199.『魅了』も万能ではないようです(魅了:神級)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(199)
【アマレパークス編・白の森シルワ】
199.『魅了』も万能ではないようです(魅了:神級)
○魅了クエスト
クエスト : 求婚されろ⑤
報酬 : 魅了(神)
達成目標 : 求婚される(5回)+α
※性別は問わない。種族は問わない。
カウント : 5/5
…うぃん殿、流石でござる…
クエスト達成表示の後に、珍しく「中の侍」さんがコメントを添えてきた。
僕は腕を組んで目を瞑り、「中の侍」さんとの会話体勢をとった。
でも何が「流石」なんだろう?
…このくえすと、実は『中の人審議会』の中で、難易度が高過ぎると議論になっていたのでござる…
ふ〜ん。
中の人たちって、お互いに議論したりするんだ。
まあ、普通なら難易度が超高い案件だと僕も思うよ。
5人からプロポーズされるとか、前の世界でやってた1人のセレブを巡って争奪戦を繰り広げるあの番組くらいしか無理だろうからね。
でもさぁ、このクエスト、「求婚」の判定が甘過ぎるんじゃないかな。
…難易度のばらんす調整の結果、そのような側面も否めないではござるが、それにしても天晴れにござる…
天晴れ、なのかなぁ。
まあクエストの難易度は低い方がありがたいけど。
それで魔法とかスキルが手に入るんだから。
でもなんか納得がいかないというか。
あっ、そうだ。
魅了(神)の能力について補足説明はないの?
…おおっ、すっかり忘れ・・・すぐに表示するでござる…
(補足)
魅了(神): 全ての生き物を従わせることができる。
神さえも惑わせる。
・・・・・・・・「中の侍」さん、これだけで世界征服できちゃうんじゃないの?
いいの、こんなワールドブレイカー的なスキル作っちゃって?
…うぃん殿、神級とはそういうものでござるよ。ただし、この世界には必ず対極となる『あんちすきる』が存在するのでござる…
例えば?
…『魅了』に対しては『魅了耐性』『魅了無効』『魅了解除』といったものでござる…
なるほどね。
どんなに凄い魔法やスキルでも万能ではないと。
他に制限はないの?
…存在するでござる。『魅了』の場合は相手に自分の存在を認識させなければ発動しないでござる。一度に魅了できる数や継続時間にも制限があるでござる。これらは精神力や練度といった「隠しぱらめた」に左右されるでござる…
「隠しぱらめた」?
あっ「隠しパラメーター」ね。
了解しました。
とりあえずこれくらい情報があればいいかな。
…あっ、大事なことを忘れていたでござる。このすきる、今のままでは発動しないでござる…
今のままでは発動しない?
どういうこと?
…『+α』が付いているものは、ある条件を満たさないと発動しないのでござる…
それ、気になってたんだよね。
確か『人物鑑定(神級)』にも『薬草クエスト(神薬草)』にも付いてたよね。
で、ある条件って?
…それは・・・「中の人」の秘匿事項でござる…
・・・・・そこで「秘匿事項」を使うんだね。
自分で条件を見つけろってことか。
まあすぐに使いたいスキルでもないし、気長に探すとしよう。
僕はそこで、「中の侍」さんとの会話を終えることにした。
「ウィンさん、結論出ました?」
目を開くと同時にミエーレさんが話しかけてきた。
「はい? なんの結論でしょう?」
「ママと私、どちらを選ぶかに決まってるじゃないですか。」
えっ、なんの話だっけ?
