思うけど、従魔たちの要望通りに進めていくと、もうそこは一つの別世界になってしまうんじゃないだろうか。
いったい『庭』ってどこまで拡張できるんだろう?
まあ、試してみればいいだけか。
「ルルさん、ちょっと『庭』に出ませんか?」
「いいぞ、暇だし訓練でもするか。」
「いや・・・まあ後で訓練してもいいですけど・・・まず『庭』の現状確認と、従魔たちの要望で『庭』の拡張をしたいんですが。」
「後で訓練するなら、付きあってやろう。」
ということで、僕とルルさんは、串焼き同好会の2人を部屋に残したまま『庭』に出た。
目の前に広がる草原、右に湖、左に畑と果樹園、それらを包むように広がる森、その向こうに山。
一見したところ、最後に見た風景から何も変わっていないように見える。
しかし『魔力感知』を発動してみると、違いは歴然だった。
「わぁ、何だこれ!?」
「うむ、なかなか凄いことになっているな。」
至る所に魔力の塊が感じられた。
ルルさんの場合は、色付きで見えているはずだ。
つまり、この空間には魔物が溢れてるってこと。
「従魔たち、庭を魔境にするつもりかな。」
「そうだな、訓練場としては申し分ない。」
ちょっと引き気味の僕に対して、ルルさんは金色の瞳をキラキラさせている。
さすが戦闘狂聖女、今にも魔力の塊に向かって突撃していきそうだ。
まあ魔物相手に訓練するのは別に構いませんけど・・・その前にすることがありますのでもう少しステイしていて下さい。
「ルルさん、ちょっと待って下さいね。ええっと、全体を2倍くらい・・・それから海を追加と。」
僕がそう呟くと、『庭』の景色全体がゴゴゴと音を立てて動き始めた。
まず、僕とルルさんが立っている場所が徐々に盛り上がり、小高い丘のようになった。
丘の一番高いところに『小屋』が建っている感じだ。
『小屋』の周囲はなだらかな下り傾斜になっていて、丘の裾野まで草原が広がっている。
右手に見える湖は、遠ざかる方向に伸びていき、最終的には元の4倍くらいの大きさになった。
左手に見える畑と果樹園は・・・10倍くらいになってる気がする。
正面に存在したはずの山は・・・山脈になっている。
これ、どう考えても2倍じゃないな。
言葉では2倍って言ったはずだけど、頭の中でこれくらいのことを考えてしまったのかもしれない。
あれ、そういえば海がないな。
海はやっぱり無理なんだろうか。
そんなことを考えながら、何気なく後ろを振り返ると、そこには、タコさん待望の広大な海が横たわっていた。
「ルルさん、あれって、海ですよね。」
「そうだな、ウィン。海だな。」
「気のせいか水平線が見えるような・・・」
「気のせいじゃないな、水平線だな。」
「あの海はどこまで続いてるんでしょうか。」
「船でも作って行ってみればいい。島とか大陸があるかもな。」
うん、自分でもよく分からなくなってきた。
まず初めに『はじまりの島』があって、そこに『小屋』を作って、その『小屋』に『庭』を作って、その『庭』を拡大したら広大な世界が出来上がって・・・・・。
よし、思考放棄。
あるがままを受け入れよう。
「ところでウィン、もういいか。」
「えっ、何がですか?」
「訓練に決まっている。」
「ああ、そんな話、してましたね。」
「もういいんだな。」
「ええっと、いいんじゃないですか。」
僕がそう言った瞬間、ルルさんが走り出した。
まるで獲物を追うハウンドドッグのように。
え〜と、まあ仕方ないな。
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