198.鑑定スキルを確認します(尋問官:フィオーレ)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(198)
【アマレパークス編・白の森シルワ】
198.鑑定スキルを確認します(尋問官:フィオーレ)
「ウィンさん、詳しく説明をお願いします。」
どうしたんだろう。
フィオーレさんの目が怖い。
声にも今までにない迫力が込められている。
一瞬で人が変わってしまったかのようだ。
フィオーレさんの鋭い視線に、正直僕はビビっていた。
物理的な脅威は何もないのに、それでもメンタルは警報を鳴らしている。
心の中で、少し前にバカにしたリベルさんに謝罪する。
リベルさん、ごめんなさい。
針を首筋に突き付けられてガクブルしているのを笑ったりして。
僕は視線を突き付けられただけで震えています。
「ウィンさん、酒鑑定以外の鑑定スキルを教えて下さい。1つずつ、順番に。」
フィオーレさん、声にドスが効いてますよ。
キャラ変し過ぎだと思います。
どこにスイッチがあったのかな?
「ま、まずは・・・ま、魔物鑑定・・・ですかね。」
「なるほど。テイマーに相応しいスキルですね。レベルは?」
「え〜と、レベルは・・・あれ? そういえばレベル、ないですね。」
「レベルがない?」
フィオーレさんの強めの声に、僕はちょっとビクッとしてしまう。
でも言われて気づいたけど、魔物鑑定だけレベル表示がないな。
なぜだろう。
「普通は、魔物鑑定って、レベルがあるんですか?」
「あるはずです。」
「なぜないんでしょう?」
「私に聞かれても分かりません。鑑定内容はどの程度ですか?」
「え〜と・・・種族名・体型・体色・食性・生息地・特徴・特技ですかね。」
「たぶん、上級ですね。」
「あっ、あと、鑑定内容について質疑機能があって詳細説明を追加表示できます。」
「質疑機能? 詳細説明の追加表示!?」
あっ、やっぱり普通はそういうのは無いみたいですね。
余計なこと言っちゃったかな。
フィオーレさんの顔がさらに怖さを増した気がする。
「初めて聞く内容なので追求したいところですが、キリがなさそうなので次に行きます。次の鑑定スキルは?」
フィオーレさんの尋問口調が続く。
僕は窓のない狭い部屋に囚われた容疑者の気分だ。
全部吐くまで出られると思うなよ、そう詰められてる感じ。
「じ、人物鑑定・・・かな。」
「かな?」
「いえ・・・あの・・・じゅ、順番を迷っただけです。」
「レベルは?」
「きょ、極級・・・です。」
「極級!」
そこで、フィオーレさんは驚いた後にしばらく考え込んだ。
独り言をぶつぶつ呟いている。
どうやら「常識は捨てろ・・・」と繰り返してるようだ。
「極級って・・・・・何ができるの?」
「真偽鑑定ですね。」
「それはどういう能力なの?」
「鑑定対象の言葉の真偽が分かります。」
「人物鑑定に・・・そんな能力があるなんて・・・」
フィオーレさんの言葉遣いが厳しい尋問口調から、少し普段の話し方に近くなった。
驚き過ぎて素に戻りつつあるのかもしれない。
「3つ目は?」
フィオーレさんが気を取り直して、質問を続行した。
僕もだんだん慣れてきたのか、フィオーレさんの圧力を感じなくなってきた。
「植物鑑定です。」
「植物鑑定まで! レベルは?」
「え〜と・・・極級です。」
「何ですって!」
フィオーレさんが叫んだ。
もうスタート時点の抑えた迫力はなくなり、感情が表に出てしまっている。
「ウィンさん、それはあり得ないわ。」
「どうしてですか?」
「エルフ植物学会にだって極級なんていないわ。事実上、上級がトップランクなのよ。植物博士の私でも中級なのに・・・」
「そうなんですね。」
僕は淡々と答えた。
どうやら精神的に立場が逆転したようだ。
実は、植物鑑定に関しては、『小屋』でちまちまと『薬草クエスト』をこなし、合間を見ては商人ギルドに転移して売っていたので、レベルが上がっていた。