ああそうか、『魅了(神)』にすっかり気を取られてたけど、そもそもフィオーレさんのプロポーズから始まって、結婚するならママじゃなくて私でしょうとミエーレさんが言ったところで止まってたんだっけ。
そこで僕が目を閉じて考え込んだので、どちらにするか悩んでるという解釈になったと。
「小娘エルフ、勘違いするな。ウィンは心の友と会話していただけだ。で、ウィン、何か新しいスキルでも手に入ったのか?」
ルルさん、ナイスな話題転換。
言い方は相変わらずアレだけど、このままスキルの話に持っていって、結婚話を誤魔化そう。
「はい。魅了が神級になりました。」
「なん・・だと。魅了・・・神級・・・」
あっ、また間違えた気がする。
そういえば『魅了』のこと、まだ誰にも言ってなかったよな。
ルルさん、目が点になってる。
「凄い! ウィンさん、やっぱり神だね。」
リベルさんは能天気なので放っておこう。
いやむしろ能天気でありがたいんだけど。
でもどうやってこの場を誤魔化そうかな。
「ウィン、まさか私にも魅了を・・・」
「いえ、え〜と、魅了じゃなくてですね・・・無料?」
「ムリョウ? 何だそのスキルは?」
「え〜と、それはですね、無料で・・・食べ物が手に入るスキル?」
自分で何言ってるのか分からなくなってきた。
「ウィンさん、凄い! ということは串焼き食べ放題ってことですよね。」
「そう、かも、しれない、ような気が、しないでもない?」
リベルさんが単純に喜んでいる。
でも他の人たちはリベルさんではないので、そんなことで誤魔化すのは不可能だった。
「ウィン、そんなバカな言い訳、信じるのはリベルだけだ。」
そうですよね。
でも『魅了』に響きが似ているスキル、何も思いつかなかったんですよね。
仕方がないので正直に話しますか。
「ルルさん、すみません。魅了スキル、神級になりました。」
「つまり私にも魅了をかけたのか。」
「まだ誰にもかけてませんよ。今日、獲得したばかりなので。」
「なぜすぐに言わない?」
「タイミング的に、微妙だったので。」
そんなやりとりをすると、ルルさんがまっすぐに僕の目を見つめてきた。
そして一つ溜息をつくと、
「どうやら嘘は言ってないようだな。」
「嘘はついてません。」
「さっき、『無料』とか言ってなかったか?」
「あれは・・・その・・・ごめんなさい。」
「まあいい。ところでまだ一度も魅了は試してないのだな。」
「試してません。」
「じゃあ、私にかけてみろ。」
「はい?」
また変なことを言い出しましたよ、この聖女。
『魅了』は相手を操るスキルなので、普通は誰でもかけられるのを嫌がるものだと思うんですが。
でもまあ、かけた本人であれば解除できるらしいし、効果を確認するためにも試す価値はあるのかもしれない。
「分かりました。それじゃあ魅了をかけますね。効果を確認したらすぐ解除します。」
「よし、ドンと来い。」
ルルさん、そこでなぜ戦闘体勢で構えてるんですかね。
『魅了』をかけようとした瞬間に殴りかかってくるとか、やめてくださいね。
ここ、フィオーレさんの家の中だし、『魅了』対『拳闘』の対決じゃないですからね。
「ルルさん、動かないでくださいね。それじゃあ行きます。魅了!」
僕がそう叫ぶと、ルルさんの周りに強い魔力が発生するのが『魔力感知』で認識できた。
『魔力視』持ちのルルさんにも魔力が見えているはずだ。
そしてその魔力がルルさんの体に吸い込まれるように消えた。
「ルルさん、どうですか?」
「魔力は見えたが、よく分からん。」
「じゃあちょっと試してみますね。ルルさん、右手を上げてください。」
ルルさんが右手を上げる。
「左手も上げてください。」
ルルさんが左手も上げる。
よし、魅了が効いてるようだ。
そう思っていると、
「ウィン、これに何か意味があるのか?」
ルルさんが上げていた両手を下ろして僕に尋ねてきた。
あれっ、まだ両手を下ろせとは言ってないのに。
「ルルさん、どうして両手を下ろしたんですか?」
「両手を上げたままだと間抜けだろう。」
「あれっ? あれっ?」
「どうしたウィン?」
「じゃあ、その場でピョンピョン跳ねて見てください。」
「どうしてもと言うなら跳ねてもいいが、どうせならもう少しカッコいい動作を指示してくれ。」
あれっ、魅了、全然効いてない?
どういうこと?
神級だよね。
いや神級はまだ発動してないから極級か。
…(コッソリ)補足を表示するでござる…
(補足)
『魅了』は友好度100%の相手には効かない。
僕はその表示をしばらく見つめて・・・・・脱力した。
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