ちなみに『薬草クエスト』は、もう少しで『神薬草』に到達しそうだったりする。
「ママ、だから言ったじゃない。ウィンさんは常識外だって。」
「そうだぞ、花畑エルフ。ウィンは異常だからな。」
「ウィンさん、神だから。」
ミエーレさん、ルルさん、リベルさんの3人がそれぞれ慰めにもならない言葉を、フィオーレさんにかける。
フィオーレさんは3人の言葉を聞いても、そのまま黙ったままだ。
「ウィン、ちなみに武具鑑定のレベルはどうなってる?」
最後の鑑定スキルについてルルさんが尋ねてきた。
フィオーレさんの代わりという訳でもないだろうけど、この際ついでに全部聞いてしまおうってことかな。
「極級です。」
僕がそう答えると、さすがのルルさんもちょっと驚いた表情になった。
「ウィン、いつの間にそんなことになったんだ?」
「従魔たちがいろんなものを頼んでくるのでいっぱい作りました。」
「私はあれから何ももらってないぞ。」
「材料くれたら作りますよ。」
「よし、すぐ材料集めに行くぞ。」
そんな会話をしていると、しばらく黙り込んでいたフィオーレさんが椅子から立ち上がって叫んだ。
「ウィンさん、今すぐ私と結婚しましょう。」
うん、この世界って脈絡のない発言が流行ってるのかな。
尋問の直後にプロポーズとか、感情の流れが読めないんですけど。
だいたい、恋愛要素ゼロのままの結婚話ばかり発生するのはなぜなのか。
この世界には恋愛というステップはないのか。
結婚と恋愛は別物という考え方は僕も理解できるけど、もう少し恋愛要素を僕にください。
まあ、今すぐ恋愛したい訳じゃないけど。
「ママ、何言ってるの? パパはどうするの?」
この世界のプロポーズ事情に、疑問と不満をぶつけていると、ミエーレさんが立ち上がって叫んだ。
ちょっと待って。
パパがいるの?
いや、ミエーレさんという娘がいるんだから当然ミエーレパパはいるだろうけど、いきなり「結婚しましょう」なんて言われたから、母子家庭なのかと思ってしまった。
それともエルフ族って、重婚ありなのか?
「パパのことは、後で考えるわ。そんなことよりもエルフ族の学者としてこんな貴重な血を逃す訳にはいかないわ。研究対象としても、優秀な子孫を残すためにも。」
フィオーレさんは決意のこもった瞳でそう断言した。
ミエーレパパ、妻に「そんなこと」扱いされてますよ。
同じ男性としてやりきれない悲哀を感じます。
ところでフィオーレさん、必要なのは僕の『血』なんですね。
僕の人格とか僕の気持ちとかはどうでもよくて。
それってひどくないですか。
でもまあ、前の世界でもそういうの、割とあったか。
僕が生まれ育った国と時代はまだマシだったけどね。
「ママ、一言、言っていい。」
あっ、ミエーレさんの声が低くなった。
アマレの港でルルさんに対抗した時のミエーレさんだ。
ママがこんな発言してたら娘として黙ってられないよね。
「そんなこと」扱いされたミエーレパパも可哀想だし。
ミエーレさん、ママにガツンと言ってやって。
「パパのことは置いておくとして、ウィンさんと結婚するなら、
ママじゃなくて私じゃないの!」
うん、ミエーレパパ、娘にも「置いておく」ことにされちゃいました。
家庭内での立場が偲ばれて涙が出ます。
それに話がさらにおかしな方に向かってます。
この辺でお暇した方が良さそうです。
…うぃん殿、お取り込み中申し訳ないでござるが、くえすとが達成されたので表示するでござる…
○魅了クエスト
クエスト : 求婚されろ⑤
報酬 : 魅了(神)
達成目標 : 求婚される(5回)+α
※性別は問わない。種族は問わない。
カウント : 5/5
このタイミングで『魅了(神)』とか・・・
嫌がらせかな。
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